本記事では、桑名市職員採用試験の面接対策で必要な、桑名市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。

桑名市役所の面接試験では、「なぜ桑名市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。

令和9年度採用のA日程は、保育教育職を除いて第1次試験が書類選考、第2次試験がSPI3とグループディスカッション、最終試験が個別面接という3段階です。書いたもので始まり、話す場で終わる選考だといえます。

三重県の北の端で、愛知県と岐阜県に境を接している市です。その位置が市政に何をもたらしているのか。そこから順に見ていきましょう。

第1部|自治体研究編

桑名市の特徴

本格的な面接対策をはじめる前に、まずは桑名市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)

  • 住民基本台帳の人口は137,008人で、三重県内14市のうち5番目の規模です(令和8年1月1日現在)。
  • 市域は136.65km²、住民基本台帳の人口を面積で割ると約1,003人/km²になります。
  • 接している自治体は9団体で、そのうち3つは県外です。愛知県の愛西市・弥富市、岐阜県の海津市と隣り合い、県内では四日市市・いなべ市・三重郡朝日町・川越町・員弁郡東員町・桑名郡木曽岬町に接しています。
  • 65歳以上の割合は27.9%、75歳以上は16.4%で、三重県全体の30.6%・18.2%をどちらも下回ります(令和8年1月1日現在の住民基本台帳)。
  • 揖斐川の河口部に海抜ゼロメートル地帯を抱える市です。長島町白鶏には、地上約5m・8m・11mの高さに避難床を持つ3層構造の津波避難誘導デッキが整備されています。
  • 昭和34(1959)年の伊勢湾台風では、旧桑名市と旧長島町で多くの犠牲が出ました。この災害を教訓として、昭和36(1961)年に災害対策基本法が定められています。
  • 令和9年度採用の職員採用試験は日程が分かれており、A日程のほかにB日程(高卒以上向け)、消防職、民間企業等職務経験者を対象とした通年採用の実施が予告されています。
  • 市の花はハナショウブ、市の木はハナミズキ。市役所は桑名市中央町2丁目37番地にあります。

桑名市の基礎データ

面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「桑名市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。

桑名市の数字は、人口13万人台という規模、県平均より低い高齢化率、そして県境に寄った位置の3つを一組で見ると意味が通ります。人が住み続けている理由と、災害に備えなければならない理由が、同じ地形から出てくる市だからです。

項目内容
総人口137,008人(令和8年1月1日現在の住民基本台帳。三重県内14市で5番目)
65歳以上人口38,198人(27.9%。三重県全体は30.6%)
75歳以上人口22,429人(16.4%。三重県全体は18.2%)
総面積136.65km²
人口密度約1,003人/km²(上記の総人口と総面積から算出)
隣接自治体四日市市・いなべ市・三重郡朝日町・川越町・員弁郡東員町・桑名郡木曽岬町、愛知県愛西市・弥富市、岐阜県海津市
市役所所在地桑名市中央町2丁目37番地
(参考)三重県の人口1,724,891人(令和8年1月1日現在の住民基本台帳)

総人口と65歳以上・75歳以上の人口および割合は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」の令和8年1月1日現在の値です。三重県全体の数値も同じ統計によるもので、割合の分母にもこれを用いています。国勢調査や県が別に公表している推計人口とは調査の基準が異なりますので、それらの数値と並べて増減を計算することはできません。総面積・隣接自治体・市役所所在地は当研究会が整理した基礎データによるもので、人口密度は上記の住民基本台帳人口から算出しています。

数字から考えられる市政課題

県内で並べると、桑名市は若いほうの市に入ります。

65歳以上27.9%は、県内14市のうち四日市市・鈴鹿市・亀山市に次いで4番目に低い水準です。三重県全体の30.6%と比べても2.7ポイント低く、75歳以上の割合でも県を下回っています。

ただし、これを「まだ大丈夫」と読むと足元をすくわれます。三重県は、高齢化率が令和2年の29.9%から令和22年には36.9%へ上がり、生産年齢人口が約103万人から約79万人へ縮むという見通しを示しています(出典:三重県人口減少対策方針|令和5年8月)。

