本記事では、遠野市職員採用試験の面接対策で必要な、遠野市の特徴基礎データ行政課題重点政策面接の流れ想定される質問評価の観点についてまとめています。

遠野市役所の面接試験では、「なぜ遠野市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。一般事務職員の採用予定が5名程度という試験では、市の実情をどれだけ自分の言葉で語れるかが、他の受験者との差になります。

本記事の掲載内容を参考に、自分の強みや関心と遠野市政の接点を考え、面接での回答作りに役立ててください。

第1部|自治体研究編

遠野市の特徴

本格的な面接対策をはじめる前に、まずは遠野市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)

  • 岩手県が「沿岸と内陸を結ぶ」と位置づける高速道路の両端、釜石市と花巻市の双方に隣接する市である。
  • 人口は23,301人、面積は825.97km²、人口密度は28.2人/km²(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)。
  • 面積は岩手県全体の約5.4%にあたる一方、人口は県全体の約2.0%。県土に対する広さの比率が、人口の比率の倍以上という構成になっている。
  • 隣接するのは釜石市・花巻市・奥州市・宮古市・住田町・大槌町の6市町。三陸沿岸の釜石市・宮古市と、内陸の花巻市の双方に接しており、性格の異なる地域と境を接している
  • 隣接する4市と人口密度を比べると、遠野市の28.2人/km²は宮古市35.4人/km²、釜石市63.8人/km²、花巻市97.6人/km²、奥州市107人/km²を下回り、最も低い
  • 市の花はやまゆり、市の木はいちい。
  • 市役所の本庁舎は中央通りにあり、職員採用を担当する総務企画部総務課はとぴあ庁舎に置かれている。
  • 市は消防本部を単独で持ち、消防職員も市役所の事務職と同じ「遠野市職員採用試験」・同じ受験案内で募集される。
  • 職員採用試験は前期・後期の年2回実施され、最終合格者は採用候補者名簿に登載される。

遠野市の基礎データ

面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「遠野市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。

ここでは、人口規模、市域の広さ、人口密度、周囲との位置関係など、市の基礎的なプロフィールを整理しました。市単独の年齢別人口や市内総生産は当研究会では確認できていないため、比較の物差しとして岩手県全体の数値もあわせて示します。

項目内容
総人口23,301人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)
総面積825.97km²(岩手県の約5.4%)
人口密度28.2人/km²(上記の総人口と総面積から算出)
隣接自治体釜石市・花巻市・奥州市・宮古市・住田町・大槌町
市の花/市の木やまゆり/いちい
市役所の所在地岩手県遠野市中央通り9番1号(本庁舎。総務企画部総務課はとぴあ庁舎)
(参考)岩手県の総人口1,126,813人(令和7年10月1日現在)
(参考)岩手県の総世帯数535,667世帯(令和7年10月1日現在)
(参考)岩手県の面積15,275.04km²(北海道に次ぐ全国2番目)
(参考)岩手県の県内総生産4兆8,973億円(令和5年度・名目)

遠野市の面積・隣接自治体・市の花・市の木、および比較に用いた各市の人口密度は、自治体の公表値による数値です。岩手県の総人口・総世帯数・面積・県内総生産は岩手県公式サイトの公表値、市役所の所在地は令和8年度(前期)の受験案内によります。市単独の最新統計は、遠野市公式サイトの統計・広報のページであわせて確認してください。総人口は総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(令和8年1月1日現在)の数値で、人口密度はこの総人口を総面積で割って算出しました。

数字から考えられる市政課題

遠野市の姿は、面積と人口の比率を並べるとつかみやすくなります。市域825.97km²は岩手県全体の約5.4%にあたりますが、そこに暮らす23,301人は県人口の約2.0%にとどまります。

県土の5%あまりの土地を、県人口の2%ほどの人数で受け持っているという構図です。

人口密度でみると、この差はもっとはっきりします。県全体の総人口を面積で割ると1平方キロメートルあたり約74人ですが、遠野市は28.2人/km²と、その4割弱です。

隣接する4市と比べても最も低く、行政サービスは「窓口に来てもらう」だけでは完結しにくい条件にあります(参考:岩手県の人口・経済|令和7年10月1日現在。面接で遠野市の現状に触れる場面を、一例として書き出してみます。

