本記事では、石川県警察・警察官採用試験の面接対策で必要な、石川県警察の特徴・基礎データ・県内の治安情勢・重点方針・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。
石川県警察の面接試験では、「なぜ石川県警察を志望したのか」「警察官として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を警察の仕事でどう活かしたいか」といった、組織への理解を前提とする質問が想定されます。石川県の治安の現状と県警察の方針を知っておくことで、抽象的な回答を避け、石川県の実情に即した説明がしやすくなります。
本記事の掲載内容を参考に、自分の強みや関心と石川県警察の仕事の接点を考え、面接での回答作りに役立ててください。
第1部|組織研究編
石川県警察の特徴
本格的な面接対策をはじめる前に、まずは石川県警察という組織の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)
- 石川県全域を管轄し、管轄人口は約110万人。人口規模は全国33位(令和2年国勢調査)で、日本海側に細長く伸びる県をひとつの警察組織で受け持つ。(出典:石川県の推計人口|令和6年10月1日現在)
- 管轄区域は11市8町の計19市町。県庁所在地の金沢市に県警察本部が置かれ、人口が集まる金沢の市街地から、地震と豪雨の被害を受けた能登の町まで、地域によって求められる警察活動の中身が変わる。
- 県土は南北198.4km・海岸線約583.7kmと細長く、能登半島が日本海に突き出た形をしている。現場までの移動距離が長いこと自体が、初動対応やパトロールの前提条件になる。(出典:石川県の概要|石川県公式サイト)
- 県警察本部は警務部・生活安全部・刑事部・交通部・警備部で構成され、これに警察学校と各警察署が置かれる。
- 令和6年元日の能登半島地震と、同じ年の秋に発生した奥能登豪雨で県内は大きな被害を受けた。令和7年度からは県が「復興元年」を掲げており、被災地の治安をどう守るかが、いまの石川県警察の活動の中心にある。(出典:令和7年度当初予算の概要|令和7年度)
- 産業面では機械を中心とした製造業が集積し、製造品出荷額等は約3兆円(令和元年)。輪島塗・九谷焼・加賀友禅といった伝統工芸でも知られる県で、ものづくりと観光の両方が地域経済を支えている。(出典:石川県の現状と課題|成長戦略会議資料)
- 令和6年春には北陸新幹線が金沢から敦賀まで延伸した。県内には小松空港とのと里山空港の2つの空港、金沢港と七尾港があり、人の出入りが増えることは、交通対策や人が集まる場所の安全確保という仕事にそのままつながる。
石川県警察の基礎データ
面接に向けた組織研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「石川県警察の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。
ここでは、管轄人口、県土の広さ、犯罪情勢など、組織の特徴を説明できる項目を優先的に整理しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 管轄人口 | 約110万人(1,098,531人・令和6年10月1日現在/全国33位) |
| 管轄区域 | 石川県全域・19市町(11市8町) |
| 県土面積 | 4,186.20km²(東西100.9km・南北198.4km・海岸線約583.7km) |
| 県警察本部の所在地 | 金沢市鞍月一丁目 |
| 本部の部 | 警務部・生活安全部・刑事部・交通部・警備部 |
| 刑法犯認知件数 | 5,376件(令和7年・前年比0.1%減) |
| 刑法犯検挙率 | 48.3%(令和7年) |
| 詐欺の被害額 | 約31億4千万円(令和7年中・特殊詐欺とSNS型投資・ロマンス詐欺の合計) |
管轄人口は石川県の推計人口(令和6年10月1日現在)、全国順位は令和2年国勢調査、県土面積・地勢は石川県公式の県勢概要、刑法犯認知件数(警察が発生を把握した犯罪の件数)・検挙率は県警察が公表する犯罪統計(令和7年確定値)、詐欺の被害額は令和7年中の県警察のまとめにもとづく数値です。警察署や交番の数などは公表値が年ごとに更新されるため、最新の県警察の組織案内でご確認ください。
数字から考えられる治安課題
上の表でまず確かめてほしいのは、件数と被害額が反対の動きをしているという点です。警察が把握した刑法犯の件数は令和7年もほぼ前年並みでしたが、同じ年の特殊詐欺とSNS型投資・ロマンス詐欺の被害額は合わせて約31億4千万円となり、過去最悪を記録しています。
件数の推移だけを見て「石川は落ち着いている」と話してしまうと、現状認識の甘さとして受け取られかねません。