この推計は国勢調査を基準にしていますので、先ほどの住民基本台帳の数字とは分母が違い、水準をそのまま並べることはできません。それでも向きは読めます。

県平均より低い高齢化率は、対策を免除される条件ではなく、手を打つ時間がまだ残っているという条件です。

県が同じ方針で挙げている社会減の中身、つまり転出超過数の約8割を15歳から29歳が占めるという指摘も、名古屋圏に近い北勢の市には重く響きます。この読み方は、答えのなかで次のような形になります。

「桑名市は65歳以上の方が3割弱で、三重県全体より低いと知りました。ただ県の方針を読むと、若い世代の転出が県全体の課題になっているそうです。名古屋にも近い市ですので、進学や就職で一度出た人が戻ってこられる仕組みを考える仕事に関わりたいです」

桑名市の経済・産業

三つの県と境を接する

桑名市の経済を考えるとき、最初に置くべきは事業所の数ではなく位置です。接する9団体のうち、愛西市と弥富市は愛知県、海津市は岐阜県。

市域の縁が二つの県境に触れているということは、通勤も買い物も、企業の取引先も、三重県の枠の内側だけでは完結しないということです。県は企業立地の案内で、新名神高速道路と東名阪自動車道が二重の高速ネットワークを形成していること、中部国際空港セントレアが24時間運用の国際空港であること、四日市港が国際拠点港湾に指定されていることを挙げています(参考:三重県の交通アクセス(企業立地案内)|2024年7月現在)。

これらの拠点はいずれも県北部に集まっており、桑名市はその圏内に立っています。企業から見れば、名古屋圏の市場と県内の工業集積の両方に手が届く場所です。

市民から見れば、働く先も学ぶ先も県境の向こうに選択肢がある場所です。同じ立地条件が、産業振興の追い風にも、人口流出の経路にもなります。

県の産業統計と、この市の読み方

背景として県全体の姿も押さえておきましょう。令和2年の県全体の製造品出荷額等は約10兆円で全国9位、全国に占めるシェアは約3.5%です。

内訳を見ると、電子部品・デバイス・電子回路が全国シェア11.7%で全国1位、輸送用機械器具が全国6位、化学工業が全国9位と続きます(出典:三重県の製造品出荷額等(工業統計・経済センサス)|令和2年)。三重県は製造業で立っている県だと言い切ってよい構成です。

ただし、この県の数字をそのまま桑名市の説明に使うと足を滑らせます。県内には四日市市のようなコンビナートを抱える市もあれば、南部の水産と観光の市もあり、県の合計値は市ごとの姿を平らにならした結果だからです。

桑名市について語るなら、県の順位を借りるより、県境をまたいで働きに出る人と、県境を越えて入ってくる仕事の両方を抱えた市だという構造から入るほうが、話が具体的になります。

観光は県内で最も客が入る地域にある

令和6年の県全体の観光レクリエーション入込客数は35,082千人で前年比99.9%、観光消費額は5,236億円で前年比107.3%(354億円増)でした。地域別に見ると、桑名市が含まれる北勢が14,262千人で、県内5地域のうち最も多くなっています(出典:三重県観光レクリエーション入込客数|令和6年)。

ここで目を留めてほしいのは、県全体で人数はわずかに減ったのに、消費額は7%以上増えたという組み合わせです。観光を志望分野にするなら、来訪者を何人集めるかという話から、来た人にどれだけ使ってもらい、それを地元の事業者にどう還すかという話へ、視点を一段移して準備しておきましょう。

桑名市の主な行政課題

水と、県境。桑名市の課題は、この二つの言葉のまわりに集まっています。「市の課題」を問われたときに手を伸ばせるよう、次の4つを整理しておきましょう。

津波が届く前に浸水が始まる地形

三重県が令和8年3月に公表した南海トラフ地震被害想定では、理論上最大クラス(L2)の場合、桑名市の沿岸最大津波高は3mと予測されています。高さだけを見れば県南部より小さい数字ですが、注目すべきは時間のほうです。

