本記事では、熊本県警察・警察官採用試験の面接対策で必要な、熊本県警察の特徴・基礎データ・県内の治安情勢・重点方針・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。
熊本県警察の面接試験では、「なぜ熊本県警察を志望したのか」「警察官として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を警察の仕事でどう活かしたいか」といった、組織への理解を前提とする質問が想定されます。熊本県の治安の現状と県警察の方針を知っておくことで、抽象的な回答を避け、熊本県警察ならではの事情を踏まえた説得力のある説明がしやすくなります。
本記事の掲載内容を参考に、自分の強みや関心と熊本県警察の仕事の接点を考え、面接での回答作りに役立ててください。
第1部|組織研究編
熊本県警察の特徴
本格的な面接対策をはじめる前に、まずは熊本県警察という組織の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)
- 熊本県全域を管轄し、管轄人口は約168万人。令和7年国勢調査の速報値では県の総人口は1,678,090人で、令和2年から60,211人(3.46%)減りました。(出典:令和7年国勢調査(速報値)|令和7年)
- 管轄面積は7,409.19平方キロメートル(令和7年1月1日時点)。県庁所在地である熊本市の市街地から、人口の少ない町村部までを、ひとつの警察組織で受け持ちます。(出典:全国都道府県市区町村別面積調|令和7年)
- 県警本部は熊本市中央区水前寺に置かれ、内部部局は警務部・生活安全部・刑事部・交通部・警備部の5部で構成されています。
- 令和7年の刑法犯認知件数は7,529件で前年比12%増、検挙率は48.7%。直近は件数が増える側に振れています。
- 平成28年(2016年)の熊本地震と令和2年(2020年)7月豪雨という二つの激甚な災害を、この10年ほどの間に経験した県であり、災害対処は組織の運営重点にも明確に位置づけられています。
- 半導体受託製造の世界最大手TSMCの日本初の工場であるJASMが令和6年2月に開所し、第2工場の建設も発表されました。県内の企業立地件数は令和5年度に3年連続で過去最多を更新しています。(出典:くまもと新時代共創基本方針及び総合戦略|令和6年度)
- 令和6年の延べ入込客数は約4,829万人。外国人の延べ宿泊者数は約147万人で、前年から47.1%増えました。人が集まる場所の安全確保と、言葉の通じにくい相手への対応が、現場で求められる場面も増えています。(出典:熊本県観光統計表|令和6年)
熊本県警察の基礎データ
面接に向けた組織研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「熊本県警察の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。
ここでは、管轄する県土と人口、本部の組織、犯罪情勢など、組織の置かれた環境を説明できる項目を優先的に整理しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 管轄区域 | 熊本県全域 |
| 管轄人口 | 約168万人(令和7年国勢調査の速報値で1,678,090人) |
| 管轄面積 | 7,409.19平方キロメートル(令和7年1月1日時点) |
| 県警本部の所在地 | 熊本市中央区水前寺6丁目18-1 |
| 本部の組織 | 警務部・生活安全部・刑事部・交通部・警備部の5部 |
| 刑法犯認知件数 | 7,529件(令和7年・前年比12%増) |
| 刑法犯検挙率 | 48.7%(令和7年) |
| 主な罪種の認知件数 | 窃盗犯4,693件(刑法犯の62.3%)、うち自転車盗1,776件・万引き1,075件・空き巣87件・自動車盗18件。ほかに詐欺717件・強盗10件・ひったくり5件・殺人3件(令和7年) |
管轄人口は令和7年国勢調査の速報値(令和7年10月1日現在)、面積は国土地理院の面積調(令和7年1月1日時点)、刑法犯認知件数(警察が発生を把握した犯罪の件数)・検挙率・罪種別の件数は熊本県警察が公表する令和7年中の犯罪情勢(確定値)にもとづく数値です。警察署・交番・駐在所の設置数や職員定数はこの記事では扱っていないため、必要な方は熊本県警察の公表資料をご確認ください。(出典:熊本県内の犯罪情勢(令和7年12月末現在・確定値)|熊本県警察)
数字から考えられる治安課題
