本記事では、弘前市職員採用試験の面接対策で必要な、弘前市の特徴・基礎データ・行政課題・重点政策・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。
弘前市役所の面接試験では、「なぜ弘前市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。
大学卒業程度の試験は、第一次で筆記4科目を課したうえで、第二次に小論文試験と面接試験を並べる構成です。書く場面でも話す場面でも、市の実情を自分の言葉で説明できるかが問われます。
本記事の掲載内容を参考に、自分の強みや関心と弘前市政の接点を考え、面接での回答作りに役立ててください。
第1部|自治体研究編
弘前市の特徴
本格的な面接対策をはじめる前に、まずは弘前市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)
- 青森県西部の津軽地域に位置し、人口157,375人・面積524.20km²を有する市。
- 人口密度は300人/km²。青森県全体の122.8人/km²(2023年)のおよそ2.4倍にあたり、県内では人が集まっている地域のひとつ。
- つがる市・平川市・大鰐町・藤崎町・田舎館村・板柳町・鶴田町・鰺ヶ沢町・西目屋村の9市町村に加え、秋田県大館市とも境を接する県境の市。
- 市の花はさくら、市の木はりんご(ともに2006年11月15日制定)。青森県はりんごの生産量が令和5年で全国第1位の農業県。
- 市役所本庁舎は、弘前市大字上白銀町1-1に置かれている。
- 令和8年度の大学卒業程度の採用予定人数は、行政10人程度と建設系(土木・建築・電気・機械)6人程度のあわせて16人程度。
- 第一次試験は科目ごとに合格基準があり、ひとつでも基準に達しない科目があれば不合格となる。総合得点が高くても不合格になり得る仕組み。
- 第二次試験は「性格検査、小論文試験及び面接試験」。面接の形式(個別か集団か)や回数について、受験案内に記載はない。
弘前市の基礎データ
面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「弘前市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。
ここでは、人口規模、市域の広さ、接している市町村など、弘前市の基礎的なプロフィールを整理しました。市単独の経済統計や年齢別の人口を当研究会では確認できていないため、比較の物差しとして青森県全体の数値をあわせて示します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総人口 | 157,375人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在) |
| 総面積 | 約524.20km²(青森県の総面積9,645km²の約5%) |
| 人口密度 | 300人/km²(上記の総人口と総面積から算出) |
| 市役所所在地 | 弘前市大字上白銀町1-1 |
| 隣接自治体 | つがる市・平川市・大鰐町・藤崎町・田舎館村・板柳町・鶴田町・鰺ヶ沢町・西目屋村と、秋田県大館市の10市町村 |
| 市の花・市の木 | さくら/りんご(ともに2006年11月15日制定) |
| (参考)青森県の総人口 | 1,164,752人(令和6年10月1日現在。前年比19,806人・1.67%の減少) |
| (参考)青森県の人口密度 | 122.8人/km²(2023年・全国第41位) |
| (参考)青森県の年齢3区分別割合 | 年少人口9.9%/生産年齢人口54.2%/老年人口35.9%(令和6年10月1日現在) |
弘前市の面積・所在地・隣接自治体・市の花木は自治体の公表値による数値で、市の公式統計との再照合は行っていません。市の公表値と時点や集計方法が異なる場合がありますので、面接では15万人台という規模感で押さえておけば足ります。青森県の総人口・年齢3区分別割合は「青森県の人口」(令和6年10月1日現在)、面積と人口密度は青森県の統計資料による数値です。弘前市単独の年齢別人口・市内総生産は、当研究会では公式資料で確認できていません。総人口は総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(令和8年1月1日現在)の数値で、人口密度はこの総人口を総面積で割って算出しました。