「遠野市は人口が2万3千人ほどで、県内でも人の密度が低いほうだと知りました。そのぶん職員一人が受け持つ地域は広くなると思うので、住民の方の顔が見える距離を保ちながら、どうやって効率よく回していくかを考える仕事になるのではと感じています」

遠野市の経済・産業

県全体の産業構造からみた位置づけ

遠野市単独の市内総生産や事業所統計について、当研究会が確認できる公式統計は限られています。ここでは、市が属する岩手県全体の産業構造を手がかりに、地域経済の輪郭をつかんでおきます。

  • 岩手県の県内総生産(名目)は4兆8,973億円、1人当たり県民所得は283万5千円で、全国を100とすると80.5(令和5年度県民経済計算)。
  • 生産額の構成比は第1次産業3.0%・第2次産業25.5%・第3次産業70.7%(同年度)。
  • 就業者数の構成比は第1次産業8.8%・第2次産業26.0%・第3次産業65.2%(同年度)。

ここで目を引くのが第1次産業の位置です。

生産額では3.0%にとどまる第1次産業が、就業者では8.8%を占めるという開きは、農林業が金額以上に人の働き口を支えていることを示しています。産業や雇用の話題では、企業誘致だけでなく、一次産業の担い手をどう確保するかという論点まで視野に入れておくと厚みが出ます(出典:岩手県の人口・経済|令和5年度県民経済計算

沿岸と内陸のあいだという条件

遠野市の経済を語るうえで外せないのが、位置そのものです。岩手県が「沿岸と内陸を結ぶ」と説明する東北横断自動車道釜石秋田線(釜石〜花巻)は平成31年3月に全線開通しました。

遠野市は、その両端にあたる釜石市と花巻市の双方に隣接しています。つまり沿岸と内陸を結ぶ幹線の、ちょうど間にある市だということです。

沿岸側では、三陸沿岸道路(仙台〜八戸、約359km)が令和3年12月に全線開通し、所要時間は約3時間20分短縮されました。宮古盛岡横断道路も令和3年3月に全線開通しています。

震災からの復興道路として整備されたこれらの路線によって、県内の人とものの流れは大きく変わりました(出典:岩手県の道路整備の現況|令和3年。面接で産業や交流の話をするなら、「通り道になった」で終わらせず、通過する人やものを市の中でどう受け止めるかまで踏み込みましょう。

観光という切り口

令和6年の岩手県全体の観光入込客数は26,441,111人回(前年比12.8%増)、観光消費額は1,992億7,300万円(同1.6%増)でした。県内には世界遺産「平泉」があり、県全体としては入込客数が二桁の伸びを見せている局面です(出典:岩手県観光統計概要|令和6年

遠野市そのものの観光資源については、統計よりも市公式サイトの観光・文化のページに材料が集まっています。面接で観光に触れるなら、名所を挙げて終わりにせず、訪れた人の消費をどう市内の事業者へ広げるか、隣接する沿岸の市町との周遊にどう乗るかといった一段深い視点まで用意しておきたいところです。

働き手をめぐる見通し

岩手県の15歳以上65歳未満人口は、2015年から2045年までの30年間で43.2%減少する見込みです(全国平均は27.7%減)。県はこの推計を受け、医療や介護の人材確保が困難になる可能性を課題に挙げています。

圏域別では県北・沿岸地域の減少幅がとくに大きく、30年間で労働力人口が平均55.9%減という見通しも示されています(出典:日本の地域別将来推計人口(岩手県資料)|平成30年推計。働き手が減ることは、産業だけでなく市役所自身の人員体制にも直結する前提条件です。

遠野市の主な行政課題

ここまでの数字と産業の姿を踏まえると、遠野市が向き合っている課題が見えてきます。面接で「市の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の4つを押さえておきましょう。

人口減少と高齢化が重なる局面

岩手県の人口は、2015年から2045年までの30年間で30.9%減少する見込みです(全国は16.3%減)。65歳以上人口は2025年(令和7年)にピークを迎えて減少に転じる一方、高齢化率そのものは上昇を続けるとされ、県人口は令和22年(2040年)に100万人を下回る見通しです。