たとえば面接では、石川県の治安の現状について説明する際、次のように数字と課題を結び付けられます。
石川県の治安情勢
刑法犯認知件数の動向
石川県内で警察が把握した刑法犯認知件数は、令和7年に5,376件で、前年からほぼ横ばい(0.1%減)でした。県警察の資料によれば、県内の刑法犯認知件数は平成15年のピーク時と比べて3分の1程度まで減っており、長い目で見れば大きく改善してきた県だといえます。(出典:運営の指針・重点目標の策定趣旨|令和8年)
あわせて押さえたいのが検挙の状況です。刑法犯全体の検挙率は48.3%(令和7年)で、警察が把握した事件のおよそ半数が検挙に結びついている計算になります。
面接では、検挙(起きた犯罪への対応)と抑止(犯罪を起こさせない取組)の両輪で治安を語れると、仕事理解の深さが伝わります。
罪種から見た特徴
罪種別に見ると、石川県で目立つのは住宅や店舗に入り込んで金品を狙う侵入盗です。令和7年の認知件数は610件で、刑法犯全体のおよそ1割を占めています。
一方でひったくりは0件、強盗6件、殺人3件と、県民に強い不安を与える街頭の犯罪や凶悪事件は、件数自体が限られています。街頭の安全が比較的保たれている県で、生活の場に入り込む財産犯をどう減らすかという構図になります。
| 主な罪種 | 認知件数(令和7年) |
|---|---|
| 侵入盗 | 610件 |
| 自動車盗 | 30件 |
| 強盗 | 6件 |
| 殺人 | 3件 |
| ひったくり | 0件 |
認知件数は県警察が公表する犯罪統計(令和7年確定値)にもとづく主な罪種の数値です。
過去最悪となった詐欺の被害
いまの石川県の治安を語るうえで外せないのが、詐欺被害の急増です。令和7年中の県内の被害は、特殊詐欺が242件・約13億3千万円、SNS型投資・ロマンス詐欺が178件・約18億1千万円。
合わせて420件・約31億4千万円と過去最悪になりました。県警察も令和8年の重点目標の策定趣旨のなかで、被害額が過去最悪となり幅広い年齢層に被害が拡大していると述べています。
志望動機で詐欺対策に触れるなら、ここが出発点になります。
特殊詐欺・SNS型投資・ロマンス詐欺の被害件数と被害額は、令和7年中の県警察のまとめ(令和8年2月時点の公表)にもとづく数値です。
交通情勢の変化
交通面では、県内の交通事故の発生件数・死者数・負傷者数はいずれも長期的には減少傾向にあるものの、近年はその減少が鈍り、下げ止まりの傾向を示しています。死者に占める高齢者の割合が高いことも県警察が課題として挙げている点で、高齢化率が30.9%(令和6年10月1日現在)の石川県では、歩行者としての高齢者をどう守るかが継続的なテーマになります。(参考:石川県の推計人口|令和6年10月1日現在)
加えて、道路の使われ方そのものが変わりつつあります。令和8年4月1日からは自転車などの一定の交通違反に交通反則通告制度が始まり、ペダル付き電動バイクのような新しい乗りものも広がっています。
県内では自動運転バスの実用化に向けた公道での実証実験も行われており、ルールと現場の両方が動いている分野だといえます。
石川県の主な治安課題
ここまでの数字を踏まえると、石川県警察が今向き合っている課題が見えてきます。面接で「石川県の治安上の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。
被災地の復旧・復興を支える治安の確保
石川県の警察活動を他県と分けている最大の要素が、被災地対応です。令和6年能登半島地震と令和6年奥能登豪雨のあと、能登地方では復旧・復興が進む一方で、被災地での犯罪や、道路環境の変化に伴う交通事故が起きています。
県警察は、地域に密着したパトロールと広報による犯罪抑止、発生状況の分析にもとづく早期検挙に加えて、復興事業に暴力団などを介入させない取組や、復旧の進み具合に合わせた交通安全施設の整備を進めるとしています。被災地の治安確保は、いま石川県で警察官になるという選択の意味に直結するテーマです。
過去最悪の詐欺被害と匿名・流動型犯罪グループ
令和7年中に420件・約31億4千万円という過去最悪の被害を生んだ詐欺の背後には、SNSなどで実行役を集めて犯行を繰り返す匿名・流動型犯罪グループの存在があります。指示役は匿名の陰に隠れ、末端の実行役だけが入れ替わっていくため、実行役を捕まえるだけでは被害が止まりません。
県警察はこうしたグループへの戦略的な取締りと実態解明を進めるとともに、外国人犯罪グループによる組織的な侵入窃盗や金属窃盗にも対応しています。被害に遭わせないことと、犯行に加担させないこと。
この二つを同時に進める必要がある点が、この課題の難しさです。
サイバー空間の脅威と専門人材の確保