数字から考えられる市政課題
弘前市の157,375人という人口は、青森県の総人口1,164,752人(令和6年10月1日現在)の約13%にあたります。統計の時点は異なりますが、県民の8人に1人以上が弘前市民という規模感です。
一方で面積524.20km²は県土の約5%にとどまり、人口密度は県平均の2倍を超えます。広い市域の中に、県内では比較的多くの人が住んでいる市だと押さえておきましょう。
県全体に目を移すと、人口は令和6年10月1日現在で1,164,752人、前年から19,806人(1.67%)減っています。その内訳は自然増減が15,405人の減少、社会増減が4,401人の減少です(いずれも令和5年10月1日から令和6年9月30日までの1年間)。
減少幅の8割近くを、出生と死亡の差である自然減が占めている計算になります(出典:青森県の人口|令和6年)。
転入を増やせば解決するという単純な構図ではないことが読み取れます。答えの形に置き換えると、こんな言い方ができます。
弘前市の経済・産業
りんごを軸とする農業の存在感
弘前市単独の市内総生産や事業所統計を、公表資料からは確認できません(当研究会調べ)。ここでは、市が属する青森県全体の産業構造から、地域経済の土台を整理します。
- 青森県のりんご生産量は令和5年で全国第1位。にんにく・ごぼうの生産量も、同じく令和5年で全国第1位。
- 耕地面積は14万7,300ha(令和6年)で全国第4位。内訳は田53%・普通畑24%・樹園地15%・牧草地9%。
- 畜産の産出額は令和5年で1,090億円。豚・鶏卵・ブロイラー・肉用牛・生乳の5品目が、県の農業産出額の上位10品目に入っている。
ここで目を留めたいのは、耕地の15%を樹園地が占めているという点です。田や畑と違い、樹園地は木を育てるところから始まり、一度植えれば何十年も同じ場所で世話が続きます。
りんごを市の木に定めた弘前市にとって、農業は産業であると同時に、まちの風景と暮らしそのものだといえます(出典:青森県の農業|令和5年)。
面接で農業を語るなら、特産品の名前を挙げるだけで終わらせず、その担い手が誰なのかまで視野に入れておきましょう。
製造業の規模と、働く場
令和3年経済センサス活動調査(製造業)によると、青森県の製造品出荷額等は1兆6,765億円(前年比2.9%の減少)、事業所数は1,272事業所、従業者数は55,763人です(令和3年6月1日現在。出荷額は令和2年の実績)(出典:経済センサス活動調査(製造業)|令和3年)。
人口が116万人を超える県で製造業の従業者が5万6千人弱という水準は、工業が雇用の主役になっているとは言いにくい規模です。
青森県の地勢は、中央の奥羽山脈を境に東部と西部に大きく分かれ、弘前市が属する西部の津軽地域には、広大な沖積低地と山地、そして肥沃な津軽平野が広がっています。農地の広がりと産業構造は無関係ではありません。
若い世代が地元で働き続けられる場をどう用意するかという問いは、農業・商業・医療福祉といった既存の産業を強くする話と、新しい仕事を呼び込む話の両方を含んでいます。
観光と、外から地域に関わる人
令和6年の青森県の観光入込客数は、延べ人数32,378千人(対前年比103.8%)、実人数13,863千人(同107.6%)。観光消費額は1,984億7,000万円(同103.9%)で、いずれも前年を上回りました(出典:青森県観光入込客統計|令和6年)。
延べ人数が実人数の2倍を超えているのは、一度訪れた人が県内の複数の場所を回っているためだと考えられます。
市の花にさくらを定めている弘前市にとって、季節ごとの景観は外から人を呼ぶ資源です。ただし観光を面接で語るときは、来訪者の数そのものより、訪れた人のお金と関心が地元の商店や農家にどう回るかに目を向けたほうが、市役所の仕事に近い話になります。人口が減っていく地域にとって、住む人だけでなく関わる人をどう増やすかは、定住の議論と同じ重さを持つテーマです。
弘前市の主な行政課題
ここまでの数字を踏まえると、弘前市が津軽地域の市として向き合っている課題が見えてきます。面接で「市の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。