高齢者の数が減り始めても、支える側の減り方のほうが速いために高齢化率は上がり続ける、という段階に入っているわけです。人口23,301人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)の遠野市は、この変化を県平均より早く受けやすい規模だといえます。

広い市域を、薄い人口で支えること

825.97km²の市域に23,301人が暮らし、人口密度は28.2人/km²です。世帯が広く分散していれば、移動にも情報の伝達にも手間がかかり、同じサービスを届けるための一人当たりのコストは高くなります。

窓口に来られる人だけを前提にした行政では届かない住民が出てくるという点は、志望動機を組み立てるうえで具体的に使える論点です。市が消防本部まで単独で運営していることを踏まえると、限られた職員数で担う仕事の幅も相応に広いと考えられます。

災害への備えと、沿岸に隣り合う立地

岩手県地震・津波被害想定調査(令和4年9月公表)は、マグニチュード9クラスの地震を想定しています。県全体の死者数が最も多くなるのは日本海溝(三陸・日高沖)モデルの冬の夕方18時頃の場合で約7,100人、建物の全壊は最も多い想定で約35,000棟です。

ただし人的被害のほとんどは津波によるもので、揺れによる全壊は日本海溝モデルで約1,700棟と見込まれています(出典:岩手県地震・津波被害想定調査|令和4年

県全体では東日本大震災津波で死者4,672人・行方不明者1,122人という被害を経験しており(平成29年2月28日現在、いわて震災津波アーカイブ)、防災は岩手で働く公務員に共通する問いです。

遠野市は、三陸沿岸の釜石市・宮古市と境を接する位置にあります。市域そのものの浸水想定や土砂災害の危険箇所は、市が公表するハザードマップと地域防災計画で確認しておきましょう。

限られた人員と財源での行政運営

遠野市単独の財政指標は公表資料から確認できていないため、ここでは県全体の水準を物差しにします。令和5年度決算の実質公債費比率は12.7%(早期健全化基準25%を下回る)、将来負担比率は201.1%(同400%)、経常収支比率は92.6%で前年度の94.2%から1.6ポイント改善しました(出典:岩手県の財政状況|令和5年度決算

経常収支比率が9割を超える状態は、毎年決まって入る収入の大半が固定的な支出で埋まっていることを意味します。

人員の面でも、遠野市の前期試験の採用予定は職種ごとに1名から5名程度で、受験案内には成績によっては合格者数が採用予定人員を下回る場合があると明記されています。何かを増やすには何かを見直す、という判断が日常的に求められる規模です。

遠野市の重点政策|採用の設計と県の計画から読み解く

遠野市の総合計画の名称や施策体系は、市公式サイトの市政情報のページで最新のものを確認しておきましょう。ここでは、受験生が直接読める一次資料として、市が公表している受験案内から読み取れる方向性と、市を取り巻く県の計画の枠組みを押さえます。

受験案内から読み取れる市の姿勢

令和8年度(前期)の受験案内が示す試験職種と採用予定人員は、一般事務職員5名程度、一般事務職員(障がい者)1名程度、土木技師2名程度、建築技師2名程度、保健師1名程度、消防職員1名程度です。

事務職と並んで土木・建築・保健師・消防を同じ回で募集しているところに、まちの土台を保ち、暮らしと安全を自前で支えるという市の構えが表れています(出典:遠野市職員採用試験(前期)受験案内|令和8年度

試験そのものの設計も特徴的です。一般事務職員の第1次試験は職務基礎力試験・職務適応性検査・作文試験の3種で、専門試験の記載はありません。

受験案内は職務基礎力試験について「基礎的な内容が出題されますので、特別な対策や勉強は不要です」と明記しています。

受験資格も昭和61年4月2日から平成20年4月1日までに生まれた方とされ、学歴要件の記載はありません。専門科目の勉強量ではなく、人柄と適性で選ぶという方向がはっきり出た設計です。

採用のかたちにも柔軟さがあります。

最終合格者は採用候補者名簿に登載され、採用時期は受験申込書に記載した希望日に応じて令和8年10月1日または令和9年4月1日のいずれかとなります(消防職員は令和9年4月1日採用)。一般事務職員(障がい者)の区分では、活字印刷文による出題に対応でき、かつ口頭による面接試験に対応できる方という要件が示されています。