沿岸に30cmの津波が到達するまでの最短時間は3分と予測されており、同資料が市町別に示した到達時間のなかで最も短い区分に並びます。さらに同じ資料は、県北部の海抜ゼロメートル地帯のように地盤の低い地域では、地震による地盤沈降と揺れによる堤防の沈下が重なるため、津波が到達するより早く浸水が始まると予測されると記しています(出典:三重県南海トラフ地震被害想定|令和8年3月)。

逃げる時間を確保できないという前提から設計を始めなければならない地域だ、ということです。長島町白鶏の津波避難誘導デッキが、地震直後は堤防や水門の状況を確認する物見台として、浸水開始後は緊急避難場所として機能するよう作られているのは、この前提への答えの一つです(参考:津波避難誘導デッキ|桑名市公式サイト)。

伊勢湾台風の教訓を、どう次へ渡すか

昭和34(1959)年の伊勢湾台風は、旧桑名市と旧長島町の双方に大きな犠牲をもたらしました。市はこの事実を公式に記録し、この災害を教訓として昭和36(1961)年に災害対策基本法が定められたことをあわせて伝えています(参考:伊勢湾台風について|桑名市公式サイト)。

つまり、この市が受けた被害が、国の災害対応の枠組みそのものを作り変えたという経緯を、市は自分の歴史として語り継いでいます。

当時を知る市民が減っていくなかで、記録を過去の話にせず、いま住んでいる人の避難行動に結び付け続けられるかどうか。防災を志望分野にするなら、施設や訓練の話に加えて、この継承の設計まで考えておくと厚みが出ます。

若い年齢構成の裏にある、県全体の人の流れ

65歳以上27.9%、75歳以上16.4%という県平均を下回る数字は、桑名市の強みです。ただしこの構成が続く保証はありません。

三重県人口減少対策方針は、転出超過数の約8割を15歳から29歳の若者が占めること、県内高校から大学へ進学した人のうち県内大学へ進む人が約2割にとどまること、県内高等教育機関卒業生の県内就職率が約5割であることを課題として挙げています(前掲の方針)。名古屋圏に通える位置にある市にとって、この構造は二通りに働きます。

住む場所として選ばれやすい一方で、学ぶ場所・働く場所としては域外に流れやすいということです。子育て支援も住宅政策も産業振興も、この二面性のどちら側を厚くするのかという問いから逃れられません。

生活圏が県境をまたぐこと

接する9団体のうち3つが県外だという事実は、行政の現場では調整相手の多さとして現れます。道路も河川も、通勤の流れも、県の線引きでは切れないからです。

災害時の応援や広域避難となればなおさらで、揖斐川の河口部という位置は、上流側の判断が下流の市に直接効いてくる関係でもあります。住民の困りごとが三重県の枠内では片づかない場面が、日常の業務のなかに組み込まれている市だと考えてください。

「住民に最も近い基礎自治体だから市役所」という説明に、この一段を足せるかどうかが、志望動機の説得力を分けます。

重点政策|「さあ、次の桑名を、一緒につくろう」という呼びかけ

桑名市が令和9年度採用の職員採用試験案内(A日程)の全ページに掲げているのが、「さあ、次の桑名を、一緒につくろう」というキャッチコピーです(出典:令和9年度採用桑名市職員採用試験案内(A日程)|令和9年度採用)。採用の案内に置かれた言葉ですが、ここには市が誰に来てほしいと考えているかが素直に出ています。

「次の桑名」と言う以上、いまの形をそのまま守る話ではありません。そして「一緒に」と言う以上、職員だけで完結させる話でもありません。

門戸を広げる側に振った採用の設計

この姿勢は、技術職の募集条件にはっきり表れています。桑名市は試験案内で、技術職について「出身学部やこれまでの経験は問いません。例えば、法学部や経済学部等のいわゆる文系学部卒業でも応募できます。」と明記し、続けて「資格や経験の有無のみで採否が決まることはありません。」と書いています。