熊本県警察の数字を読むときは、二つの線を重ねてみてください。一つは人口の線、もう一つは犯罪の線です。
県の人口は令和7年国勢調査の速報値で1,678,090人となり、5年間で6万人余りが減りました。一方、令和7年の刑法犯認知件数は7,529件と前年から12%増えています。
住む人が減り続けているのに、犯罪の件数は増える側に振れたという組み合わせが、いまの熊本県警察が立っている場所です。
もう一つ添えておきたいのが検挙率48.7%(令和7年)という数字です。
事件が増えれば、捜査に回さなければならない人手もそれだけ増えます。
数字を単体で覚えるのではなく、犯罪を起こさせない取組と、起きた事件を解決する取組の双方に負荷がかかっている状態として捉えておくと、面接での説明が一段深くなります。
たとえば面接で県内の治安について聞かれたときは、次のように人口と件数をつないで説明できます。
熊本県の治安情勢
刑法犯認知件数の動き
令和7年の熊本県内の刑法犯認知件数は7,529件で、前年から12%の増加となりました。
全国的に見れば件数の水準は多いほうではありませんが、「治安は年々よくなっている」という前提で話を始めると、いまの熊本県の実態からずれてしまいます。
面接で治安を語るときは、水準ではなく直近の向きから話を起こすのが安全です。
検挙の状況
令和7年の刑法犯検挙率は48.7%でした。
認知した事件のおよそ半数が検挙されている一方で、残る半数は解決に至っていないことになります。
認知件数が増える局面では、一件あたりに割ける手も時間も細くなりますから、検挙を追い付かせること自体が課題になります。面接では、起きた事件への対応(検挙)と、そもそも起こさせない取組(抑止)の両輪で治安を語れると、仕事理解の深さが伝わります。
罪種の内訳が示すもの
令和7年の内訳を見ると、殺人3件・強盗10件・ひったくり5件と、凶悪な事件の絶対数は限られています。これに対し窃盗犯は4,693件で、刑法犯全体の62.3%を占めました。
中身は自転車盗1,776件、万引き1,075件、空き巣87件、自動車盗18件という並びです。
県民が実際に遭遇する確率が高いのはこうした身近な窃盗であり、鍵かけの呼びかけや街頭での活動といった、地味に見える取組が効いてくる領域だということです。
あわせて、詐欺が717件と前年から44.6%増えている点も押さえておきましょう。志望動機で「県民の身近な安全」に触れるなら、この内訳が具体的な足場になります。
県民の体感治安
熊本県警察は、県民を対象とした体感治安のアンケート調査を行っています。
令和7年度の調査では、犯罪にあうかもしれないと不安になる場所として繁華街が1位、インターネット空間が2位(37.9%)という結果が出ました。
調査は隔年で実施されており、順位や割合は年によって動きます。面接で体感治安に触れる場合は、断定的に「1位は◯◯です」と言い切るより、最新の調査を確認したうえで傾向として語るほうが確実です。(出典:体感治安に関するアンケート調査|令和7年度)
ここで注目したいのは、街頭とインターネットという性質のまったく違う二つの空間が、県民の不安の上位に並んでいる点です。制服で街頭に立つ仕事と、画面の向こう側を追う仕事の両方が求められている、と読み替えることができます。
熊本県の主な治安課題
ここまでの数字を踏まえると、熊本県警察が今向き合っている課題が見えてきます。面接で「熊本県の治安上の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。
人口が減る県での犯罪増加
令和7年の刑法犯が7,529件と前年から12%増えたことは、統計上の変化にとどまりません。
地域で見守る側の住民が減っていくなかで件数が増えれば、県民が受け取る不安は数字の伸び以上に大きくなります。
増えた分をどう抑えるかと同時に、減っていく地域の目をどう補うかという問いが、同時に立っているわけです。
加えて、県内のすべての地域が同じ方向に動いているわけではありません。
JASMの開所と第2工場の建設に伴い、菊陽町周辺のように人と車と物の流れが太くなっている地域があります。
県全体では人口が減っているのに、局所的には人の流れが増えていくという二方向の変化が同時に進んでいることが、熊本の治安を考えるうえでの前提になります。パトロールの重点をどこに置くか、交通の安全対策をどの道路で強めるかといった判断は、県全体の平均値ではなく地域ごとの実情から組み立てる必要があるということです。
詐欺と匿名・流動型犯罪グループ