人口減少と若い世代の県外流出
青森県の人口は、昭和58年10月1日現在の1,529,269人をピークに減少へ転じ、平成12年を除いてそれ以降は減少が続いています。
県基本計画「青森新時代」への架け橋(計画期間2024年度から2028年度)は、人口減少の大きな要因を「若い世代の県外流出とそれに伴う少子化」と捉え、若い世代が『ここで暮らしたい』と思える魅力ある青森県にすることが最も重要だとしています(出典:青森県基本計画「青森新時代」への架け橋|2024〜2028年度)。
市役所の仕事に置き換えれば、進学・就職・結婚・子育てという人生の節目ごとに、このまちで暮らす選択肢を用意できるかという問いになります。志望動機を組み立てるときに、最も接続しやすい論点です。
高齢化の進行と、広い市域での暮らしの支え方
青森県の年齢3区分別割合は、令和6年10月1日現在で年少人口9.9%・生産年齢人口54.2%・老年人口35.9%です。年少人口の割合は大正9年以降で最も低く、老年人口の割合は最も高くなりました。75歳以上は224,032人です。県基本計画は、2040年には県人口が100万人を下回り、老年人口比率が40%を超えると見込んでいます。
弘前市の市域は524.20km²と広く、市街地から離れた地区も抱えています。通院、買い物、各種の手続きといった日常の移動そのものが負担になる住民が増えていくとき、窓口に来られる人だけを前提にした行政サービスでは足りません。来てもらう窓口から、届ける行政へという発想の切り替えは、基礎自治体ならではのテーマです。
農業と観光を支える担い手の確保
県の生産年齢人口の割合は54.2%で、働き手そのものが減っていく局面にあります。県の耕地の15%を占める樹園地は、木を育てて実を収穫するまでに人手と年月がかかる農地です。
担い手が減れば、産出額が落ちるだけでなく、手入れされない園地が景観として残ります。農業の担い手の問題は、産業政策であると同時に、まちの見た目と観光の問題でもあるという捉え方をしておくと、面接で分野をまたいだ話ができます。
災害への備えと、地域に合った想定
令和3年度の青森県地震・津波被害想定調査では、太平洋側海溝型地震(国の日本海溝・千島海溝モデルに基づくマグニチュード9クラス)で県の太平洋沿岸に震度6強が予測され、県全体の死者数は約53,000人、全壊棟数は約111,000棟、避難者数は1日後で最大約31万人(いずれも冬の18時に発生した場合)と想定されています(出典:青森県地震・津波被害想定調査|令和3年度)。
ただし、この調査が見ているのは県の太平洋側であり、日本海側の津軽地域にある弘前市へ同じ数字を持ち込むことはできません。
面接では被害想定の数字を市の想定のように語るのではなく、避難所の運営や高齢の方の安否確認など、どの地域にも共通する備えへ引きつけるほうが安全です。
県境をまたぐ生活圏と、県内の地域差
弘前市が接する10市町村のうち、大館市は秋田県の市です。人の行き来や経済のつながりが県境で止まるわけではなく、通勤・通学から観光まで、生活圏は行政の境界より広く伸びています。
一方で、同じ青森県のなかでも、地域が持っている条件は大きく違います。県が国家プロジェクトとして進めるむつ小川原開発地区は、県の太平洋側に位置する約5,180ヘクタールの大規模利用適地で、原子燃料サイクル関連施設や研究開発拠点が集まっています(参考:むつ小川原開発地区の概要)。
弘前市の強みは、県の大型開発とは別の場所にあるという前提で、市の資源を語れるようにしておきましょう。
弘前市の重点政策|県の基本計画と市の公表資料から読み解く
弘前市の総合計画にあたる計画の名称を、当研究会では公式資料で確認できていません。そこで本記事では、県の最上位計画である青森県基本計画と、市が公表している令和8年度の受験案内という2つの資料から、市政が置かれている条件と、市が必要としている人材を読み解きます。
県の基本計画が示す方向
青森県の最上位計画は青森県基本計画「青森新時代」への架け橋(計画期間2024年度から2028年度)です。計画は人口減少の主因を若い世代の県外流出とそれに伴う少子化と捉え、若い世代が『ここで暮らしたい』と思える県にすることを最重要の課題に据えています。
市の職員として働くことは、この県全体の課題の中で、弘前市という具体的な場所を担当するということです。