そのうえで「桑名市では、“まちづくりに関わりたい”という気持ちを何よりも大切にしています。」と結んでいます(前掲の試験案内)。技術職の採用で出身学部を問わないと言い切るということは、応募のハードルを下げたというより、入口の要件より入ってからの動機のほうへ判断の重心を移したということになります。

採用説明会の位置づけも同じ方向を向いています。市はオンラインでの採用説明会を試験申込期間中、つまり第1次試験の書類選考の前に実施するとし、そこで「採用試験の考え方や、活躍が見込まれる職員像等についてお伝えします。」としています。

同時に「採用説明会参加の有無が、選考に直接影響するものではありません。」とも明記されています(前掲の試験案内)。参加が加点になるわけではないが、市が何を求めているかは先に伝えておく、という組み立てです。

選考の外に置かれた対話の機会

もう一つ特徴的なのが、第2次試験の通過者を対象にした任意の面談です。市は「2次試験通過者のうち、希望する方には、最終選考前にオンラインにてカジュアル面談を実施予定です。」としています(前掲の試験案内)。

選考そのものではなく、最終試験の前に置かれた対話の場です。採用する側とされる側の情報量の差を、選考の外側で埋めておこうとする設計だとみることができます。

応募者から見れば、入庁後の働き方について確かめられる機会が制度として用意されているということでもあります。予定とされている段階ですので、実施の有無や方法は最新の案内で確かめてください。

採用の言葉の先は、市の計画に当たる

ここまでで拾ってきたのは、採用の案内に桑名市が自分で書いた言葉です。案内は人を集めるための文書ですから、個々の施策の中身までは載っていません。

志望分野の話に進むなら、桑名市公式サイトに掲載されている計画のうち、自分が関わりたい分野を扱っているものを一つだけ選んで開いてください。検索で出てきた古い版ではなく市のサイトから入ること、そして全部を読もうとしないこと。

この二つを守っておけば、カジュアル面談で何を聞きたいかも自分の中で決まってきます。

POINT|「まちづくりに関わりたい」を自分の言葉に戻す

市が大切にしていると明記した言葉を、そのまま面接で言い返しても評価にはつながりません。この言葉を借りるなら、自分がどの場面でその気持ちを持ったのかを一つ添えてください。桑名市の場合、水と県境という条件がそのまま仕事の中身になりますので、そこに引き寄せて話すと市の実情と重なります。

悪い例「まちづくりに関わりたいと思い、桑名市を志望しました」

改善例「桑名市は津波が来る前に浸水が始まる地域があると知りました。避難のことは施設を作るだけでは終わらないと思いますので、住んでいる方と一緒に逃げ方を決めていくような仕事に関わりたいです」

あわせて確認したい公式資料

桑名市は日程と職種で案内が分かれています。まず自分が受ける枠のものを開くこと。県の資料は、そのあとで市の立ち位置を確かめるために使ってください。

  • 自分が受ける枠(A日程・B日程・消防職・通年採用)の桑名市職員採用試験案内
  • 桑名市の職員採用情報ページ(日程ごとの告知と申込方法が更新されます)
  • 三重県南海トラフ地震被害想定(県北部の浸水開始の考え方を押さえるため)
  • 三重県人口減少対策方針(若い世代の転出という県全体の課題を押さえるため)

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、桑名市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。桑名市の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

桑名市役所の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

桑名市役所の面接の概要

ここからは、令和9年度採用のA日程の試験案内で確かめられる桑名市の選考の形と、そこから読み取れる準備の置きどころを整理していきます。

桑名市役所の試験の流れ

A日程の事務職・技術職などは、第1次試験が書類選考、第2次試験がSPI3とグループディスカッション、最終試験が個別面接という3段階です。ここで見落とせないのが第2次試験の判定方法で、案内には「2次試験の合否判定は、SPI3とグループディスカッションの結果を基に合否判定をいたします。」と明記されています。

