本記事では、花巻市職員採用試験の面接対策で必要な、花巻市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。
花巻市役所の面接試験では、「なぜ花巻市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。花巻市の大卒区分は第1次試験がWEBの総合適性検査だけで、その先に面接が2回控えているため、市の実情をどれだけ自分の言葉で語れるかが結果に直結します。
本記事の掲載内容を参考に、自分の強みや関心と花巻市政の接点を考え、面接での回答作りに役立ててください。
第1部|自治体研究編
花巻市の特徴
本格的な面接対策をはじめる前に、まずは花巻市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)
- 岩手県の内陸中部に位置し、盛岡市・北上市・遠野市・奥州市・宮古市など8つの市町と境を接する結節点。
- 市域は908.39平方キロメートルと広く、岩手県全体の面積の約6%を1つの市で占める。
- 人口は88,618人、人口密度は97.6人/平方キロメートル。県全体の平均を上回るが、900平方キロメートルを超える市域のどこにどれだけ人が住んでいるかは、この平均だけでは読み取れない。
- 東北横断自動車道釜石秋田線(釜石〜花巻)は平成31年3月に全線開通し、内陸の花巻と三陸沿岸が高速道路でつながった。
- 市の花はハヤチネウスユキソウ、市の木はこぶし。
- 市役所本庁舎は花城町に置かれている。
- 職員採用は、大卒区分のWEB試験、高卒・障がいのある方・技術職・消防職の区分、社会人経験者枠という3つの系統で募集されている。消防職も市の採用試験に含まれている。
- 令和9年度採用の一般事務職(大卒)の採用予定人数は13名程度。
花巻市の基礎データ
面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「花巻市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。
ここでは、人口規模、市域の広さ、周辺自治体との関係など、市政の特徴を説明できる項目を優先的に整理しました。あわせて、比較の物差しとして岩手県全体の数字も並べています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総人口 | 88,618人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在) |
| 総面積 | 908.39km²(岩手県の面積の約6%) |
| 人口密度 | 97.6人/km²(上記の総人口と総面積から算出) |
| 隣接自治体 | 盛岡市、北上市、遠野市、奥州市、宮古市、西和賀町、雫石町、紫波町の8市町 |
| 市役所所在地 | 岩手県花巻市花城町9-30 |
| 市の花・市の木 | ハヤチネウスユキソウ・こぶし |
| (参考)岩手県の総人口 | 1,126,813人(令和7年10月1日現在) |
| (参考)岩手県の面積 | 15,275.04km²(北海道に次ぐ全国2番目の広さ) |
花巻市の人口・面積・隣接自治体は、公表値をもとに整理した値です。市が公表する最新の統計と一致しない場合があるため、受験前には花巻市公式サイトの人口統計もあわせてご確認ください。岩手県の総人口は令和7年10月1日現在の値、県の面積は岩手県「岩手県の面積・気候」による値で、県全体の人口密度はこの2つから算出した参考値です。総人口は総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(令和8年1月1日現在)の数値で、人口密度はこの総人口を総面積で割って算出しました。
数字から考えられる市政課題
花巻市の数字を読むときの入口は、人口と面積の組み合わせです。8万人台の人口が900平方キロメートルを超える市域に暮らしているという姿は、人口密度の高い都市部とはまったく違う行政課題を生みます。
窓口や施設をどこに置くか、道路や公共施設の維持をどの範囲まで行うか、移動手段を持たない市民にどうサービスを届けるか。人が集まって住んでいる都市であれば1か所で足りるサービスも、広い市域では届け方そのものを考えなければならないからです。
もう1つの入口が、岩手県全体との関係です。県の面積15,275.04平方キロメートルは北海道に次ぐ全国2番目の広さで、県はその全域を面で受け持ちます。
