本記事では、陸前高田市職員採用試験の面接対策で必要な、陸前高田市の特徴基礎データ行政課題重点政策面接の流れ想定される質問評価の観点についてまとめています。

陸前高田市役所の面接試験では、「なぜ陸前高田市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。

令和8年度(前期)の試験は、第1次が総合適性検査、第2次が人物試験という二段階です。学力をみる試験を通過したあとに残る関門は面接であり、そこで話す材料は自分で用意しておく必要があります。

本記事の掲載内容を参考に、自分の強みや関心と陸前高田市政の接点を考え、面接での回答作りに役立ててください。

第1部|自治体研究編

陸前高田市の特徴

本格的な面接対策をはじめる前に、まずは陸前高田市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)

  • 岩手県の沿岸南部に位置し、人口16,802人・面積231.94km²の市(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)である。
  • 隣接するのは大船渡市・一関市・気仙郡住田町、そして県境を越えた宮城県気仙沼市。岩手県の市でありながら、宮城県と背中合わせの位置にある。
  • 人口密度は72.4人/km²で、広い市域に人が薄く散らばって暮らしている。
  • 岩手県の沿岸は宮古市を境に地形が変わり、その南側はリアス式海岸とされる。陸前高田市もこの区域に含まれる(出典:岩手県の面積・気候
  • 市役所は高田町字下和野に置かれ、市の花はつばき、市の木はすぎと定められている。
  • 仙台と八戸を結ぶ三陸沿岸道路(約359キロメートル)が令和3年12月に全線開通し、沿岸の所要時間は約3時間20分短縮された。
  • 岩手県の県北・沿岸地域は、2015年からの30年間で人口が平均43.9%減ると見込まれる圏域であり、陸前高田市もその一角にある(平成30年推計)。
  • 令和8年度(前期)の職員採用試験は、一般事務職・一般事務職(社会人経験)・一般事務職(障がい者対象)・保育士の4区分で行われ、いずれも採用予定人数は若干名とされている。

陸前高田市の基礎データ

面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「陸前高田市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。

ここでは、人口規模・市域の広さ・立地といった、市政の特徴を説明できる項目を整理しました。経済規模の物差しとしては、市が属する岩手県全体の数値もあわせて示します。

項目内容
総人口16,802人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)
総面積231.94km²
人口密度72.4人/km²(上記の総人口と総面積から算出)
隣接自治体大船渡市・一関市・気仙郡住田町・宮城県気仙沼市(3市1町)
市の花・市の木つばき・すぎ
市役所所在地陸前高田市高田町字下和野100番地
(参考)岩手県の総人口1,126,813人(令和7年10月1日現在)
(参考)岩手県の面積15,275.04km²(北海道に次ぐ全国2番目)
(参考)岩手県の県内総生産4兆8,973億円(令和5年度・名目)
(参考)岩手県の一人当たり県民所得283万5千円(全国を100とすると80.5)

陸前高田市および近隣市の面積・隣接自治体・市の花木は、自治体の公表値の数値です。市役所所在地は令和8年度(前期)の受験案内の記載によります。岩手県の総人口は令和7年10月1日現在、県内総生産と一人当たり県民所得は令和5年度県民経済計算、県の面積は岩手県公式サイトの公表値です。市の数値は市公式サイトの公表値と表記が異なる場合がありますので、正確な数字が必要な場合は市の「市の概要」のページもご確認ください。総人口は総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(令和8年1月1日現在)の数値で、人口密度はこの総人口を総面積で割って算出しました。

数字から考えられる市政課題

陸前高田市の人口16,802人は、岩手県全体の約113万人に対して1.4%ほどにあたります。近隣と並べてみると、隣接する大船渡市は31,392人、県境の向こうの宮城県気仙沼市は55,055人で、陸前高田市はこの気仙沼市の3割ほどの規模です(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)。

ただし面接で問われるのは、規模の大小そのものよりも、この規模のまちが置かれた条件をどう理解しているかです。

県の資料では、県北・沿岸地域の人口は30年間で平均43.9%減、労働力人口は平均55.9%減と、県平均の30.9%減を上回る速さで縮む見通しが示されています(平成30年推計)(出典:岩手県の人口の将来推計に関する資料|平成30年推計

県全体でみても、65歳以上の人口は2025年(令和7年)にピークを迎えて減少に転じる一方、高齢化率は上がり続け、県人口は令和22(2040)年に100万人を下回る見込みです。