第2次試験は、検査の点数と集団での議論という二つの材料だけで判定されるということです。あわせて「SPI3未受験者は、グループディスカッションへ参加できません。」とも書かれていますので、SPI3の受験は議論の場に立つための前提条件でもあります。

項目内容(令和9年度採用・A日程)
試験の枠組みA日程のほかに、B日程(高卒以上の方向け)と消防職の試験案内が追って公表される予定で、民間企業等職務経験者を対象とした通年採用も令和8年度中に実施予定とされています。同一の職種について日程が異なる試験を重複して受験することはできません
第1次試験(保育教育職以外)書類選考
第2次試験(保育教育職以外)SPI3、グループディスカッション。合否判定はこの2つの結果を基に行われ、SPI3未受験者はグループディスカッションに参加できません
最終試験(保育教育職以外)個別面接
保育教育職の段階構成第1次試験がSPI3、最終試験が実技試験と個別面接の2段階。職務経験者採用を受験する方は実技試験が免除され、個別面接のみとなります
実施方法・会場SPI3はテストセンターで受験し、適性検査はオンライン受検が可能です。グループディスカッションと最終試験の個別面接は、いずれも桑名市役所本庁舎で実施されます
最終選考前の面談第2次試験通過者のうち希望する方には、最終選考前にオンラインでカジュアル面談を実施する予定とされています
配点試験案内に、グループディスカッションと個別面接の配点・満点・合否判定の比重の記載はありません
提出書類第1次試験が書類選考であること以外に、「面接カード」「エントリーシート」等の名称の様式についての記載は試験案内にありません
申込方法桑名市ホームページの専用の試験申込フォームから申し込み、エントリー完了メールの受信をもって申込完了となります
採用予定人数事務職(大卒以上)13名程度、事務職(障害者対象・大卒以上)1名程度、技術職(土木2名程度・建築2名程度・電気2名程度)、社会福祉士1名程度、保健師3名程度、保育教育職(大卒・短大卒)5名程度・(職務経験者対象)3名程度
採用説明会オンライン(ZOOM配信)で、試験申込期間中の書類選考前に実施。参加の有無が選考に直接影響するものではないと明記されています

段階の並びを追うと、絞り方の設計が見えてきます。まず書類で母集団を絞り、次に検査の点数と集団での振る舞いで絞り、最後に一対一で確かめる。

個人として長く話す場面は、最終試験まで来ないと訪れません。第2次試験のグループディスカッションが、その手前で自分を見てもらえる唯一の場だということになります。

配点は公表されていませんので比重を断定はできませんが、準備の配分を考えるうえでは、この順序そのものが手がかりになります。

上記の試験構成は、桑名市が公表している令和9年度採用桑名市職員採用試験案内【A日程】および職員採用情報ページにもとづく、A日程の内容です。B日程・消防職・通年採用は別の案内で実施され、消防職の試験構成をこの記事の内容と混同しないようご注意ください。近隣自治体との共同実施や統一試験に関する記載は、試験案内・採用告知ページのいずれにもありません(告知ページで案内されている民間の職員採用サイトは申込のための仕組みであり、共同実施を意味するものではありません)。試験の構成・配点等は年度や受験区分によって異なる可能性がありますので、受験の際は必ずご自身の区分の最新の試験情報をご確認ください(出典:桑名市職員採用情報|令和8年度)

桑名市役所が求める人物像

桑名市の令和9年度採用A日程の試験案内と職員採用情報ページには、「求める人物像」として体系化された公表文言は置かれていません。案内にあるのは、採用説明会で「活躍が見込まれる職員像」を伝えるという記載までです。

ですので、公表された言葉として使えるのは、技術職の募集条件に書かれた「“まちづくりに関わりたい”という気持ちを何よりも大切にしています。」という一文と、案内全体を貫く「さあ、次の桑名を、一緒につくろう」という呼びかけになります。

そこで、試験案内に載っている採用予定数の内訳を手がかりに、桑名市の職場の規模感を考えてみます。数字そのものは市の公表ですが、そこから働き方を読み取る部分までは案内に書かれていませんので、以下は数字の並びから当研究会が組み立てたものとしてお読みください。