県全体の政策の枠組み

市の施策を理解する土台として、県の方向性も押さえておくと視野が広がります。岩手県は「いわて県民計画(2019〜2028)」第2期アクションプランのもと、令和7年度当初予算7,329億円(前年度比7億円増、0.1%増)を編成しました。

うち震災分は299億円、通常分は7,030億円です。予算は人口の自然減・社会減対策を主軸に、GXとDXを両翼、安全・安心な地域づくりを基盤とする組み立てになっています(出典:岩手県当初予算のポイント|令和7年度

県は、平成20年以降に自然増減率と社会増減率が逆転して自然減のウェイトが高まったと分析し、仕事の創出による社会減対策と、社会全体での子育て支援による自然減対策を柱に据えています。遠野市が直面する人口の動きも、この県全体の構図と地続きです。

POINT|計画名を覚えることが目的ではない

施策名を暗記することが自治体研究のゴールではありません。①遠野市の規模と位置を数字で押さえる→②自分が携わりたい分野を一つ決める→③その分野で市が実際に何をしているかを市公式サイトで調べる→④自分の経験や強みをどう生かせるかを言葉にする、という順で準備しましょう。

悪い例「遠野市の地域を活性化させる仕事に携わりたいです」

改善例「まずは窓口や現場の仕事を一つずつ覚えて、住民の方に名前で呼んでもらえる職員になりたいです。その上で、遠野市は人口が2万3千人ほどで、市の広さは県全体の5パーセントを超えると聞きました。家が離れていても同じように相談してもらえる仕組みづくりに、いずれ関わっていきたいと考えています」

あわせて確認したい公式資料

すべてを読む必要はありません。志望動機に関係する資料を選び、重要な部分を自分の言葉で説明できるように準備しておきましょう。

  • 遠野市職員採用試験の受験案内(受験する回・職種のもの)
  • 遠野市公式サイトの「職員採用までの流れ」のページ
  • 遠野市公式サイトの市政情報・広報紙・統計・ハザードマップのページ
  • いわて県民計画(2019〜2028)と岩手県の当初予算資料(県内での市の位置づけを知る参考として)

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、遠野市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。遠野市の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

遠野市役所の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

遠野市役所の面接の概要

ここからは、遠野市役所の採用試験の構成と面接の位置づけ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。

遠野市役所の面接の流れ

令和8年度(前期)の受験案内によると、試験は第1次試験と第2次試験の二段階です。第3次試験にあたる記載はありません。

第2次試験は「第1次試験に合格した者について、人物試験及び体力検査(消防職員)等を行います」とされており、学力を測る科目は第1次で終わり、第2次は人物をみる段階という構成になっています。

項目内容(令和8年度・前期の受験案内による)
試験の段階第1次試験・第2次試験の二段階。第3次試験にあたる記載はありません
第1次試験(一般事務職員)職務基礎力試験(BEST-A・60題・1時間・4肢択一式)、職務適応性検査(BEST-P・150題・20分)、作文試験(1題・50分)の3種。専門試験の記載はありません
第1次試験(技術系・保健師)上記に加え、高校卒業程度の専門試験(30題・1時間30分・5肢択一式)が課されます
第1次の合否の扱い職務基礎力試験または作文試験のいずれかが一定の合格点に達しない場合、職務適応性検査で著しく適性を欠く場合は、他の試験の成績にかかわらず不合格
第2次試験受験案内は「人物試験及び体力検査(消防職員)等」と記載。市公式の「職員採用までの流れ」では、個人面接と集団討論を行うと案内されています
配点受験案内に記載がなく、非公表です
提出書類受験申込書と顔写真。面接カードや自己PRシートにあたる様式の記載はありません
申込方法「遠野市電子申請・届出サービス」によるオンライン申込、または受験申込書の持参・郵送
実施回と採用時期前期・後期の年2回。最終合格者は採用候補者名簿に登載され、採用は令和8年10月1日または令和9年4月1日