SNS型投資・ロマンス詐欺がそうであるように、いまの犯罪の多くはインターネットを入口にしています。相手の顔が見えないサイバー空間では、被害に気づいたときには相手をたどる手がかりが乏しいことも珍しくありません。
県警察は、警察職員全体の対処能力を底上げすることと、高度な知識や技術を持つ人材を確保・育成することの両方を課題に挙げ、大学や民間企業と連携した広報啓発にも取り組むとしています。石川県警察の警察官A試験にはサイバー・デジタルの採用区分も設けられており、情報系の知識がある人にとっては志望動機と接続しやすい分野です。
高齢化と新しい乗りものが変える交通環境
県内の交通事故は減少が鈍化し、死者に占める高齢者の割合が高い状態が続いています。加えて、自転車への交通反則通告制度の開始や新しいモビリティの登場、自動運転バスの実証実験など、道路を取り巻く環境が短期間で変わりつつあります。
取締りだけで対応できる段階ではなく、歩行者や自転車利用者への交通安全教育、事故が多い地点での集中的な警戒、生活道路や通学路の安全確保といった地道な取組を積み重ねる分野です。高齢化率30.9%という県の姿を踏まえて語れると、話に具体性が出ます。
次の大規模災害への備え
石川県は、起きた災害への対応と、これから起きる災害への備えを同時に抱えている県です。県が令和7年5月に公表した地震被害想定では、県内・隣県の9つの断層帯が対象とされ、最大の被害となる森本・富樫断層帯の地震(金沢市で最大震度7)では、死者は最大2,212人、建物の全壊・全焼は最大46,947棟、1週間後の避難者は最大191,898人と想定されています。
県警察は、これまでの災害対応の経験を踏まえて危機管理体制を点検し、対処能力を高めていくとしています。警備部門を志望する人に限らず、すべての受験者が前提として押さえておきたい数字です。(出典:石川県地震被害想定調査(概要)|令和7年5月公表)
重点方針|令和8年石川県警察運営の指針及び重点目標
石川県警察は、毎年の警察活動の方向づけとして「石川県警察運営の指針及び重点目標」を定めています。令和8年の運営の指針は「県民の期待と信頼に応える力強い警察」で、副題には「安全で安心して暮らせる石川の実現」が掲げられました。
石川県公安委員会と県警察の連名で示されているものです。(出典:令和8年石川県警察運営の指針及び重点目標)
指針を貫く考え方
県警察は策定趣旨のなかで、サイバー空間が社会経済活動の場へ変わったこと、技術革新や少子高齢化が社会を変えつつあること、そして令和6年の地震と豪雨で甚大な被害が出たことを挙げ、治安情勢は予断を許さないと整理しています。そのうえで、組織運営を最適化しながら被災地の復旧・復興を支える治安対策を進めることを、指針の柱に据えました。
「力強い警察」という言葉は、勇ましさの表明ではなく、変化する情勢に組織として応え続けるという意思表示だと読むのが自然です。面接で「どんな警察官になりたいか」を考えるときも、この方向性は軸になります。
8つの重点目標
令和8年の重点目標は次の8項目です。あわせて、それぞれが指す内容を受験生向けに当研究会の言葉でかみ砕きました。
| 重点目標(公式の項目名) | 受験生向けの解説 |
|---|---|
| ① 被災地における復旧・復興を支えるための治安対策の推進 | 被災地でのパトロールや広報による犯罪抑止、復旧工事で変わる道路環境に合わせた交通安全対策、復興事業への暴力団などの介入阻止 |
| ② 犯罪の起きにくい社会づくりの推進 | 自治体や防犯ボランティアと連携した街頭活動、こども・女性・高齢者の安全確保、少年の非行防止と保護 |
| ③ サイバー空間の脅威に対する総合対策の推進 | 職員全体の対処能力の底上げと専門人材の確保・育成、大学や民間企業と連携した被害防止の広報啓発 |
| ④ 県民の生活の安全を脅かす犯罪の徹底検挙 | 詐欺や組織的な窃盗、暴力団や匿名・流動型犯罪グループの取締りと実態解明。初動捜査と客観証拠の収集の徹底 |
| ⑤ 交通死亡事故等の抑止と実態に即した交通環境の整備 | 事故分析にもとづく警戒と取締り、自転車や新しいモビリティへの対応、信号機などの交通安全施設の整備 |
| ⑥ 大規模災害への的確な対処と情勢に即した警備諸対策の推進 | 地震や豪雨の経験を踏まえた危機管理体制の点検、テロの未然防止や要人警護などの警備対策 |
| ⑦ 犯罪被害者等支援の充実 | 県警察の犯罪被害者支援基本計画にもとづく支援。令和7年9月からは関係機関が連携する多機関ワンストップサービスも始まった |
| ⑧ 警察力の充実強化と県民の立場に立った警察活動の推進 | 人材の確保と育成、働きやすい職場づくり、先端技術の導入、警察安全相談や苦情への真摯な対応 |