A日程の事務職(大卒以上)は13名程度、技術職は土木・建築・電気が各2名程度、社会福祉士1名程度、保健師3名程度という規模です。人口13万人台の市で、専門職が一つの分野につき数名という編成になるということは、一人が受け持つ分野の幅が自然と広くなるということでもあります。

桑名市の場合、その幅の先には、堤防や排水のように県や隣の団体と足並みをそろえないと進まない仕事も入ってきます。

この規模の市で重く見られやすいのは、深い専門性一本より、担当が変わっても立て直せる素早さと、庁内外の相手と話を通せる力のほうではないかと思います。桑名市の場合、その相手には県外の自治体が含まれます。

接する9団体のうち3つが県外という条件は、調整の場面で相手の制度が自分の市と違うことを前提にしなければならない、という意味です。相手の事情を先に聞いてから、こちらの都合を組み替えられる人が働きやすい環境になっているはずです。

注意したいのは、いま書いたことを自己PRの型として借りてしまうことです。A日程の選考は、書類で書いたことを起点に、集団での議論を経て、最後に一対一で確かめる形になっています。

同じ人物像を三つの場面で通せるかが問われるわけですから、実際にあった経験のうち、他人と条件を突き合わせて何かを決めた場面を選び出し、それを桑名市の業務環境ならどう発揮できるかという形に置き換えて話すのが、この試験には合っています。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。桑名市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク本庁舎までは、どのように来られましたかグループディスカッションも最終の個別面接も会場は桑名市役所本庁舎。会場に着くまでの話題から、構えの取れていない受け答えが出る
② 動機・志望三重県内にも市役所は多くありますが、桑名市を選んだ理由を教えてください愛知県・岐阜県と境を接する位置を、志望の理由に織り込めているか
③ 自己理解書類選考に出した内容のうち、いちばん伝えたかったのはどこですか第1次試験が書類選考である以上、自分が提出した文章を読み返しているか
④ 経験・行動意見の割れた場で、結論をまとめた経験を教えてください第2次試験のグループディスカッションと地続きの質問。押し切ったのか、間に立ったのか
⑤ 学業・経歴これまでの学びのうち、桑名市の仕事に近いと感じるものはありますか技術職でも出身学部を問わないとする市で、学んだ内容を仕事の言葉へ言い換えられるか
⑥ 適性・将来事務職の採用は13名程度ですが、希望と違う部署に配属されたらどうしますか専門職が各分野数名という編成の市で、担当の幅が広がることを想像できているか
⑦ 公共性・社会性最近気になった、防災や水害に関するニュースはありますか海抜ゼロメートル地帯を抱える市の論点に、自分の関心を接続できるか

ただ、この7つで差がつくことはあまりありません。受験者全員が対策してくる領域だからです。

では、どこで差がつくのか。それが次の「桑名市ならでは」の質問です。

合否を分けるのは「桑名市役所ならでは」の質問

「なぜ三重県庁ではなく、桑名市役所なのですか」
「桑名市の魅力と課題を、それぞれ挙げてください」

どちらも市の現状を知らなければその場では答えようがない質問ですが、逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。こうした質問に答えるための「桑名市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。