窓口や現場での一つひとつの仕事が、この大きな流れの中でどんな意味を持つのか。そこまで言葉にできると、志望動機の説得力が変わります。
財政の姿からみる「優先順位」
令和6年度の青森県一般会計当初予算の規模は7,022億円で、令和5年度当初予算と比べて362億円(4.9%)の減となりました。財政調整用基金の取崩額はゼロを継続しています(出典:青森県一般会計当初予算|令和6年度)。
貯金を取り崩さずに予算を組む一方、規模そのものは前年度から絞られたという姿です。
これは県の数字であって市の数字ではありませんが、県内の自治体が置かれている環境を示すものではあります。人口が減り、予算の規模が広がりにくい局面では、行政の仕事は「新しく何をするか」と同じだけ「何を続け、何を見直すか」の判断を伴います。
やりたい事業を挙げるだけでなく、その優先順位を説明できる職員が求められると考えておきましょう。
採用予定人数から読み取れる市の需要
令和8年度の弘前市職員採用資格試験(大学卒業程度)の採用予定人数は、行政(行政事務の職務)10人程度、建設(土木)2人程度、建設(建築)1人程度、建設(電気)1人程度、建設(機械)2人程度です(出典:弘前市職員採用資格試験受験案内(大学卒業程度)|令和8年度)。合計16人程度のうち6人程度が建設系の技術職で、しかも土木・建築・電気・機械の4分野に分かれています。
この配分は、市が道路や上下水道、公共施設といったインフラを自前で維持し続ける体制を保とうとしていることを示しています。行政職を志望する人にとっても他人事ではありません。
人口が減る中で施設をどう保つかという判断は、最終的には予算と計画をつくる事務の仕事に返ってくるからです。
POINT|計画の名前を覚えることが目的ではない
県の計画名や指標を丸ごと覚えても、面接では使えません。①弘前市で自分が関わりたい分野を一つ決める→②その分野で市民が困っている場面を具体的に思い浮かべる→③県の計画や市の公表資料に、その困りごとに触れた記述があるかを探す、という順に調べると、話が自分の言葉になっていきます。
悪い例「弘前市の農業を盛り上げる仕事がしたいです」
改善例「まずは窓口や事務の仕事を一つずつ覚えて、市民の方の相談にきちんと答えられる職員になりたいです。その上で、青森県はりんごの生産量が全国で一番だと聞きましたので、農家の方が使える制度を、わかりやすい形で届ける仕事にも関わっていきたいと思っています」
あわせて確認したい公式資料
すべてを読む必要はありません。志望動機に関係する資料を選び、重要な部分を自分の言葉で説明できるように準備しておきましょう。
- 弘前市職員採用資格試験の受験案内(最新年度・受験する区分のもの)と、市の職員採用ページ
- 弘前市公式サイトの市政情報・広報紙・予算に関する資料
- 志望する分野に関係する市の個別計画(福祉、都市整備、農林分野など)
- 青森県基本計画「青森新時代」への架け橋(県内の背景を知る参考として)
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、弘前市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。弘前市の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
弘前市役所の面接の概要
ここからは、弘前市役所の採用試験の構成と面接の位置づけ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。
弘前市役所の面接の流れ
令和8年度の大学卒業程度は、第一次試験と第二次試験の二段階です。第一次は適性検査・教養試験・性格検査・専門試験の筆記4科目。
そして第二次試験では、性格検査に加えて小論文試験と面接試験が同じ段階に置かれています。人物を見る場面が、書く形と話す形の両方で用意されているということです。
もうひとつ押さえておきたいのが、第一次の合否の決まり方です。受験案内は「各試験科目にはそれぞれ合格基準があり、ひとつでも基準に達しない場合は、不合格となります」と明記しています。
得意科目で稼いで苦手科目を補うという考え方が通じにくい設計で、総合得点が高くても不合格になり得ると案内自身が述べています。