人口が減っていくのに高齢化率だけは上がり続けるなかで、限られた人手と財源で暮らしの土台をどう保つかが、陸前高田市のような沿岸の市に突きつけられた問いです。陸前高田市の現在地を語るなら、たとえばこんな形にまとめられます。

「陸前高田市は人口が1万6千人ほどのまちで、岩手県の沿岸部はこれから人口の減り方がとくに大きいと聞きました。だからこそ、今そこで暮らしている方の手続きや相談を確実に受け止めることと、市の外の人とつながりを作ることの、どちらも大事になるのではと感じています。その両方に自分も関われる規模の役所で働きたいと考えています」

陸前高田市の経済・産業

岩手県の産業構造からみた位置づけ

陸前高田市の経済は、三陸沿岸という立地と、市が属する岩手県全体の産業の姿から捉えると輪郭がつかめます。市単独の産業統計は公表されている資料が限られるため、ここでは県の産業構造を手がかりに、沿岸のまちに共通する条件として読み解いていきます。

  • 岩手県の県内総生産(名目)は4兆8,973億円、一人当たり県民所得は283万5千円で、全国を100とすると80.5(令和5年度)。
  • 産業別の県内総生産構成比は、第1次産業3.0%・第2次産業25.5%・第3次産業70.7%(令和5年度)。
  • 就業者数の構成比は、第1次産業8.8%・第2次産業26.0%・第3次産業65.2%(令和5年度)。

ここで目を留めたいのは所得の水準です。一人当たり県民所得は、全国を100とすると80.5にとどまります

生産額の7割を第3次産業が占める一方、働く人の8.8%は第1次産業に就いており、農林水産業が金額以上に雇用を担っている県だと読み替えられます。

三陸沿岸に位置する陸前高田市でも、海と結びついた仕事が地域の暮らしを支える基盤になっていると考えられます。「稼ぐ場をどう保つか」は、産業や雇用について話すときに欠かせない視点です(出典:岩手県の人口・経済|令和7年

道路網の整備で変わった位置関係

復興道路として整備された三陸沿岸道路(仙台〜八戸、約359キロメートル)が令和3年12月に全線開通し、沿岸の所要時間は約3時間20分縮まりました。内陸へ抜ける宮古盛岡横断道路は令和3年3月、東北横断自動車道釜石秋田線(釜石〜花巻)は平成31年3月に全線開通しています。

陸前高田市は宮城県気仙沼市と接する位置にあり、県境を越えた行き来が日常の一部になりやすい地域です。市の外へ物を出すにも、市の外から人を呼ぶにも、かかる時間の前提が変わったということです。

面接では、道路が通ったこと自体よりも、それによって陸前高田市の産業や暮らしの選択肢がどう広がったのかを説明できるようにしておきましょう(出典:岩手県の道路整備の現況(復興道路)

観光の回復と、消費の伸びのずれ

令和6年の岩手県全体の観光入込客数は延べ26,441,111人回で、前年から3,003,094人回(12.8%増)増えました。一方、観光消費額は199,273百万円で前年比1.6%増にとどまっています。

訪れる人の数は戻っても、一人あたりが地域で使う金額の伸びはそれに追いついていないという読み方ができます。

県内には世界遺産「平泉」のように広く知られた内陸の資源があり、三陸沿岸にはそれとは別に海と食の資源があります。陸前高田市の場合、その海も食も市の境界で切れているわけではなく、隣の大船渡市から県境の向こうの気仙沼市まで、ひと続きの沿岸として人が行き来します。

人口1万6千人ほどのまちであれば、訪れる人を市域に囲い込もうとするより、沿岸を移動する人にどこで立ち寄り、何にお金を使ってもらうかを考えるほうが現実的でしょう。定住人口が減る地域ほど、来てもらうことと、来た人に使ってもらうことを分けて考える必要があります(出典:岩手県観光統計概要|令和6年

陸前高田市の主な行政課題

ここまでの数字と地理的な条件を踏まえると、陸前高田市が向き合っている課題が見えてきます。面接で「市の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の4つを押さえておきましょう。

人口減少の速さと担い手の確保

陸前高田市が属する県北・沿岸地域は、県内でもとくに人口の減り方が大きい圏域です。岩手県全体でみても、人口は2015年からの30年間で30.9%減る見込みで(平成30年推計)、全国の16.3%減を大きく上回ります。