面接では、自分の取り組みたい仕事がこの8つのどれに位置づくのかを一言添えられるだけで、組織の方向性を踏まえた志望だと伝わります。とくに注目したいのは、8項目の並びが被災地の治安対策から始まっていることです。
全国共通の課題から書き起こす県が多いなかで、石川県警察は自県で起きた災害から書き始めています。この並び順は、他県警察の志望理由をそのまま持ち込めない理由でもあります。
POINT|重点目標は絞って深く調べる
8項目を残らず言えるようにすることが組織研究の目的ではありません。関心のある分野を一つか二つに絞り、石川県ではいまどんな数字が動いているのか、県警察はどの重点目標で対処しようとしているのか、そのうえで自分はどの現場で何をしたいのか、という順で掘り下げていきましょう。
悪い例「県民の役に立てる警察官になりたいです」
改善例「まずは交番の勤務で、地域の方に顔を覚えてもらえる警察官になりたいです。その上で、石川県は去年の詐欺の被害額がこれまでで一番大きくなったと聞きましたので、お年寄りのお宅を回るときの声かけや、若い人がうまい話に乗せられて手伝ってしまわないための呼びかけに、力を入れていきたいと考えています」
あわせて確認したい公式資料
すべてを読む必要はありません。志望動機に関係する資料を選び、重要な部分を自分の口で語れる状態に仕上げておきましょう。
- 警察官採用候補者試験の受験案内(試験種目・配点・受験資格・申込方法)
- 石川県警察の採用サイトと採用案内ブローシャー(仕事内容と職員の声)
- 令和8年石川県警察運営の指針及び重点目標と、その策定趣旨
- 犯罪統計・交通事故統計のページ(数字は毎年更新されるため最新値を確認)
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、石川県警察専用の面接想定問答集をご用意しています。石川県警察の採用面接で問われる可能性がある質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
石川県警察の面接の概要
ここからは、石川県警察の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。
石川県警察の面接の流れ
石川県の警察官A(大学卒)採用候補者試験は、第1次試験と第2次試験の2段階で行われます。面接にあたる口述試験は第2次試験の種目で、受験案内には「主として人物について、個別面接により試験を行う」と示されています。
種目と配点の全体像は、次の表のとおりです。
| 項目 | 内容(令和6年度・警察官A) |
|---|---|
| 試験の段階 | 第1次試験 → 第2次試験の2段階 |
| 第1次試験 | 教養試験(150分・50題・100点)、論文試験(70分・800字程度・100点)、適性検査Ⅰ・Ⅱ(配点なし)、資格等加点(上限20点) |
| 第2次試験 | 体力試験(80点)、口述試験(1,200点)、身体検査、受験資格等の調査 |
| 面接の種類 | 個別面接。「主として人物について」行う口述試験として実施 |
| 口述試験の配点 | 1,200点(武道指導Aは800点、サイバー・デジタルAは900点) |
| 体力試験 | 腕立て伏せ・上体起こし・反復横とび・20mシャトルランの4種目。合計40点未満は他の成績にかかわらず不合格 |
| 身体検査 | 視力は両眼とも裸眼0.6以上または矯正1.0以上ほか。身長・体重・胸囲の基準は平成29年に撤廃 |
| 受験資格(年齢) | 令和7年度試験から上限年齢を35歳に引き上げ(従来は33歳) |
注目してほしい点が2つあります。1つ目は配点です。
配点が公表されている種目を合計すると1,480点になりますが、そのうち1,200点が口述試験、つまり個別面接に置かれています。教養試験と論文試験を足しても200点ですから、筆記の得点差は面接で十分に覆る構造です。
2つ目は適性検査の扱いです。第1次試験で行う適性検査Ⅰ・Ⅱには配点がありませんが、その結果は第2次試験の面接の参考資料として使われます。
作り込んだ人物像を演じるのではなく、一貫した自分で臨むほうが確実だといえます。
倍率の感覚もつかんでおきましょう。令和5年度の実施状況では、警察官Aが受験者134人・最終合格者40人で3.4倍、女性警察官Aが受験者37人・合格者6人で6.2倍、A区分の合計では受験者176人・合格者47人の3.7倍でした。
募集人数が多い試験ではないため、一人ひとりの面接での印象が結果を大きく左右します。
なお、論文試験は70分・800字程度で、令和7年度は「SNS等を通じた犯罪と対策」、令和6年度は「大規模災害発生時の警察の役割と心構え」が出題されています。警察官B(高校卒)は作文60分・600字程度です。
論文で問われるテーマと面接で問われる県内の治安課題は重なるため、論作文の準備がそのまま面接の材料になります。