| 項目 | 内容(令和8年度・大学卒業程度) |
|---|---|
| 試験の名称 | 弘前市職員採用資格試験(大学卒業程度)(市ホームページの見出しは「弘前市職員採用試験について」) |
| 試験の段階 | 第一次試験・第二次試験の二段階 |
| 試験職種・採用予定人員 | 行政10人程度/建設(土木)2人程度/建設(建築)1人程度/建設(電気)1人程度/建設(機械)2人程度 |
| 第一次試験 | 適性検査・教養試験・性格検査・専門試験の4科目(内訳は下表) |
| 第一次の合否判定 | 科目ごとに合格基準があり、ひとつでも基準に達しない場合は不合格 |
| 第二次試験 | 性格検査、小論文試験及び面接試験。面接の形式(個別・集団の別)や回数、小論文の字数・制限時間は受験案内に記載がありません |
| 配点 | 受験案内に配点表や総合得点の算定方法の記載はありません |
| 提出書類 | 面接カード(第一次試験合格者のみ)。第一次試験合格発表後、封筒の表に「職員採用試験資料(大卒程度)」と朱書し、簡易書留による郵送または持参で総務部人事課人事研修係へ提出 |
| 第二次の日程・会場 | 第一次試験合格者に対して直接通知されます |
| 試験結果の開示 | 不合格者本人が口頭で求めれば、第一次・第二次とも順位と得点が提供されます(合格発表の日から1か月間・総務部人事課で本人確認書類を提示) |
| 受験資格 | 平成9年4月2日から平成17年4月1日までに生まれた人/日本国籍を有する人/地方公務員法第16条の欠格条項に該当しない人 |
| 採用・勤務条件 | 採用候補者名簿の有効期間は原則1年。採用は原則令和9年4月1日以降(早ければ令和8年10月1日以降)。初任給237,600円、勤務時間は1日7時間45分・週38時間45分(令和8年4月1日現在) |
第一次試験の4科目は、名前が似ていても中身がまったく違います。とくに適性検査と性格検査は別の科目です。
前者は照合や分類、計算といった作業の正確さと速さを100題10分で測る科目であり、後者は公務員としての職業生活への適応性等を150題20分で見る科目です。混同したまま対策を組むと、片方の準備が丸ごと抜け落ちます。
| 科目 | 出題内容 | 形式・題数・時間 |
|---|---|---|
| 適性検査 | 照合、分類、計算等の正確さ、迅速さ等作業能力 | 五肢択一式・100題・10分 |
| 教養試験 | 時事、社会・人文、自然、文章理解、判断・数的推理、資料解釈 | 大学卒程度の五肢択一式・40題・2時間 |
| 性格検査 | 公務員としての職業生活への適応性等 | 四肢択一式・150題・20分 |
| 専門試験 | 行政は憲法、行政法、民法、経済学、財政学、社会政策、政治学、行政学、国際関係 | 大学卒程度の五肢択一式・一般行政40題/建設各職種30題・2時間 |
上記は弘前市の令和8年度職員採用資格試験受験案内(大学卒業程度)にもとづくものです。試験の構成・日程・配点等は、年度や受験区分によって変わる可能性があります。面接の形式や回数など受験案内に記載のない事項もありますので、受験の際は、必ずご自身の区分の最新の試験情報をご確認ください。
この構成から準備の順番が見えてきます。面接カードを書くのは第一次試験の合格発表の後ですが、そこで初めて自分の経験を整理し始めると、第二次までの時間はほとんど残りません。
しかも同じ段階で小論文も課されます。筆記の勉強と並行して、書く材料を先に用意しておくことが、この試験では実利のある戦略です。
弘前市役所が求める人物像
弘前市の受験案内や職員採用のページに、「求める職員像」にあたるまとまった公表文言を、公表資料からは確認できません(当研究会調べ)。そこで、市が公表している試験の設計そのものから、評価されやすい資質を読み解きます。
手がかりは3つあります。1つ目は、行政職の専門試験が憲法・行政法・民法から財政学・社会政策・国際関係まで9分野に及ぶこと。
2つ目は、第二次で小論文と面接が並んでいること。3つ目は、面接カードを第一次合格後に提出させ、そのうえで面接に臨ませることです。