とくに15歳以上65歳未満の人口は43.2%減(全国平均は27.7%減)と見込まれ、県の資料は医療・介護人材の確保が困難になる可能性を挙げています。

人口16,802人の市では、一人の職員が受け持つ業務の幅も自然と広くなります。担い手の不足は産業だけの話ではなく、市役所の仕事の回し方そのものに直結する課題です。

津波・大規模地震への備え

岩手県が令和4年9月に公表した地震・津波被害想定調査は、M9クラスの地震を想定し、県全体の死者を最も多い場合で約7,100人と見込んでいます。建物の被害では、全壊が最も多い場合で約35,000棟、うち約33,000棟が津波によるものと想定されています(出典:岩手県地震・津波被害想定調査(概要版)|令和4年

東日本大震災津波では、県内で死者4,672人・行方不明者1,122人、家屋の全壊・半壊は26,077棟にのぼりました(平成29年2月28日現在)(出典:いわて震災津波アーカイブ|被害の状況

ここに挙げたのは県全体の数字ですが、三陸沿岸に位置する陸前高田市にとって、この災害は市のこれまでと今のまちの姿に直接かかわる出来事です。津波への備えと避難の実効性は、防災を担当する部署に限らず、行政のあらゆる分野に関わる土台になります。

面接でこの話題に触れるときは、被害の大きさを知識として語るより、自分がこの地域で何を担いたいのかに引きつけて話すほうが、言葉が届きます。

働く場と所得水準をどう底上げするか

先に見たとおり、県全体の所得水準は全国平均を下回っています。県は令和7年度当初予算で、人口の自然減・社会減への対策を主軸に据え、仕事を生み出して人の流出をやわらげる方向を打ち出しました。

陸前高田市のように人口規模の小さい市では、事業所が一つ増えるか減るかが雇用に与える影響は大きくなります。産業振興を志望する場合は、企業を呼ぶ話だけでなく、いま地域にある仕事の担い手をどう確保するかまで視野に入れておきたいところです。

市域を越えて成り立つ暮らしを、市がどう支えるか

陸前高田市が接する4つの自治体のうち一つは、県境の向こうの宮城県気仙沼市です。先に見た道路網の整備もあって、買い物や通院、通勤の行き先は市の中だけでは完結しにくくなっています。

行政サービスの多くは市の区域を単位に組み立てられますが、住民の生活圏はそれより広く広がっています。市の区域と生活圏がずれているという前提に立つと、公共交通や広域での連携、市外の人との関わりづくりが具体的なテーマとして立ち上がってきます。

重点政策|いわて県民計画と陸前高田市の行政運営

陸前高田市の行政運営を理解する土台として、まずは市が属する岩手県の最上位計画と予算の方針を「県内の背景」として押さえておきましょう。県が何を主軸に据えているかを知っておくと、市の取り組みがどこに位置づくのかも読み取りやすくなります。

いわて県民計画(2019〜2028)と令和7年度当初予算

岩手県の県政運営の最上位方針は「いわて県民計画(2019〜2028)」で、令和7年度当初予算はその第2期アクションプランのもとで編成されています。

予算の総額は7,329億円(前年度比7億円増、0.1%増)。人口の自然減・社会減への対策を主軸に、GX(脱炭素に向けた経済社会の転換)とDX(デジタル化)を両翼とし、安全・安心な地域づくりを基盤に据える構成です(出典:令和7年度岩手県当初予算のポイント

県予算に置かれた「震災分」が示すもの

この令和7年度当初予算7,329億円は、通常分7,030億円と震災分299億円に分けて示されています。震災から時間が経った現在も、復興に関わる事業が県予算の中に独立した枠として置かれているということです。

陸前高田市を含む沿岸の市では、整備された道路や施設をこれからの暮らしと産業にどう生かすかという段階の仕事が増えています。一方で、震災分が予算に残っていること自体が示すように、復興を済んだ話として扱うことはできません。

防災や復興を「守り」の話だけで語らず、安全な暮らしを土台に地域をどう伸ばすかと、そこで暮らす人をどう支え続けるかの両方に触れられると、志望動機に厚みが出ます。

県全体の動きと、沿岸のまちのこれから

岩手県は、東北への国際リニアコライダー(ILC)の実現に産学官で取り組むなど、数十年先を見据えた地域づくりにも動いています。沿岸部では、整った高速道路網が産業や観光、医療の条件を少しずつ変えつつあります。