これに対して花巻市が向き合うのは、その約6%の市域と、そこに暮らす一人ひとりの生活です。同じ「地域のために働く」でも、扱う単位がまったく違うことは、志望動機を組み立てるうえで押さえておきたい点です。(出典:岩手県の面積・気候)
たとえば面接では、花巻市の現状について説明する際、次のように数字と課題を結び付けられます。
花巻市の経済・産業
岩手県の産業構造から見る花巻
市単独の経済統計を細かく追う必要はありません。面接で経済や産業の話題が出たときに使えるのは、まず岩手県全体の産業の骨格です。
- 岩手県の県内総生産(名目)は4兆8,973億円(令和5年度県民経済計算)。
- 一人当たり県民所得は283万5千円で、全国を100とした場合の水準は80.5(同)。
| 産業区分 | 県内総生産の構成比(令和5年度) | 就業者数の構成比(令和5年度) |
|---|---|---|
| 第1次産業 | 3.0% | 8.8% |
| 第2次産業 | 25.5% | 26.0% |
| 第3次産業 | 70.7% | 65.2% |
この2つの列を見比べると、岩手の経済の性格が浮かび上がります。第1次産業は生産額では3.0%にすぎないのに、就業者では8.8%を占めるという差です。
農林水産業が、生み出す金額の割に多くの人の仕事になっている構造で、裏を返せば一人当たりの稼ぎが伸びにくい分野だともいえます。一人当たり県民所得が全国水準の80.5にとどまる理由の一端も、ここにあります。
花巻市のような内陸の市で産業振興や雇用を語るなら、「働く場を増やす」だけでなく「一人当たりの所得を上げる」という視点まで持っておくと、話に厚みが出ます。(出典:岩手県の人口・経済|令和7年)
内陸と沿岸をつなぐ交通の要
花巻を語るうえで外せないのが道路網です。東北横断自動車道釜石秋田線の釜石から花巻までの区間は平成31年3月に全線開通し、三陸沿岸と内陸が高速道路で直結しました。
同じく復興道路として、三陸沿岸道路(仙台から八戸まで約359キロメートル)が令和3年12月に、宮古盛岡横断道路が令和3年3月に全線開通しています。三陸沿岸道路の開通による所要時間の短縮は約3時間20分にのぼります。
人と物の流れが変わったことは、産業でも防災でも花巻の位置づけを変える出来事でした。面接で「花巻市の強み」を問われたときは、自然や暮らしやすさだけでなく、この到達性の変化まで踏み込めると、答えが花巻でなければ成り立たない内容になります。(出典:岩手県の道路の現況)
観光の伸びをどう地域に引き込むか
令和6年の岩手県全体の観光入込客数は2,644万人回(前年比12.8%増)、観光消費額は1,992億円(同1.6%増)でした。客数は大きく伸びた一方で、消費額の伸びは1.6%にとどまっており、来訪者数の増加がそのまま地域の稼ぎに変わっているわけではない、という読み方ができます。
県内には世界遺産「平泉」の構成資産である中尊寺や毛越寺など、全国から人を呼べる資源があります。花巻はその平泉と県都盛岡の間に位置し、内陸を移動する人の流れの中にあります。
観光を志望分野にするなら、名所を挙げるのではなく、通り過ぎる人にどう滞在してもらい、どう消費につなげるかという課題設定で準備しましょう。(出典:岩手県観光統計概要|令和6年)
花巻市の主な行政課題
ここまでの数字と産業の姿を踏まえると、花巻市が今向き合っている課題が見えてきます。面接で「市の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の4つを押さえておきましょう。
人口減少と、担い手の急激な減少
岩手県の人口は、国立社会保障・人口問題研究所の平成30年推計をもとにした県資料で、2015年から2045年までの30年間で30.9%減少する見込みとされています。全国の16.3%減と比べて倍近い減少幅です。
さらに深刻なのが働き手で、15歳以上65歳未満の人口は同じ30年で43.2%減少すると見込まれています(全国平均は27.7%減)。県人口は令和22年に100万人を下回る見通しで、65歳以上人口も令和7年にピークを迎えて減少に転じるとされています。
| 項目(2015年から2045年) | 岩手県 | 全国 |
|---|---|---|
| 総人口の減少率 | 30.9%減 | 16.3%減 |
| 15歳以上65歳未満人口の減少率 | 43.2%減 | 27.7%減 |
| 県北・沿岸地域の人口減少率 | 平均43.9%減 | (県資料の比較値なし) |
働き手が4割以上減るということは、市役所の仕事の受け手も、地域を支える担い手も減るということです。