面接対策の言葉に翻訳すると、「制度を正しく理解して使う力」「考えを文章でも会話でも伝えられる説明力」「書いたことと話すことが食い違わない誠実さ」の3点が評価の軸になると考えられます。自己PRでは「責任感があります」と述べるだけでなく、その力を使って何を行い、周囲や相手がどう変わったのかまで説明しましょう。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。弘前市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | 今日はどのようにして会場まで来ましたか | 緊張しているかどうかではなく、構えていない場面での話し方と表情 |
| ② 動機・志望 | 数ある就職先の中で、なぜ公務員なのですか | 民間企業でも実現できる理由で止まっていないか。選んだ筋道が自分の経験と地続きか |
| ③ 自己理解 | 周囲からはどのような人だと言われますか | 自己認識と他者からの評価のずれを、落ち着いて受け止められているか |
| ④ 経験・行動 | これまでで一番苦労した経験を教えてください | その場面で何を判断し、どこをやり直したのかという行動の中身 |
| ⑤ 学業・経歴 | 専攻や卒業論文の内容を、専門外の人にもわかるように説明してください | 相手に合わせて言葉を選ぶ力と、学びを仕事へつなげる視点 |
| ⑥ 適性・将来 | 採用後は、どの部署でどんな仕事をしたいですか | 市の仕事への理解の細かさ。希望と違う配属になっても働ける柔軟さ |
| ⑦ 公共性・社会性 | 最近気になった出来事を一つ挙げてください | 社会の動きへの関心と、自分の考えを短い言葉で述べられるか |
ただし、この7カテゴリーは弘前市に限らず全国の官公庁でほぼ共通です。受験者全員が対策してくる領域なので、ここでは大きな差がつきにくいのです。
では、どこで差がつくのか。それが次の「弘前市ならでは」の質問です。
合否を分けるのは「弘前市役所ならでは」の質問
どちらも市の現状を知らなければその場では答えようがない質問ですが、逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。
弘前市の場合、同じ第二次試験の中で小論文も課されますから、ここで整理した材料は面接だけの備えでは終わりません。面接で使いやすい事実を、答え方とセットで整理しました。
| 質問テーマ | 知っておきたい弘前市の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| 市のスケール感 | 人口157,375人・面積524.20km²・人口密度300人/km²(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)。県全体の人口密度122.8人/km²(2023年)のおよそ2.4倍 | 「県内では人が集まっている市」という位置づけと、524.20km²という市域の広さを一緒に出すと、中心部だけの話にも周辺部だけの話にも偏りません |
| なぜ県庁ではなく市役所か | 県は基本計画で若い世代の県外流出への対応を掲げる広域の担い手。市は窓口や現場を通じて、暮らしに直接届くサービスを担う | 役割の違いを並べたあと、弘前市の窓口や現場のどの場面に自分が立ちたいのかを一つ挙げると、比較で終わらない答えになります |
| 市の産業と市の木 | 青森県のりんご生産量は令和5年で全国第1位。県の耕地の15%を樹園地が占める。弘前市の市の木はりんご(2006年11月15日制定) | 特産品の名前で止めず、耕地の15%が樹園地という県の姿と、市の木にりんごを掲げていることを重ね、担い手の話まで運びます |
| 人口減少と高齢化 | 令和6年10月1日現在の青森県の総人口は1,164,752人で、1年間に19,806人(1.67%)減った。その内訳は自然減15,405人と社会減4,401人。老年人口の割合は35.9%で、県基本計画は2040年に県人口100万人割れを見込む | ここで挙がるのは県全体の数字ですから、弘前市の数字として話さないよう気をつけてください。そのうえで減少の大半が自然減であることに触れると、移住促進だけでは足りないという認識が伝わります |
| 弘前市の魅力 | 令和6年の青森県観光入込客数は延べ32,378千人(対前年比103.8%)、実人数13,863千人。弘前市の市の花はさくら | 名所の名前を並べるより、市の花にさくらを定めた景観を誰が守っているのかへ話を運ぶと、観光の話が市役所の仕事に接続します |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。