令和8年の運営重点は、県民生活を脅かす犯罪の取締りの柱のなかで、「電話で『お金』詐欺」と「SNS型投資・ロマンス詐欺」への取締り強化を掲げています。
同じ柱には、暴力団と匿名・流動型犯罪グループの壊滅に向けた総合的な対策、薬物事犯の取締り強化も並びます。
指示役が匿名の陰に隠れ、実行役だけが短期間で入れ替わっていく構造の犯罪では、末端を捕まえるだけでは被害が止まりません。取締りと並行して、資金の流れを断つ取組や、誘いに応じてしまう人を出さないための働きかけまでが一続きの課題になります。
サイバー空間の安全確保
体感治安の調査でインターネット空間が不安の上位に入っていることは、そのままこの課題の重みを示しています。
令和8年の運営重点でも、犯罪の起きにくい社会づくりの柱のなかに「サイバー空間の安全の確保」が置かれました。
詐欺の入口がSNSに移り、被害に気づいたときには相手をたどる手がかりが乏しいという状況は、熊本県でも例外ではありません。
情報系の学習経験や資格を持つ人にとっては、志望動機と接続しやすい領域です。熊本県警察の警察官A採用試験には情報処理の資格加点が設けられており、この分野の人材を求めていることが制度からも読み取れます。
交通の安全確保
令和8年の運営重点は、安全かつ快適な交通の確保を独立した柱に立てています。
その下には、歩行者の安全確保と子供・高齢者への総合的な対策、運転者への働きかけ、交通安全施設の整備、飲酒運転など悪質で危険な運転者の排除、そして自転車その他小型モビリティ対策の強化という5つの推進施策が並びます。
高齢化が進む地域と、交通量が増えている地域が県内に併存していることを考えると、同じ交通対策でも場所によって必要な打ち手が違ってくる分野だといえます。
二度の激甚災害を経験した県での災害対処
平成28年の熊本地震では、4月14日の前震(マグニチュード6.5)と4月16日の本震(マグニチュード7.3)で、同一地域において観測史上初めて約28時間の間に2度の震度7が観測されました。
県内の人的被害は平成29年12月13日時点で死者252人(内訳は、警察が検視で確認した死者50人、負傷の悪化や避難生活等の身体的負担による死者197人、平成28年6月の豪雨被害のうち熊本地震との関連が認められた死者5人)、住家被害は約19万7千棟に及んでいます。(出典:平成28年熊本地震の概要|平成29年)
その4年後、令和2年7月豪雨では県内で死者67人(うち災害関連死者2人)・行方不明者2人・負傷者50人を出し、住家被害は7,400棟を超え、県内被害額は約5,222億円と試算されました。(出典:令和2年7月豪雨の被害状況|令和2年)
令和8年の運営重点は「災害等から県民を守る活動の推進」を柱の一つに掲げ、大規模災害等緊急事態に備えた警察活動の高度化を推進施策の筆頭に置いています。(出典:熊本県警察運営方針及び令和8年運営重点等|熊本県警察)
地震と豪雨の両方を実際に経験した県の警察であることは、志望動機を考えるうえで避けて通れない前提です。
さらに令和8年(2026年)7月28日16時27分には、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生し、宇城市と氷川町で最大震度7が観測されました。
熊本県災害警戒本部の発表(令和8年9月7日14時00分現在・速報値)によれば、県全体の被害は死亡38名、住家被害65,551棟、避難所の開設37か所・避難者1,872名です。(出典:令和8年熊本地震の被害状況|熊本県災害警戒本部・令和8年9月7日14時00分現在)
この地震における警察の活動内容は、当研究会が公表資料で確認できていないため、ここでは扱いません。
また、この地震は平成28年の熊本地震とは別の地震ですので、二つの地震の数字を混ぜないよう注意してください。上の数値は速報値ですから、熊本県が公表する被害情報で最新の内容を確かめておいてください。
重点方針|熊本県警察運営方針及び令和8年運営重点等
熊本県警察は、警察活動の指針として『熊本県警察運営方針及び令和8年運営重点等』を策定しています。
運営方針は「県民の期待と信頼に応える強い警察」で、「安全で安心して暮らせる熊本の実現」という副題が添えられています。
令和8年の運営重点は、前年の実施結果に基づく現状・課題と、現下の治安情勢を踏まえた指針として定められたものです。(出典:熊本県警察運営方針及び令和8年運営重点等|令和8年)
方針の読み方
運営方針の言葉は短いぶん、どこに力点が置かれているかが分かりやすくなっています。
「期待」と「信頼」という二つの語が並び、そのうえで「強い」という形容が組織にかかっている点が特徴です。