上記は遠野市が公表した令和8年度(前期)職員採用試験の受験案内、および市公式サイトの「職員採用までの流れ」にもとづく整理です。受験案内には試験内容が変更になる場合がある旨の記載があり、試験の構成・区分・実施時期は回や年度によって異なる可能性があります。受験の際は、必ず最新の受験案内でご確認ください。

第2次試験の中身については、公式資料のあいだで書きぶりに幅があります。受験案内は「人物試験及び体力検査(消防職員)等」とだけ記し、市公式の「職員採用までの流れ」のページは個人面接と集団討論を行うと案内しています(参考:遠野市|職員採用までの流れ

面接官の人数や所要時間、個別面接の回数までは公表されていません。準備としては、個人面接を軸に置きつつ、集団討論で意見を交わす練習も一通り済ませておくのが安全です。

もう一つ、遠野市の試験で見落とせないのが作文の位置です。作文試験は第2次ではなく第1次に置かれ、その趣旨は「当該職につくにふさわしい人柄、気力、表現力等を有しているかどうかをみるための記述式による筆記試験」と説明されています。

つまり作文は、文章力の測定であると同時に人物評価の入口でもあります。第1次で書いた作文の内容は、面接で聞かれても答えられる状態にしておくのが鉄則です。

遠野市役所が求める職員像

遠野市が「求める人物像」として定型の文言を公表しているかどうか、公表資料からは確認できません(当研究会調べ)。そこで、受験案内が試験の趣旨として書いている言葉から、評価されやすい資質を読み解きます。

作文試験の趣旨として挙げられているのは人柄、気力、表現力の3点です。あわせて職務適応性検査は「公的部門の職員としての職務への適応性を性格傾向の面から検証」するものとされ、著しく適性を欠く場合は他の成績にかかわらず不合格となります。

面接対策の言葉に翻訳すると、相手に対する誠実さ、やり切る力、自分の考えを届く言葉にする力の3つが評価の軸になると考えられます。自己PRでは「誠実さがあります」と述べるだけでなく、その資質をどう行動に変え、相手や周囲がどう変わったのかまで説明しましょう。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。遠野市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク会場までの道のりは、迷わずに来られましたか用意していない話題への反応と、受け答えの間合い
② 動機・志望民間企業ではなく市役所を選んだ理由を教えてください働き方の比較を自分なりに済ませているか。動機が経験に根を持っているか
③ 自己理解自分の長所が裏目に出た経験はありますか自分を突き放して見られるか。弱さとの付き合い方まで語れるか
④ 経験・行動意見が割れた場面で、あなたはどう動きましたか立場の違いを前にして、実際にとった行動の中身
⑤ 学業・経歴学生時代にいちばん時間をかけたことは何ですか何に力を注ぐかの判断基準と、その学びを仕事へつなげる視点
⑥ 適性・将来数年後、どんな職員になっていたいですか市の仕事の広がりへの理解と、成長の見通しの具体さ
⑦ 公共性・社会性岩手県や遠野市に関わる話題で、最近気になったことはありますか地域への関心が日常的にあるか。自分の意見を一言で述べられるか

ただし、この7カテゴリーは遠野市に限らず全国の官公庁でほぼ共通です。受験者全員が対策してくる領域なので、ここでは大きな差がつきにくいのです。

では、どこで差がつくのか。それが次の「遠野市ならでは」の質問です。

合否を分けるのは「遠野市役所ならでは」の質問

「なぜ岩手県庁ではなく、遠野市役所なのですか」
「遠野市の魅力と課題を、それぞれ挙げてください」

どちらも市の現状を知らなければその場では答えようがない質問ですが、逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。こうした質問に答えるための「遠野市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。