想定される評価の観点
面接は、これまでに実際どう行動してきたかを確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。
ここでは、前項で読み解いた3点を、準備に落とし込める形に整理します。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 制度を正しく理解して使う力 | 決まりや手順の理由まで理解したうえで、人に説明した経験があるか | 弘前市の専門試験は憲法から国際関係まで9分野に及びます。学んだ制度のうち一つを選び、それが市の窓口のどの場面で効いてくるのかを言えるようにしておきましょう |
| 文章でも会話でも伝えられる説明力 | 同じ内容を、相手や場面に応じて長さを変えて伝えられるか | 第二次では小論文と面接が同じ段階にあります。志望動機を600字程度で書いてから、その中身を1分で話す練習をすると、書く力と話す力が同時に鍛えられます |
| 書いたことと話すことが食い違わない誠実さ | 提出した面接カードの記載と、口頭での説明にずれがないか | 弘前市の面接カードは第一次試験の合格発表後に提出します。提出する前に自分で読み返し、深掘りされたときに答えに詰まる表現が残っていないか確かめてから出しましょう |
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。
弘前市は面接の形式を公表していませんが、どの形式であってもこの掘り下げは避けられません。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 最新年度の受験案内を読み、第一次の4科目それぞれに合格基準があること、専門試験の出題分野、面接カードの提出時期と提出方法を確認する
- 高校・大学生活の経験を棚卸しする。学業・課外活動・アルバイトから、話せる具体例を1つずつ用意する
- 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
- 自治体研究のインプットをする。この記事の前半部分を読み返し、志望分野に近い事実を2〜3個、自分の言葉で説明できるようにする
- 固有質問の材料を対応表から集め、「事実 → 自分の問題意識 → やりたいこと」の一続きの話に編む
- 第一次試験の合格発表後に面接カードを書く場面を想定し、下書きを先に作っておく。書いた文章を声に出して説明し直すところまでを、ひとつの練習にする
優先順位に注意
ステップ4〜5の自治体研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間が足りないときは、ステップ2で経験を書き出す作業と、それを弘前市の窓口や現場のどの仕事につなげられるかを考える作業を先にしてください。弘前市では小論文も面接と同じ第二次試験に置かれているため、ここで用意した材料はどちらの場面でも使えます。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。
第二次試験で小論文と面接を同時に控えることになるため、面接の準備だけにまとまった時間を割きにくいという方には、弘前市役所専用の面接想定問答集という選択肢もあります。
弘前市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。
さいごに
弘前市の大学卒業程度の試験は、第一次で4つの筆記科目をひとつも落とさずに通過し、第二次では小論文と面接の両方で人物を見られる構成です。配点は公表されていませんが、書く力と話す力が同じ段階に並べられている以上、どちらか一方だけを仕上げても足りません。
人口は15万7千人あまり(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)、面積は524.20km²。市の木にりんごを掲げ、秋田県大館市とも境を接するこのまちで、自分は誰のどんな暮らしを支えたいのか。
その答えを、面接カードの一枚にも、面接の数分にも同じ言葉で書けるようになったとき、準備は形になっています。