上記の試験構成は、石川県人事委員会が公表する令和6年度の警察官A採用候補者試験の受験案内にもとづく数値です。試験の構成・配点・受験資格等は、年度や受験区分によって異なる可能性があります。受験の際は、必ずご自身の区分の最新の試験情報をご確認ください。(出典:警察官A採用候補者試験受験案内|令和6年度)
石川県警察が求める人材
石川県警察は、「求める警察官像」といった定式化した人物像を公表していません。手がかりになるのは、運営の指針とその策定趣旨です。
策定趣旨の最後の項目では、警察組織の基盤は人であるとしたうえで、時代や情勢の変化に柔軟に対応できる幅広い知識と技能を持ち、警察職員としての適性と意欲があり、職務を通じて成長できる人材を確保する必要があると述べられています。
ここから読み取れるのは、完成された人材が求められているわけではないということです。自己PRでは、特別な経歴や派手な実績よりも、状況の変化に合わせてやり方を変えた経験や、指摘を受けて自分の行動を改めた経験のほうが、この方針には響きます。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。石川県警察の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | 試験会場までは、どうやって来ましたか? | 緊張をほぐす何気ない雑談に、素の受け答えと会話の自然さが表れます |
| ② 動機・志望 | 民間企業ではなく、なぜ警察官なのですか? | 他の進路と比べたうえでの職業理解の深さと、選択の理由の一貫性 |
| ③ 自己理解 | あなたの強み(自己PR)を教えてください | 自分の強みを、警察の仕事の場面と結びつけて説明できているか |
| ④ 経験・行動 | 学生時代に最も力を入れたことは何ですか? | 実績の大きさではなく、実際にとった行動の事実と、そこから学ぶ姿勢 |
| ⑤ 学業・経歴 | 専攻分野(学科・コース)を選んだ理由を教えてください | 自分の選択の背景を順を追って話せるか。意思決定の一貫性 |
| ⑥ 適性・将来 | 体力に自信はありますか? | 交替制勤務や訓練に耐える体力の裏づけと、日頃の健康管理の習慣 |
| ⑦ 公共性・社会性 | 警察官に最も必要な資質は何だと思いますか? | 職業観の成熟度と、県民を守る仕事への当事者意識 |
ただし、この7カテゴリーは石川県警察に限らず全国の官公庁でほぼ共通です。受験者全員が対策してくる領域なので、ここでは大きな差がつきにくいのです。
なお、警察官の採用面接では、規律ある集団生活への適応や、危険を伴う職務への覚悟を確かめる質問がされることがあります。そうした質問が存在することをあらかじめ知っておくだけでも、当日の落ち着きが変わります。
合否を分けるのは石川県固有の事情を問う質問
どちらも、石川県の現状と県警察の方針を知らなければ、その場では答えようがない質問です。逆に言えば、手元に事実さえあれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。
こうした質問に答えるための「石川県警察の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。
| 質問テーマ | 知っておきたい石川県警察の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| 治安の現状 | 刑法犯認知件数は令和7年に5,376件(前年比0.1%減)で検挙率は48.3%。平成15年のピークからは3分の1程度に減った一方、詐欺の被害額は過去最悪 | 件数の落ち着きと詐欺被害の悪化を同じ年の出来事として並べて話すと、石川の治安を一面だけで見ていないことが伝わる |
| 志望動機・やりたい仕事 | 令和8年の運営の指針は「県民の期待と信頼に応える力強い警察」。重点目標8項目のうち、第1項目が被災地の復旧・復興を支える治安対策 | 8項目の並び順まで踏まえて志望分野を語ると、他県警察にもそのまま通じる志望理由ではないと示せる |
| 石川で働く規模感 | 管轄人口は約110万人で19市町。県土は南北198.4km・海岸線約583.7kmと細長く、金沢の市街地から能登の集落までが管轄区域に入る | 繁華街のある金沢と、人口の少ない能登では、警察官に求められる動き方が違う。どちらの現場も想定して志望していると話せると、憧れで終わらない |
| 詐欺被害への対策 | 令和7年中の被害は特殊詐欺242件・約13億3千万円、SNS型投資・ロマンス詐欺178件・約18億1千万円の合計420件・約31億4千万円 | 被害額を挙げて終わらせず、高齢者への声かけや、実行役の募集に応じさせない働きかけまで踏み込んで話せるようにしておく |