医療や介護の人材確保が難しくなる可能性も、県は課題として挙げています。面接で人口減少に触れるときは、減ること自体を嘆く話で終わらせず、少ない人数で同じ暮らしを支えるために市の仕事をどう組み替えるか、というところまで持っていきましょう。(出典:岩手県の人口減少に関する資料|平成30年推計)
広い市域で、暮らしをどう支えるか
908.39平方キロメートルという市域は、盛岡市・北上市・遠野市・奥州市・宮古市・西和賀町・雫石町・紫波町という8つの市町と接しています。これだけ多くの自治体と隣り合うということは、市民の通勤・通学・買い物・通院が日常的に市境をまたいでいるということでもあります。
生活圏が行政区域と一致しない地域では、道路や公共交通、広域での医療体制といった、単独の市だけでは完結しない課題が生まれます。市職員として働くなら、近隣自治体と足並みをそろえる場面が必ず出てくるという前提を持っておきましょう。
災害への備えと、内陸の市が担う役割
岩手県は東日本大震災津波で、死者4,672人・行方不明者1,122人という被害を受けました(平成29年2月28日現在)。家屋の全壊・半壊は26,077棟にのぼります。
県が令和4年9月に公表した地震・津波被害想定調査では、マグニチュード9クラスの地震で県全体の死者は最大約7,100人と想定され、人的被害のほとんどは津波によるものとされています。建物の全壊は最大約35,000棟で、うち津波によるものが約33,000棟です。
ここで内陸に位置する花巻市の役割が見えてきます。復興道路として整備された釜石秋田線・宮古盛岡横断道路・三陸沿岸道路は、沿岸が被災したときに内陸から人と物を送り込む動脈でもあります。
沿岸と高速道路で直結した内陸の市は、被災地への後方支援の拠点になりうるという視点は、防災を志望分野にする受験生にとって強い材料です。自分の住むまちを守る話にとどめず、県全体の中で花巻が果たせる役割まで語れるようにしておきましょう。(出典:岩手県地震・津波被害想定調査(概要版)|令和4年)
所得水準と、若い世代の仕事の選択肢
一人当たり県民所得が全国を100として80.5(令和5年度)という水準は、進学や就職で県外に出た若い世代が戻ってくるかどうかに直結します。地元に仕事があるかどうかだけでなく、その仕事でどれだけ稼げるかが、進路の選択に効いてくるからです。
花巻市のような内陸の市にとって、働く場と賃金の水準は、人口対策そのものだといえます。企業誘致や創業支援、農業の高付加価値化など、自分の関心に近い切り口を1つ決めて調べておくと、志望動機に具体性が生まれます。
花巻市の重点政策|いわて県民計画と市の取組
市町村の施策は、県の計画と切り離しては動きません。岩手県の最上位計画は「いわて県民計画(2019〜2028)」で、令和7年度の県当初予算はその第2期アクションプランのもとに編成されています。
予算総額は7,329億円(前年度比0.1%増)で、うち震災分が299億円、通常分が7,030億円です。編成の考え方は、人口の自然減・社会減対策を主軸に置き、GX(グリーントランスフォーメーション)とDX(デジタルトランスフォーメーション)を両翼、安全・安心な地域づくりを基盤とする、というものです。(出典:令和7年度岩手県当初予算のポイント|令和7年度)
計画を貫く考え方
県の課題認識ではっきりしているのは、人口減少の中身が変わったという点です。平成20年以降、自然増減率と社会増減率が逆転し、自然減のウェイトが高まっています。
つまり、転出を止めるだけでは人口減少が止まらない段階に入ったということです。
そのため県は、仕事の創出による社会減対策と、社会全体で子育てを支える自然減対策を同時に進める構えをとっています。花巻市の受験生としては、この2つの柱を頭に置いたうえで、市の窓口や現場ではそれがどんな事業として現れるのかを想像しておくと、面接での話が地に足のついたものになります。
花巻市の仕事の広がりを採用区分から読む
市が公表している採用区分の構成は、その市がどんな仕事を自前で抱えているかを映します。花巻市は令和9年度採用について、大卒区分のWEB試験、高卒・障がいのある方・技術職・消防職の区分、社会人経験者枠という3つの募集を行っています。
消防職を市の採用試験として一体で募集していることから、市が消防を自前の組織として抱えていることが読み取れます。事務職を志望する場合でも、市役所が防災や消防と地続きの組織であることは意識しておきたいところです。
| 募集の区分(令和9年度採用) | 主な対象 |
|---|---|
| 令和9年度採用(大卒)WEB試験 | 大学卒業程度 |