県民が何を望んでいるかを掴む姿勢と、掴んだうえで実際に成果を出す実力の、両方を求める言い方だと読めます。面接で「どんな警察官になりたいか」を考えるときも、心構えだけで終わらせず、その心構えで何ができるようになりたいのかまで言葉にしておくと、この方針と噛み合います。
5つの運営重点
令和8年の運営重点は5項目で、その下に合計26の推進施策が置かれています。項目名だけでは中身が伝わりにくいため、それぞれが指している内容を当研究会の言葉でかみ砕きました。
| 運営重点(公式の項目名) | 受験生向けの解説 |
|---|---|
| 1 犯罪の起きにくい社会づくり | 子供・女性・高齢者を守る取組、少年の非行防止、ストーカーやDV・児童虐待といった人身の安全にかかわる事案への組織的な対応、サイバー空間の安全確保、地域の実情に即したパトロール、通信指令をはじめとする初動警察活動の高度化(6施策) |
| 2 県民生活を脅かす犯罪の取締り | 重要凶悪事件の早期検挙、身近な窃盗事件の徹底検挙、電話やSNSを使った詐欺への取締り強化、暴力団と匿名・流動型犯罪グループの壊滅と薬物事犯対策、不正事犯や生活経済・環境・風俗事犯の取締り、緻密かつ適正な捜査(7施策) |
| 3 安全かつ快適な交通の確保 | 歩行者の安全確保と子供・高齢者への交通安全対策、運転者への働きかけ、交通安全施設の整備、飲酒運転など悪質で危険な運転者の排除、自転車その他小型モビリティ対策(5施策) |
| 4 災害等から県民を守る活動の推進 | 大規模災害等の緊急事態に備えた警察活動の高度化、テロの未然防止、経済安全保障の確保と対日有害活動対策、警衛・警護の対処能力強化と警備諸対策(4施策) |
| 5 県民の期待と信頼に応える強い組織づくり | 県民の意見・要望の把握と積極的な情報発信、相談への迅速確実な対応と被害者支援、採用募集の強化と採用時教養の充実による人材育成、組織基盤の強化(4施策) |
面接では、自分の取り組みたい仕事がこの5つのどれに位置づくのかを一言添えられるだけで、組織の方向性を踏まえた志望だと伝わります。各項目の下に置かれた推進施策の全文は、県警察の公式ページで確認できます。
POINT|5つの項目名を暗記することが目的ではない
運営重点の名称をそらで言えても、それだけでは評価にはつながりません。関心のある分野を1〜2つ選び、「①熊本で何が起きているか(数字) → ②県警察はどの施策で対処しようとしているか → ③自分はどの現場で何をしたいか」の順に並べ直してみてください。
悪い例「熊本の安全を守れる警察官になりたいです」
改善例「まずは交番の警察官として、地道に頑張りたいです。その上で、去年の刑法犯は7千5百件ほどで前の年より1割以上増えていて、なかでも窃盗犯が4千7百件ほどと6割を超えていますので、地域を回る活動や戸締まりの呼びかけを通じて、身近な犯罪を減らす仕事に取り組んでいきたいと考えています」
あわせて確認したい公式資料
すべてを読む必要はありません。志望動機に関係する資料を選び、重要な部分を自分の口で語れる状態に仕上げておきましょう。
- 警察官A・Bそれぞれの試験案内(試験種目・配点・合格基準・資格加点・申込方法)
- 熊本県警察の採用案内ページ(仕事内容と職員の声、警察学校での初任教養)
- 熊本県警察運営方針及び令和8年運営重点等(5項目と26の推進施策)
- 犯罪統計と体感治安に関するアンケート調査(数字は更新されるため最新値を確認)
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、熊本県警察専用の面接想定問答集をご用意しています。熊本県警察の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
熊本県警察の面接の概要
ここからは、熊本県警察の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。
熊本県警察の面接の流れ
熊本県警察・警察官採用試験は第1次試験と第2次試験の2段階です。警察官A(大卒程度)と警察官B(高卒程度)で記述式の種目と集団選考の形式が異なるため、自分の区分の欄を確認してください。
| 項目 | 内容(令和7年度・警察官A/警察官B) |
|---|---|
| 試験の段階 | 第1次試験 → 第2次試験の2段階 |
| 第1次試験 | 教養試験(択一式50題・200点)と、論文試験(警察官A・50点)または作文試験(警察官B・50点) |