| 災害と復興 | 令和6年能登半島地震と奥能登豪雨からの復興が続き、令和7年度は県が「復興元年」と名づけた年。森本・富樫断層帯の地震では死者最大2,212人が想定されている | 起きた災害への対応と、これから備える災害という二つの軸で整理すると、石川で警察官になる意味を自分の言葉で説明しやすい |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、その事実をどう受け止めたか、そこから警察官として何をしたいかまで、ひと続きの話としてまとめておくことです。
想定される評価の観点
面接は、組織が求める人材像に照らして「これまでに実際どう行動してきたか」を確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 情勢の変化に対応する柔軟さ | 前提が変わったときに、やり方を組み替えて対応できたか | 令和8年の重点目標は被災地対策から自転車の反則通告制度まで幅がある。石川県警察の仕事の振れ幅に耐えられる人だと示せる出来事を一つ選んでおく |
| 警察官としての適性と意欲 | 職務の実態を踏まえたうえで志望しているか | 令和7年に詐欺の被害額が過去最悪の約31億4千万円に達し、能登の復興も途上にある。この状況で志願する意味を、自分の経験に引き寄せて説明できるようにする |
| 職務を通じて成長する姿勢 | 指摘や失敗を受け止めて、次の行動をどう変えたか | 策定趣旨が挙げるのは、職務を通じて成長できる人材である。1,200点の口述試験は、いまの完成度だけでなく伸びしろも見られる場だと考え、指摘を受けて行動を変えた場面を用意する |
評価の観点の3項目は、令和8年石川県警察運営の指針の策定趣旨で述べられている人材像をもとに、当研究会が面接対策用に翻訳したものです。
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 最新の受験案内を読み、試験の種目・配点と申込方法を確認する。石川県警察は資格等加点(上限20点)があるため、手持ちの資格が対象になるかもあわせて調べておく
- 高校・大学生活の経験を棚卸しする。部活動・アルバイト・学校行事から、行動の事実を話せる出来事を1つずつ用意する
- 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る。石川県警察の人物試験は個別面接なので、同じ話題を2回3回と掘り下げられても崩れないかを基準に見直す
- 組織研究のインプットをする。この記事の前半部分を読み返し、志望分野に近い事実を2〜3個、自分で説明できる形にしておく
- 対応表から自分の志望分野に近いテーマを選び、その事実の受け止めから、警察官としてやりたいことまでを一続きの話にまとめる
- 実際に口に出してリハーサルし、答えるたびに「ここを掘られたら何と返すか」を書き足していく。あわせて、体力試験の4種目(腕立て伏せ・上体起こし・反復横とび・20mシャトルラン)を日々のトレーニングに組み込み、体づくりと生活リズムづくりを並行して進める
優先順位に注意
ステップ4〜5の組織研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、その経験を警察の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください。自分のことを語れない状態で組織の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、石川県警察専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
石川県警察の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。本番までの残り日数が少ない場合は、こうした教材で仕上げを前倒しするのも一つの方法です。
さいごに
石川県警察の警察官A採用試験は、口述試験の1,200点が、配点が公表されている種目の合計の8割を占める試験です。筆記でどれだけ稼いでも、人物をどう見てもらえるかで結果は動きます。
準備の重心をどこに置くべきかは、その一点だけでもはっきりしています。
そして石川県は、令和6年の地震と豪雨からの復旧・復興が続くなかで、詐欺の被害額が過去最悪を記録した県でもあります。被災地の治安対策を活動の最優先に据える県で警察官として働くことの意味を、自分の経験に引き寄せて言葉にできれば、志望の理由は誰かの受け売りではなくなります。
部活動でも、アルバイトでも、家族のなかで担ってきた役割でも構いません。あなたが実際にやってきたことを、落ち着いて話せる形に整えて当日を迎えましょう。