| 令和9年度採用(高卒、障がいのある方、技術職、消防職) | 高校卒業程度、障がいのある方、技術職、消防職 |
| 令和9年度採用(社会人・経験者枠) | 社会人・経験者 |
市はあわせて、職員採用情報パンフレット「花巻市の職員に聞いてみた」を2022年版から2026年版まで公開しています。実際に働く職員の言葉が載っている資料は、志望動機を自分の言葉にするときにいちばん役に立ちます。(参考:花巻市職員採用情報|令和9年度採用)
POINT|計画や事業名を暗記しなくてよい
名称をすべて覚えることが自治体研究の目的ではありません。関心分野を1〜2つ選び、「①何が課題か → ②市はどんな状態を目指すか → ③今どんな取組があるか → ④市だからこそ担える役割 → ⑤自分の経験・強みをどう生かすか」の順で調べましょう。
悪い例「花巻市の子育て支援に携わりたいです」
改善例「まずは窓口で市民の方と直接やり取りする仕事から覚えていきたいです。その上で、岩手県では働く世代がこれから4割以上減ると聞きましたので、花巻で子育てをしたい人が住み続けられるような支援に、いずれ関わっていきたいと考えています」
あわせて確認したい公式資料
すべてを読む必要はありません。志望動機に関係する資料を選び、重要な部分を自分の言葉で説明できるように準備しておきましょう。
- 花巻市職員採用試験の受験案内(最新年度・自分の受験区分のもの)
- 花巻市職員採用情報パンフレット「花巻市の職員に聞いてみた」(最新版)
- 花巻市公式サイトの人口統計・市の総合計画や個別計画のうち、志望分野に関係するもの
- いわて県民計画(2019〜2028)と、最新年度の岩手県当初予算のポイント
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、花巻市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。花巻市の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
花巻市役所の面接の概要
ここからは、花巻市役所の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。
花巻市役所の面接の流れ
令和9年度採用の一般事務職(大卒)は、3段階の選抜です。注目すべきは第1次試験の位置づけで、第1次試験はSPI3の性格検査と能力検査だけ、続く2段階はどちらも面接という構成になっています。
教養試験・専門試験・論文試験は案内に記載がありません。専門科目の詰め込みで差をつける試験ではなく、人物をどう見せるかで勝負が決まる試験だと考えて準備を組み立てましょう。
| 項目 | 内容(令和9年度採用・一般事務職・大卒) |
|---|---|
| 試験の段階 | 3段階。第1次試験 → 第2次試験 → 第3次試験と、段階ごとに合格者を絞り込みます |
| 第1次試験 | SPI3(総合適性検査)をWEB試験で実施。性格検査30分(性格特徴・職務適性・組織適性に関する検査)と能力検査35分(基礎能力に関する検査) |
| 第2次試験 | WEBにて面接試験 |
| 第3次試験 | 対面にて面接試験 |
| 面接の回数 | 2回(第2次・第3次で各1回) |
| 提出書類 | エントリーシート(My Career Box)を提出してエントリーする方式 |
| 採用予定人数 | 一般事務職(大卒)13名程度 |
| 受験資格(年齢要件) | 平成3年4月2日以降に生まれた方 |
| 配点・合否判定の方法 | 受験案内に記載がないため、最新の受験案内でご確認ください |
面接が2回あるという構成は、それだけで準備の方針を決めます。一般に、1回目で人物の基礎を幅広く確認し、最終面接で志望度と考えの深さを突っ込んで確かめるのが、複数回面接の役割分担です。
花巻市の場合はさらに、第2次がWEB、第3次が対面と場面そのものが変わります。同じ話題を、画面越しと対面という異なる条件で、角度を変えて問われる前提で備えておきましょう。(出典:花巻市職員採用試験の実施案内|令和9年度採用(大卒))
上記の試験構成は、花巻市の令和9年度採用(大卒)の実施案内にもとづく一般事務職のものです。面接が個別形式か集団形式か、集団討論があるかどうかは案内に明記がありません。試験の構成・日程・配点等は、年度や受験区分によって異なる可能性があります。受験の際は、必ずご自身の区分の最新の試験情報をご確認ください。
花巻市役所が求める人物像
花巻市の採用試験案内には、受験者への呼びかけとして「花巻市のために働きたいという熱意のある方、花巻市のまちづくりに自分の能力をぜひ生かしたいという方」という文言が掲げられています。