陸前高田市の仕事を考えるときは、市の中で完結する話と、県全体や三陸沿岸という広い枠組みで動く話の両方があると意識しておくと、志望動機の視野が広がります。

POINT|計画名を探すより、市の条件から考える

計画の名称を言えるようになることが自治体研究の目的ではありません。①陸前高田市の人口規模と、沿岸かつ県境という立地を知る →②その立地のもとで自分が関わりたい分野を一つに絞る →③市の広報紙や市政情報でその分野の実際の動きを追う →④そこに自分の経験や強みをどう重ねられるかを言葉にする、という順で準備しましょう。

悪い例「陸前高田市のために精一杯がんばって、地域を元気にしたいです」

改善例「最初のうちは、目の前の手続きを間違いなくこなせるようになることが第一だと思っています。そこができたら、陸前高田市は人口が1万6千人ほどで、買い物や通院で市の外に出る方も多いと聞きましたので、市の中だけで完結させずに、隣の市や町と一緒に暮らしを支えるような仕事にも関わっていきたいです」

あわせて確認したい公式資料

すべてを読む必要はありません。志望動機に関係する資料を選び、重要な部分を自分の言葉で説明できるように準備しておきましょう。

  • 陸前高田市職員採用試験の受験案内(最新年度・最新の回のもの)と、市の職員採用ページ
  • 陸前高田市公式サイトの市政情報・広報紙・各種計画のページ
  • いわて県民計画(2019〜2028)と岩手県の当初予算資料(県内における陸前高田市の位置づけを知る参考として)
  • 岩手県の人口の将来推計・観光統計・被害想定調査などの統計資料

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、陸前高田市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。陸前高田市の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

陸前高田市役所の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

陸前高田市役所の面接の概要

ここからは、陸前高田市役所の採用試験の構成と、面接で問われやすい質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。

陸前高田市役所の面接の流れ

令和8年度陸前高田市職員採用試験(前期)は、第1次試験と第2次試験の二段階です。

第1次は総合適性検査だけ、第2次は人物試験(面接試験)だけという構成で、教養試験・専門試験・作文(論文)試験・集団討論の記載は受験案内にありません。学力をみる試験の科目名も「教養試験」ではなく「基礎能力試験」で、他市で一般的な「教養試験+論文」の形をそのまま当てはめると準備を誤ります(出典:令和8年度陸前高田市職員採用試験(前期)受験案内

項目内容(令和8年度・前期)
試験の名称令和8年度陸前高田市職員採用試験(前期)。採用予定日は令和9年4月1日です。後期の実施の有無や内容は、市の職員採用ページの最新の公表でご確認ください
試験の段階二段階。第1次試験(総合適性検査)→ 第2次試験(人物試験)
第1次試験総合適性検査。午前10時から11時までの「基礎能力試験」(60分)と、午前11時15分から11時50分までの「パーソナリティ試験」(35分)を続けて受ける形です
基礎能力試験の内容受験案内の記載は「言語的能力、数理的理解力、論理的思考力、推理能力、一般教養知識、時事問題や社会常識、英語知識など」
パーソナリティ試験の内容受験案内の記載は「意欲、性格特徴、気質など、個人の持ち味を測定する適性検査」
受験方法第1次試験は、マークシート方式とテストセンター方式のいずれかを受験者が選択します
第2次試験人物試験。受験案内の記載は「公務員としての適格性をみるため、面接試験を行います。」で、個別か集団かの別・回数・時間の記載はありません
集団形式受験案内に、集団討論の記載はありません
配点・合格決定配点や合格決定の方法は受験案内に記載がなく、公表されていません
募集職種一般事務職/一般事務職(社会人経験)/一般事務職(障がい者対象)/保育士の4区分。いずれも採用予定人数は若干名で、人員は変更となる場合があります
受験資格一般事務職は平成3年4月2日から平成17年4月1日までに生まれた方。社会人経験の区分は昭和51年4月2日以降に生まれ、民間企業などでの職務経験が直近7年中に通算5年以上ある方が対象です。障がい者対象の区分は昭和51年4月2日から平成21年4月1日までに生まれ、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳のいずれかの交付を受けている方が対象です
申込み原則として電子申請による受験申込み。市ホームページの職員採用ページから手続きし、持参・郵送による受付は行われません
試験会場マークシート方式の第1次試験と第2次試験は陸前高田市役所。テストセンター方式のみテストセンター会場です
合格から採用まで第2次試験の合格者は「陸前高田市職員採用候補者名簿」に登載されます。名簿には採用を辞退する方などを見込んで実際の採用人員より多くの方が登載されるため、成績順位が下位の場合は採用されないことがあります。名簿の効力は原則として令和9年9月30日までです