質問テーマ知っておきたい桑名市の事実答え方のヒント
人口と年齢構成住民基本台帳の人口137,008人は三重県内14市で5番目。65歳以上27.9%・75歳以上16.4%で、県全体の30.6%・18.2%をどちらも下回る(令和8年1月1日現在)県より低いという事実で止めず、県が令和22年に高齢化率36.9%へ向かうという見通しと並べると、いま手を打つ理由まで話が届きます
なぜ県庁ではなく市役所か接する9団体のうち愛西市・弥富市は愛知県、海津市は岐阜県。生活圏も調整相手も県境をまたぐ住民に近いという一般論の先に、県外の団体と話をつける場面が日常業務に含まれるという条件を足します
災害への備え南海トラフ地震のL2想定で沿岸最大津波高3m、30cmの津波の到達時間は最短3分。海抜ゼロメートル地帯では津波の到達より早く浸水が始まると予測されている高さの数字より時間の数字を使うと、この市の条件を理解していることが伝わります。逃げる時間が短い前提で何ができるかまで進めましょう
市の成り立ちと記憶昭和34年の伊勢湾台風の被害を市が公式に記録し、これを教訓に昭和36年に災害対策基本法が定められたと伝えている被害の大きさを語るのではなく、記録を次の世代の避難行動へどう渡すかという継承の話に寄せると、市の姿勢と重なります
選考の形A日程は第1次が書類選考、第2次がSPI3とグループディスカッション、最終が個別面接。第2次の判定はSPI3とグループディスカッションの結果による自分がどの職種でどの日程を受けるのかを踏まえて準備の配分を語れると、案内を読み込んでいることが伝わります

使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。

想定される評価の観点

面接は、これまでに実際どう行動してきたかを確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。桑名市は求める人物像を体系化して公表していませんので、ここでは公表されている選考の設計に照らして、3つの観点を挙げます。

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
書いたものと話す内容がそろっているか第1次試験の書類選考に出した内容と、最終試験の個別面接での説明が食い違わないか提出前の書類を手元に残し、書いた一文ずつに「これを掘られたら何を足すか」を書き添えておきましょう。書類が先にある選考では、ここが土台になります
集団の議論を前へ進められるか第2次試験のグループディスカッションでの振る舞い。合否判定の材料はSPI3とこの議論だけです結論を出した経験より、意見が割れた場面で自分が何をしたかを用意してください。まとめ役でも聞き役でも、自分が取りやすい位置を自覚しておくことが先です
「まちづくりに関わりたい」を具体で語れるか市が試験案内で大切にすると明記した気持ちを、自分の経験に紐づけて説明できるか桑名市の条件、つまり水と県境に引き寄せて話すと具体になります。防災、住まい、広域の調整のどこに関心があるのかまで絞っておきましょう

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。

桑名市では、個別面接が最終試験に一度だけ置かれています。ここで足りなければ挽回の機会はありませんので、自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。

  1. 自分が受ける枠を先に決める。A日程・B日程・消防職・通年採用があり、同一の職種について日程が異なる試験を重複して受験することはできない
  2. 第1次試験の書類選考に出す内容を作り込む。ここで書いたことが、最終試験の個別面接まで残る前提で組み立てる
  3. 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
  4. SPI3の受験予定を早めに確定させる。未受験だと第2次試験のグループディスカッションに参加できない
  5. この記事の前半から桑名市の事実を2つか3つ選び、グループディスカッションでも個別面接でも出せる長さに短くまとめる
  6. 声に出して練習し、答えるたびに「ここを掘られたら何と返すか」を書き足していく

優先順位に注意

ステップ5の自治体研究は、他の受験生と差をつけるための工程です。時間が足りないときは、ステップ2の書類の作り込みと、ステップ4のSPI3の受験予定を先に片づけてください。桑名市のA日程では、書類が選考の入口であり、SPI3の受験がグループディスカッションに参加する条件にもなっています。この2つが整わないと、市の知識を語る場面そのものが来ません。

なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、桑名市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

桑名市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。

桑名市役所の想定問答集を見る

さいごに

令和9年度採用のA日程は、保育教育職を除けば、書類選考から始まり、SPI3とグループディスカッションで絞られ、最後に個別面接で決まります。長く話す機会は一度きりですので、そこへ至るまでに提出した書類と、集団の場で見せた振る舞いが、当日の受け答えの前提として積み上がっています。

三つの県と境を接し、揖斐川の河口で水と向き合ってきた市が、次に何をつくろうとしているのか。市が案内に掲げた「一緒につくろう」という言葉に、自分は何を持ち込めるのか。

書いた内容と、議論の場で出した言葉と、最後に話す志望動機。この三つが同じ方向を向いていれば、桑名市の選考の形には十分に噛み合います。