| 論文・作文の扱い | 第1次試験日に実施されるが、採点されるのは第1次合格者の答案のみで、採点は第2次試験で行われる |
| 論文・作文の試験時間 | 論文70分(警察官A)/作文60分(警察官B) |
| 第2次試験 | 身体検査・体力試験(30点)と面接試験(300点)に、第1次試験日に実施した論文・作文(50点)の採点を加えた380点満点 |
| 面接の種類 | 警察官A=個別面接及び集団討論/警察官B=個別面接及び集団面接。警察官Aでは参考として適性検査を実施 |
| 面接で見られる要素 | 表現力、積極性、協調性、堅実性、理解力など |
| 体力試験の種目 | 反復横跳び、20メートルシャトルラン、腕立て伏せ |
| 合格基準 | 面接試験は配点の6割(300点満点中180点相当)。警察官Aは教養・論文についても「全区分の平均点又は配点の4割の点のいずれか低い点」を満たさない場合、総合得点にかかわらず不合格 |
| 資格加点(警察官A) | 語学20点、武道10点、情報処理10点または20点。加点対象は1つの資格等に限り、満点まで |
| 採用予定人員(警察官A) | 男性38人程度・女性19人程度 |
この構成から読み取ってほしい点が三つあります。一つ目は配点です。
第2次試験380点のうち300点、つまり約8割が面接試験に置かれています。
体力試験の30点と比べても桁が違い、第2次試験は事実上、面接で決まる設計になっています。
二つ目は、第1次試験の得点の扱いです。
試験案内には、第1次試験の結果は第2次試験に反映されないと明記されています。
教養試験で高得点を取っても、その貯金を面接に持ち込むことはできません。逆にいえば、第1次をぎりぎりで通過した人も、面接では同じ位置から勝負できるということです。
三つ目は合格基準です。
面接試験には配点の6割という基準が設けられており、総合得点が高くても面接がこの水準に届かなければ合格になりません。
面接を「加点を狙う場」ではなく「必ず一定水準を超えなければならない場」として捉えておく必要があります。(出典:警察官A採用試験案内|令和7年度)
もう一点、準備の設計に関わる事実があります。
試験案内および採用案内で第2次試験の提出書類として挙げられているのは、第1次合格者に送付される身体検査書と、資格加点該当者の証明書類の写しだけです。
面接カードや自己PR書のような、事前に自分を説明する書面の提出は記載されていません。つまり、自分がどんな人間で何をしてきたのかは、面接の受け答えそのもので伝えることになります。(参考:警察官B採用試験案内|令和7年度)
なお、採用者は人事委員会が提示する採用候補者名簿の中から警察本部長が決定します。採用後は熊本県巡査に任命され、警察学校で初任教養(警察官Aは6か月、警察官Bは10か月)を受けることになります。
上記の試験構成は、熊本県警察が公表する令和7年度の警察官A・警察官B採用試験案内にもとづくものです(論文・作文の試験時間は当研究会が収集した過去問データによります)。試験の構成・配点・合格基準・提出書類・日程等は、年度や受験区分によって異なる可能性があります。受験の際は、必ずご自身の区分の最新の試験情報をご確認ください。
熊本県警察が求める人材
熊本県警察は、「求める人物像」として定式化した文言を、令和7年度の試験案内にも採用案内ページにも掲げていません。そのため、公表されている言葉から人物像を読み解く必要があります。
最も直接的な手がかりは、試験案内が面接試験の評価要素として挙げる表現力、積極性、協調性、堅実性、理解力という五つの語です。
採用側が何を見るかを自ら書き出しているのですから、これに勝る材料はありません。
この五つのうち、対策で見落とされやすいのが堅実性です。
派手な実績や勢いのある語りよりも、決めたことを外れずに続けられるかどうかを見る言葉であり、令和8年の運営重点が県民の身近で起きる窃盗の徹底検挙を掲げていることとも符合します。
もう一つの手がかりが運営方針「県民の期待と信頼に応える強い警察」ですが、これは組織としての方針であって採用上の人物像そのものではありません。方向性を掴む材料として使い、人物像の根拠は五つの評価要素に置くのが正確な読み方です。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。熊本県警察の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | 試験会場までは、どうやって来ましたか? | 緊張をほぐす何気ない雑談に、素の受け答えと会話の自然さが表れます |