注目したいのは、選考が二段階で終わる点です。配点や合格決定の方法は公表されていないため、面接の比重が何割かを断定することはできません。

ただ、選考の後半に残る試験が人物試験だけであることは受験案内から読み取れます。筆記の準備と並行して、話す中身を早い段階から作っておく必要がある試験です。

もう一つ押さえておきたいのが、面接の形式が公表されていない点です。個別か集団か、何回行われるか、時間はどれくらいかは受験案内に書かれていません。

どの形で呼ばれても通用するように、一問一答の受け答えと、人前で自分の考えを述べる練習の両方をしておくと安心です。

あわせて、面接カードや自己PR書にあたる提出書類も受験案内には記載がありません。当日の持参物として明記されているのは受験票(テストセンター会場では本人確認のための身分証明書)だけで、話の順序や材料は自分で組み立てて持ち込むことになります。

受験案内には、勤務条件として、基準となる現行の月額初任給が大卒233,600円・高卒208,000円であること(採用前の経歴に応じた加算あり)、勤務時間が原則として月曜日から金曜日の午前8時30分から午後5時15分までであること、年次有給休暇が1年間に20日間であること(4月採用の場合、その年12月までは15日間)なども記載されています。

働く姿を具体的に思い描くために、勤務条件の欄にも目を通しておきましょう。

上記は、令和8年度陸前高田市職員採用試験(前期)の受験案内および市公式サイトの職員採用ページにもとづく内容です。試験の構成・科目・募集職種・受験資格等は、年度や実施の回によって異なる可能性があります。市サイトには過年度の受験案内も残されているため、年度表記を必ず確かめ、受験の際はご自身が受ける回の最新の受験案内をご確認ください。また、市サイトには一般の職員採用試験とは別に、任期付職員の採用試験や会計年度任用職員の募集のページもあります。案内が別になっているため、応募する枠を取り違えないようご注意ください。

陸前高田市役所が求める人物像

陸前高田市の職員採用ページと令和8年度(前期)の受験案内では、「求める人物像」が定型の文言としては示されていません。そのぶん、試験の構成と市の置かれた状況から評価されやすい資質を自分で読み解いておくことが、そのまま準備の差になります。

第1次が適性検査だけで、人物試験が最後の関門であること。4つの区分すべてが若干名という採用規模であること。人口16,802人という市の大きさ。

この3点を重ねると、少ない人数で広い範囲の仕事を受け持ち、住民一人ひとりと長く関わり続けられる人が想定されていると考えられます。

自己PRでは「地元の力になりたいです」と述べるだけでなく、その思いで実際に何をして、相手や周囲がどう変わったのかまで説明しましょう。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。陸前高田市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイクここまで来るのは大変でしたか受け答えの温度感。用意していなかった話題に、どんな表情と言葉で応じるか
② 動機・志望なぜ民間企業ではなく公務員なのですか民間企業でも実現できる理由で止まっていないか。選び方の道筋が自分の経験とつながっているか
③ 自己理解ご自身の短所をどう自覚していますか自分を外から見られているか。短所とどう付き合ってきたかまで語れるか
④ 経験・行動これまでで最も粘り強く続けたことを教えてください出来事の大きさではなく、続けている間に何を考え、どう手を打ったか
⑤ 学業・経歴学んできたことを、専門でない人に説明してみてください相手に合わせて言葉を選ぶ力と、学びを仕事へ橋渡しする視点
⑥ 適性・将来希望と違う部署に配属されたらどうしますか市の仕事の広がりをどこまで理解しているか。配属を受け止める柔らかさ
⑦ 公共性・社会性最近の出来事で、気になったものはありますか社会の動きへの関心と、自分の考えを短く述べられるか

ただし、この7カテゴリーは陸前高田市に限らず全国の官公庁でほぼ共通です。受験者全員が対策してくる領域なので、ここでは大きな差がつきにくいのです。

では、どこで差がつくのか。それが次の「陸前高田市ならでは」の質問です。

合否を分けるのは「陸前高田市ならでは」の質問

「なぜ岩手県庁ではなく、陸前高田市役所なのですか」
「陸前高田市の魅力と課題を、それぞれ挙げてください」

どちらも市の現状を知らなければその場では答えようがない質問ですが、逆に言えば、手元に材料があるかどうかだけで差がつく質問でもあります。こうした質問に答えるための「陸前高田市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。