質問テーマ知っておきたい遠野市の事実答え方のヒント
市のかたち人口23,301人・面積825.97km²・人口密度28.2人/km²。面積は県土の約5.4%、人口は県全体の約2.0%にあたる大きい小さいという形容で終えず、面積の割合と人口の割合を並べて口にする。そのうえで、薄く広がった市域にサービスをどう届けるかという自分の問いを一つ添える
沿岸と内陸のあいだという位置県が「沿岸と内陸を結ぶ」と説明する東北横断自動車道釜石秋田線(釜石〜花巻)の両端の市に、遠野市は隣接している道路が通ったという事実だけで止めない。行き来しやすくなった条件を市の側からどう生かすかへ話を進める。物流でも観光でも、自分の関心に近いほうを選んでよい
なぜ県庁ではなく市役所か遠野市は消防本部を単独で持ち、消防職員も市役所の事務職と同じ受験案内で募集される。市が自前で担う範囲が広い役割分担の一般論を述べるのではなく、消防まで市が持つ規模の自治体で働く意味を、自分が関わりたい住民の場面まで下ろして話す
災害への備え県の地震・津波被害想定(令和4年公表)では県全体の死者が最大約7,100人。人的被害の大半は津波によるもので、遠野市は三陸沿岸の釜石市・宮古市と境を接する位置にある県全体の被害像を押さえたうえで、沿岸の市と隣り合う立地に触れる。市のハザードマップで自分の受験する市域のリスクを確認してから話すと、借り物の言葉にならない
遠野市の魅力市の花はやまゆり、市の木はいちい。統計に表れない魅力の材料は、市公式サイトの観光・文化や広報紙のページに集まっている自然が豊かという一般論で済ませず、自分が実際に歩いた場所と、そこで何を感じたかを一つ具体的に語る。下調べのうえで一度現地を訪ねておくと、語れることの厚みが変わる

使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。

想定される評価の観点

面接は、受験案内が示す試験の趣旨に照らして「これまでに実際どう行動してきたか」を確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
人柄立場や事情の異なる相手に、どんな態度で向き合ってきたか作文試験の趣旨に「人柄」が挙がっている市です。第1次で書く作文と面接で話す内容が同じ人物像を描くよう、使う素材を早い段階で一つに絞っておく
気力思いどおりにいかない状況を、どれだけの期間、どう引き受けたか採用予定は職種ごとに1名から5名程度で、受験案内には成績次第で合格者数が予定人員に届かないこともあると書かれています。粘った経験を、時間の経過がわかる形で話せるようにしておく
表現力資料や数字を、聞き手に伝わる言葉へ置き換えられるか職務基礎力試験が統計等の資料を分析する力をみる試験である以上、面接でも同じ力が見られます。人口密度28.2人/km²のような数字を、県平均の4割弱という比較に言い換える練習をしておく

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。

遠野市では集団討論もあわせて実施されると案内されており、他の受験者の前で自分の考えを述べる場面も想定されます。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。

  1. 最新の受験案内を読み、受験する職種の試験科目と申込方法を確認する(一般事務職員は職務基礎力試験・職務適応性検査・作文の3種。申込はオンラインでも郵送でも顔写真が必要です)
  2. 高校・大学生活やアルバイト等の経験を棚卸しする。学業・課外活動・仕事の3方向から、話せる具体例を1つずつ用意する
  3. 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
  4. 自治体研究のインプットをする。この記事の前半部分を読み返し、志望分野に近い事実を2〜3個、自分の言葉で説明できるようにする
  5. 固有質問の材料を対応表から集め、「事実 → 自分の問題意識 → やりたいこと」の一続きの話に編む
  6. 声に出して練習する。第1次試験で書いた作文は書いた内容の控えを残しておき、面接での答えとぶれていないかを本番前に照らし合わせる

優先順位に注意

ステップ4〜5の自治体研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、その経験を市の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません

なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、遠野市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

遠野市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。

遠野市役所の想定問答集を見る

さいごに

遠野市の採用試験は、第1次で職務基礎力試験と職務適応性検査、そして50分の作文を課し、第2次で人物をみる構成です。配点は公表されていませんが、学力を測る科目が第1次で完結する以上、最後に残るのは「この人と一緒に働きたいか」という判断だといえます。

人口23,301人、面積825.97km²という市では、職員一人が受け持つ範囲も、住民との距離の近さも、大きな市とはまるで違います。沿岸と内陸のあいだという位置も、消防まで市が自前で担っていることも、この市で働くという言葉の中身を形づくっています。

前期と後期の年2回という機会があることも踏まえ、自分が遠野市で何を担いたいのかを、面接官に伝わる具体さまで練り上げてから本番に臨んでください。