| ② 動機・志望 | 民間企業ではなく、なぜ警察官なのですか? | 他の進路と比べたうえでの職業理解の深さと、選択の理由の一貫性 |
| ③ 自己理解 | あなたの強み(自己PR)を教えてください | 自分の強みを、警察の仕事の場面と結びつけて説明できているか |
| ④ 経験・行動 | 学生時代に最も力を入れたことは何ですか? | 実績の大きさではなく、実際にとった行動の事実と、そこから学ぶ姿勢 |
| ⑤ 学業・経歴 | 専攻分野(学科・コース)を選んだ理由を教えてください | 自分の選択の理由を順序立てて話せるか。意思決定の一貫性 |
| ⑥ 適性・将来 | 体力に自信はありますか? | 交替制勤務や訓練に耐える体力の裏づけと、日頃の健康管理の習慣 |
| ⑦ 公共性・社会性 | 警察官に最も必要な資質は何だと思いますか? | 職業観の成熟度と、県民を守る仕事への当事者意識 |
ただし、この7カテゴリーは熊本県警察に限らず全国の官公庁でほぼ共通です。受験者全員が対策してくる領域なので、ここでは大きな差がつきにくいのです。
なお、警察官の採用面接では、規律ある集団生活への適応や、危険を伴う職務への覚悟を確かめる質問がされることがあります。そうした質問が存在することをあらかじめ知っておくだけでも、当日の落ち着きが変わります。
合否を分けるのは「熊本県警察ならでは」の質問
どちらも、熊本県の現状と県警察の方針を知らなければ、その場では答えようがない質問です。
逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。
こうした質問に答えるための「熊本県警察の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。
| 質問テーマ | 知っておきたい熊本県警察の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| 治安の現状 | 令和7年の刑法犯認知件数は7,529件で前年比12%増、検挙率は48.7%。窃盗犯が4,693件と刑法犯の62.3%を占め、殺人3件・強盗10件を大きく上回る | まず前年からの増減を示し、そのうえで検挙率が5割に届いていない点に触れると、犯罪を防ぐ側と、起きた事件を解決する側の両方へ話を広げられる。窃盗犯の内訳まで挙げれば、統計を自分で見た人の話になる |
| 志望動機・やりたい仕事 | 運営方針は「県民の期待と信頼に応える強い警察」。令和8年の運営重点は、犯罪の起きにくい社会づくり、犯罪の取締り、交通、災害等、組織づくりの5項目で、その下に26の推進施策がある | やりたい仕事が5項目のどれに当たるかを一言添える。さらに26の推進施策から一つ選び、項目名ではなく中身を自分の言葉で説明できると、暗記との差がはっきり出る |
| 熊本で働く規模感 | 管轄人口は約168万人。県警本部は熊本市中央区水前寺にあり、警務部・生活安全部・刑事部・交通部・警備部の5部体制 | 県庁所在地の市街地と人口の少ない町村部が、同じ管轄区域に入る。配属先によって求められる動き方が変わる点を踏まえ、どの現場でも働き続けられる理由を、組織の大きさではなく職務の中身から用意しておく |
| 災害への備え | 熊本地震では同一地域で観測史上初めて約28時間の間に2度の震度7を観測し、県内の死者は252人(うち警察が検視で確認した死者50人)。令和2年7月豪雨では死者67人・住家被害7,400棟超。令和8年7月には令和8年熊本地震も発生している(被害は速報値) | 被害の規模を述べて終わりにしない。検視や行方不明者の捜索といった、警察が現に担った役割まで踏まえ、運営重点4の災害対処と結び付けて話す |
| 地域の変化 | JASMが令和6年2月に開所し第2工場の建設も発表。企業立地件数は令和5年度に3年連続で過去最多。令和6年の外国人延べ宿泊者数は約147万人で前年比47.1%増 | 県全体では人口が減る一方、人と車の流れが太くなる地域があるという二方向の変化を押さえる。交通の安全や言葉の通じにくい相手への対応など、自分が関わりたい場面まで具体化しておく |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 警察官としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。
想定される評価の観点