質問テーマ知っておきたい陸前高田市の事実答え方のヒント
まちの規模感人口16,802人・面積231.94km²・人口密度72.4人/km²(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)。市役所は高田町字下和野に置かれている1万6千人という規模を「小さい」で終わらせず、少人数の職場で自分ならどの仕事を受け持ちたいかまで述べます
なぜ県庁ではなく市役所か県は広域の政策づくりや県全体の計画を担い、市は住民票の交付から子育て、保育まで暮らしの手続きを直接受け止める。陸前高田市の採用区分も一般事務職の3区分と保育士で構成される制度上の線引きを語るより、陸前高田市で自分が見聞きしたことを一つ挙げ、それが市役所を選んだ理由にどうつながったのかを順に話します
圏域ぐるみで進む人口減少平成30年推計では、県北・沿岸地域の人口は30年間で平均43.9%減、労働力人口は平均55.9%減と見込まれ、県平均の30.9%減を上回る43.9%は市単独ではなく圏域全体の見通しである点を押さえたうえで、少ない人手でも回るように工夫した自分の経験を一つ重ねて話します
津波・防災県の被害想定(令和4年公表)は、M9クラスの地震で建物全壊を最も多い場合約35,000棟、うち約33,000棟が津波によるものと見込む防災を「知っている」で終えず、災害時に市の職員がどちら側に立つのかを押さえたうえで、平時の訓練や声かけで自分に関われることを一つ挙げます
陸前高田市の魅力隣接する4自治体のうち一つは宮城県気仙沼市で、県境に接する沿岸のまち。三陸沿岸道路の全線開通で沿岸の所要時間は約3時間20分短縮された景色や食の紹介にとどめず、県境を越えた行き来がしやすくなったことを市の暮らしや産業のどこに生かせるか、自分なりの見立てを添えます

5つを均等に覚える必要はありません。志望する仕事に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおきましょう。

想定される評価の観点

面接は、先ほど整理した「陸前高田市で評価されやすい資質」に照らして、これまでに実際どう行動してきたかを確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
顔の見える関係を続ける力年齢や立場の違う相手に、同じ丁寧さで向き合えるか人口16,802人の市では、窓口で同じ方と何度も顔を合わせます。一度きりでない関係のなかで信頼を得た経験を、相手の変化まで含めて用意しておく
受け持つ範囲の広さに耐える力担当の線引きがはっきりしない仕事に、どう向き合ってきたか4区分いずれも若干名という採用規模を踏まえ、担当の外にはみ出して動いた経験を、そのとき周りがどう動いたかまで含めて用意しておく
自分で組み立てて話す力提出書類の記載がない試験のなかで、話の順序と材料を自分の側から出せるか志望動機と経験を、手元の書類やメモに頼らず口頭だけで組み立てる練習を重ね、どこから聞かれても話し始められる状態にしておく

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。

陸前高田市の人物試験は回数も時間も公表されていないため、どこまで掘られるかは読めません。だからこそ、自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。

  1. 最新年度の受験案内を読み、志望する区分の受験資格と、第1次試験の受験方法(マークシート方式かテストセンター方式か)の選び方を確認する
  2. 高校・大学生活やアルバイト等の経験を棚卸しする。学業・課外活動から、話せる具体例を1つずつ用意する
  3. 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
  4. 自治体研究のインプットをする。この記事の前半を読み返し、陸前高田市と岩手県沿岸の事実を2〜3個、自分の言葉で説明できるようにする
  5. 固有質問の材料を対応表から集め、「事実 → 自分の問題意識 → やりたいこと」の一続きの話に編む
  6. 声に出して練習する。手元にメモを置かず、話す順序を自分で決めて答える形で繰り返す

優先順位に注意

ステップ4〜5の自治体研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、その経験を市の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません

なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、陸前高田市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

陸前高田市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しています。人物試験が最後の関門となる二段階の試験だからこそ、一問ずつの答え方を早い段階で形にしておきましょう。

陸前高田市役所の想定問答集を見る

さいごに

陸前高田市の令和8年度(前期)の試験は、第1次が総合適性検査、第2次が人物試験という二段階です。面接の形式も配点も公表されていないため、当日にどんな形で呼ばれても答えられるだけの材料を、自分の側で用意しておく試験だといえます。

人口1万6千人ほどで、隣接する市や町との行き来のなかで暮らしが成り立っているまちに、自分は何を持ち込めるのか。市公式サイトと受験案内を手元に置きながら、自分が見てきたこと、続けてきたことを一つずつ言葉にしていきましょう。