ただし、これは「求める職員像」として体系的に整理された文書ではなく、あくまで受験の呼びかけの言葉です。定型の人物像が別に公表されている可能性もありますので、上でリンクした実施案内とあわせて、最新の採用情報も確認してください。
この呼びかけを面接対策の言葉に翻訳すると、軸は2つです。1つは「花巻市のために」という対象の限定で、公務員一般でも岩手県庁でもなく花巻市でなければならない理由を持っているかが問われます。
もう1つは「自分の能力を生かしたい」という持ち込むものの明示で、これまでの経験や学びのうち何を市の仕事に差し出せるのかを、具体的に言えるかどうかです。熱意を「気持ちの強さ」ではなく「調べた量と、持ち込める力の具体性」で示すのが、この呼びかけへの答え方になります。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。花巻市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | 緊張していますか? | 場慣れしているかではなく、不意の一言に自然に返せるか。素の表情と受け答えのトーン |
| ② 動機・志望 | なぜ公務員を志望するのですか? | 民間でもできる動機で止まっていないか。職業選択の筋道が自分の経験とつながっているか |
| ③ 自己理解 | あなたの短所(弱み)は何ですか? | 自分を客観視できているか。短所を認めたうえで、その付き合い方まで語れるか |
| ④ 経験・行動 | これまでで最も困難だった経験と、どう乗り越えたかを教えてください | うまく解決できたかどうかより、行き詰まった場面で誰に何を働きかけたかという手の打ち方 |
| ⑤ 学業・経歴 | 卒業論文(研究)のテーマについて、簡単に説明してください | 専門外の相手に伝わる言葉へ翻訳する力。学んだことを仕事へつなげる視点 |
| ⑥ 適性・将来 | 入庁後、どんな仕事に取り組みたいですか? | 市の仕事への理解の解像度。希望どおりの配属でなくても働ける柔軟さ |
| ⑦ 公共性・社会性 | 最近関心を持ったニュースは何ですか? | 社会の動きへのアンテナと、それについて自分の意見を一言で述べられるか |
ただし、この7カテゴリーは花巻市に限らず全国の官公庁でほぼ共通です。受験者全員が対策してくる領域なので、ここでは大きな差がつきにくいのです。
では、どこで差がつくのか。それが次の「花巻市ならではの事情を踏まえた質問」です。
合否を分けるのは「花巻市役所ならでは」の質問
この2問は、市の現状を知らなければその場では答えようがない質問です。逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。
第1部で見た事実のうち、面接で使いやすいものを絞り、答え方とセットで整理しました。
| 質問テーマ | 知っておきたい花巻市の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| なぜ県庁ではなく市役所か | 県は15,275.04km²の全域を面で受け持つのに対し、花巻市が向き合うのは908.39km²の市域と、そこに暮らす88,618人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)の生活 | 制度の説明ではなく、扱う単位の違いで語ります。県庁の仕事を下に見る言い方はせず、「窓口で顔の見える距離の仕事がしたい」という自分の希望として述べるのが安全です |
| 花巻市の魅力 | 東北横断自動車道釜石秋田線(釜石から花巻)が平成31年3月に全線開通し、三陸沿岸と内陸が高速道路で直結した | 自然や暮らしやすさで止めると誰でも言える回答になります。道路がつながって人と物の流れが変わったという「変化」を魅力として語ると、開通の前と後で何が違うのかという話に持ち込めます |
| 花巻市の課題 | 岩手県の15歳以上65歳未満人口は2015年から2045年の30年間で43.2%減少の見込み(全国平均27.7%減) | 担い手が4割以上減る前提で、市の仕事の何を残し何を変えるかまで踏み込みます。志望分野の業務を1つ挙げて具体化すると、思いつきに聞こえません |
| 防災と地域の役割 | 県の地震・津波被害想定(令和4年9月公表)では県全体の死者が最大約7,100人。花巻は復興道路で沿岸と直結する内陸の市 | 自分のまちを守る話に加え、沿岸が被災したときの後方支援という県内での役割まで触れると、視野の広さが示せます |