面接は、試験案内が示す五つの評価要素に照らして、「これまでに実際どう行動してきたか」を確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 表現力 | 経験を、聞き手に伝わる順序と長さで話せているか | 熊本県警察では第1次合格者の論文・作文が第2次試験で採点される。書いた答案の骨子を口頭で言い直す練習をしておくと、書面と面接で語る内容がずれない |
| 積極性 | 指示を待たずに自分から動いた場面があるか | 令和8年の運営重点の1番目は「犯罪の起きにくい社会づくり」で、事が起きる前の働きかけが並ぶ。頼まれる前に動いた経験を一つ、時期と相手まで具体的に言えるようにしておく |
| 協調性 | 立場や考えの違う相手と、どう折り合いをつけたか | 警察官Aは集団討論、警察官Bは集団面接が課される。個別面接で語る協調性と、集団の場で実際に見せる振る舞いが一致しているかを見られる前提で臨む |
| 堅実性 | 決めたことを、目立たない場面でも続けられるか | 令和7年の刑法犯は6割超が窃盗犯で、効くのは戸締まりや施錠の呼びかけのような積み重ねの仕事である。三か月以上続けたことを一つ選び、途中でやめずに済んだ理由まで用意しておく |
| 理解力 | 相手の話や置かれた状況を正しく受け取れているか | 質問の意図を取り違えたまま話し続けると、それ自体が評価に響く。聞かれたことにまず一文で答え、そこから理由を足す型に慣れておく。警察官Aでは参考として適性検査も行われるため、受け答えの一貫性も見られる |
評価の観点の5項目は、令和7年度の警察官A・B採用試験案内が面接試験の評価要素として挙げる「表現力、積極性、協調性、堅実性、理解力など」をもとに、当研究会が面接対策用に整理したものです。熊本県警察が「求める人物像」として公表している文言ではありません。
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 自分の受験区分の最新の試験案内を読み、種目と配点、面接試験の合格基準、資格加点の対象、電子申請での申込方法を確認する
- これまでの経験を棚卸しする。部活動・アルバイト・学校行事・仕事から、自分が実際にとった行動を話せる出来事を1つずつ用意する
- 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
- 組織研究のインプットをする。この記事の前半部分を読み返し、志望分野に近い事実を2〜3個、自前の言葉に置き換えておく
- 固有質問の材料を対応表から集め、「事実 → 自分の問題意識 → やりたいこと」の一続きの話に編む。あわせて、論文・作文で書く内容と面接で話す内容の骨子をそろえておく
- 実際に口に出してリハーサルし、答えるたびに「ここを掘られたら何と返すか」を書き足していく。あわせて、体力試験の種目である反復横跳び・20メートルシャトルラン・腕立て伏せを日々のトレーニングに組み込み、体づくりと生活リズムづくりを並行して進める
優先順位に注意
ステップ4〜5の組織研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、その経験を警察の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください。自分のことを語れない状態で組織の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、熊本県警察専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
熊本県警察の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。本番までの残り日数が少ない場合は、こうした教材で仕上げを前倒しするのも一つの方法です。
さいごに
熊本県警察の第2次試験は380点満点で、そのうち300点が面接試験です。しかも第1次試験の得点は第2次に持ち越されません。
筆記の貯金を頼りにできない代わりに、第1次を通過した人は全員が同じ位置から面接に臨めるということでもあります。
試験案内に書かれている第2次試験の提出書類は身体検査書と資格加点の証明だけですから、自分がどんな人間で何をしてきたのかは、その場の受け答えで伝えるほかありません。
熊本地震と令和2年7月豪雨を経験し、いまは半導体の集積で人の流れが変わりつつある約168万人の県で、「県民の期待と信頼に応える強い警察」の一員として何をしたいのか。
特別な経歴は必要ありません。部活動やアルバイト、あるいはこれまでの仕事のなかで自分が実際にとった行動を、細部まで話せる状態にして当日を迎えてください。