| 広い市域と暮らし | 市域908.39km²・人口密度97.6人/km²。盛岡市や北上市など8つの市町と境を接する | 市民の生活圏が市境をまたぐことに触れ、近隣自治体と連携する仕事のイメージを持っていると伝えます。移動手段を持たない市民への視点を添えると説得力が増します |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。
想定される評価の観点
面接は、前述の呼びかけ文言に照らして「これまでに実際どう行動してきたか」を確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 花巻市のために働きたいという熱意 | 志望理由の具体度。市の実情をどこまで自分で調べたうえで話しているか | 採用案内が名指しで「熱意」に触れています。気持ちの強さではなく、市域の広さや人口規模といった調べた事実を材料に、どの現場で誰のために働きたいかを一つ決めておきましょう |
| 自分の能力を市政に生かす姿勢 | これまでの学びや経験のうち、何を市の仕事に持ち込むつもりか | 「能力をぜひ生かしたい」という呼びかけに応えるには、自分の得意と業務の接点が要ります。志望分野は1つに絞りつつ、配属がそのとおりにならなくても生かせる強みとして語れるようにしておきましょう |
| 場面が変わっても崩れない一貫性 | WEBと対面の2回の面接で、同じテーマを角度を変えて問われたときの答えのぶれ | 第2次はWEB、第3次は対面と条件が変わります。画面越しでも間が持つ話し方と、対面で重ねて掘られたときの粘りを、別々に練習しておくと安心です |
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。
花巻市は面接が2回ある分、同じ経験を別の面接官から問い直される場面も想定されます。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 最新年度の受験案内を読み、試験の段階と、エントリー時に提出するエントリーシートの記入項目を確認する(面接での発言と食い違わないように)
- 高校・大学生活の経験を棚卸しする。学業・課外活動・アルバイトから、話せる具体例を1つずつ用意する
- 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
- 職員採用情報パンフレット「花巻市の職員に聞いてみた」に目を通し、実際に働く職員がどんな仕事をどんな言葉で語っているかを拾う。そのうえで、この記事の第1部で押さえた市域と県の数字を、その仕事の話に重ねてみる
- 固有質問の対応表から材料を2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 花巻市職員としてやりたいこと」の一続きの話に編む
- 第2次のWEB面接を想定し、画面越しに声に出して練習する。答えるたびに「ここを掘られたら何と返すか」を書き足していく
優先順位に注意
ステップ4〜5の自治体研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、その経験を市の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。
なお、面接対策を独学で、しかも限られた期間で仕上げたい場合には、花巻市役所専用の面接想定問答集を使うという選択肢もあります。
WEB面接と対面面接の二度にわたって問われることを想定し、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答まで解説しているので、画面越しでも対面でも通用する受け答えを具体的にイメージできるようになります。試験本番までの時間が限られている方は、必要に応じてご活用ください。
さいごに
花巻市の一般事務職(大卒)の試験は、第1次がSPI3の性格検査と能力検査だけで、その先の2段階はどちらも面接です。しかも第2次はWEB、第3次は対面と、同じ人物を違う条件で二度見る形になっています。
知識の量ではなく、二度問われても同じことを同じ確かさで話せるかどうかが、この試験で見られていることです。
900平方キロメートルを超える市域に8万人台の人が暮らし、8つの市町と境を接する花巻で、あなたはどの現場に立ちたいのか。採用案内が呼びかける「熱意」を、気持ちの言葉ではなく、調べた事実と自分の経験の組み合わせで示せるところまで、準備を進めていきましょう。