本記事では、高知県警察・警察官採用試験の面接対策で必要な、高知県警察の特徴・基礎データ・県内の治安情勢・令和7年の運営指針と重点目標・面接の流れ・想定される質問・評価の観点についてまとめています。
高知県警察の面接試験では、「なぜ高知県警察を志望したのか」「警察官として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を警察の仕事でどう活かしたいか」といった、組織への理解を前提とする質問が想定されます。高知県の治安の現状と県警察の方針を知っておくことで、抽象的な回答を避け、この県で警察官が置かれている状況を踏まえた説明がしやすくなります。
本記事の掲載内容を参考に、自分の強みや関心と高知県警察の仕事の接点を考え、面接での回答作りに役立ててください。
第1部|組織研究編
高知県警察の特徴
本格的な面接対策をはじめる前に、まずは高知県警察という組織の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)
- 高知県全域を管轄し、管轄人口は約66万6千人。県の推計人口は令和5年10月1日現在で666,293人で、直近1年間に9,417人(1.4%)減っています。(出典:高知県推計人口年報|令和5年)
- 管轄面積は7,102.28平方キロメートルで、都道府県では広いほうから18番目にあたります。(出典:全国都道府県市区町村別面積調|令和6年)
- 県土の84%が森林で、この森林率は全国1位。北側は急峻な山々に囲まれ、南側は700キロメートルを超える海岸線が太平洋に面しています。(出典:都道府県別の森林率・人工林率|令和4年)
- 人口は全国でも少ないほうで、県土は全国18位の広さという組み合わせが、この県警察の働き方を決めています。山あいの集落から沿岸の漁港まで、1人の警察官が受け持つ範囲が地理的に広くなります。
- 県警本部は高知市丸ノ内二丁目に置かれ、内部部局は警務部・生活安全部・刑事部・交通部・警備部の5部と警察学校で構成されています。
- 65歳以上の割合は36.3%(令和5年10月1日現在)。高齢の方を狙う詐欺と、高齢の方が巻き込まれる交通事故が、日々の警察活動で向き合う課題の中心になります。
- 県警察は「家族のための南海トラフ地震対応マニュアル」(令和7年2月版)を公式サイトで公開しています。家庭向けの備えの手引きを警察が自ら作っている点に、この県の災害への向き合い方が表れています。(参考:家族のための南海トラフ地震対応マニュアル|令和7年2月)
高知県警察の基礎データ
面接に向けた組織研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「高知県警察の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。
ここでは、管轄する県土と人口、本部の組織、犯罪情勢など、組織の置かれた環境を説明できる項目を優先的に整理しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 管轄区域 | 高知県全域 |
| 管轄人口 | 約66万6千人(令和5年10月1日現在の推計人口666,293人) |
| 管轄面積 | 7,102.28平方キロメートル(都道府県で18番目) |
| 県土の特性 | 森林率84%で全国1位。700キロメートルを超える海岸線が太平洋に面する |
| 高齢化率 | 36.3%(令和5年10月1日現在。15歳未満は10.4%) |
| 県警本部の所在地 | 高知市丸ノ内二丁目4番30号 |
| 本部の組織 | 警務部・生活安全部・刑事部・交通部・警備部の5部 |
| 刑法犯認知件数 | 3,630件(令和7年・前年比3%増) |
| 刑法犯検挙率 | 50.5%(令和7年) |
管轄人口・高齢化率は高知県の推計人口年報(令和5年10月1日現在)、面積は国土地理院の全国都道府県市区町村別面積調(令和6年1月1日現在)、刑法犯認知件数(警察が発生を把握した犯罪の件数)と検挙率は令和7年の犯罪統計(確定値)にもとづく数値です。警察署・交番・駐在所の設置数や職員定数はこの記事では扱っていないため、必要な方は高知県警察の公表資料をご確認ください。
数字から考えられる治安課題
高知県の刑法犯は、件数だけを見れば全国でも少ない部類に入ります。上の表の3,630件という水準も、前年からの伸びは3%にとどまっており、発生が急に膨らんでいる局面ではありません。
ところが、被害の金額に目を移すと景色が変わります。
令和6年の1年間に県内で確認された特殊詐欺の被害額は約2億3,066万円、これとは別に集計されるSNS型投資詐欺・ロマンス詐欺の被害額は約6億5,618万円でした。
件数の小ささと被害額の大きさが逆を向いていることが、いまの高知県の治安を読むときの出発点になります。
たとえば面接で県内の治安について聞かれたときは、次のように件数と金額を対比させて説明できます。
高知県の治安情勢
刑法犯認知件数と検挙の状況
令和7年の県内の刑法犯認知件数3,630件(前年比3%増)に対し、刑法犯全体の検挙率は50.5%でした。認知した事件のおよそ半分で犯人にたどり着いている計算になります。
面接で治安を語るときは、この2つを並べて話すと組み立てやすくなります。
ただし、件数が少なく検挙率も5割を保っているからといって、県内の治安が安泰だということにはなりません。
県内だけで完結しない犯罪が、この数字の外側で動いているからです。次に見る詐欺の数字が、そこに直結します。
主な罪種の内訳
3,630件をひとまとめに覚えるだけでは、県内で何が起きているかまで説明できません。5つの罪種について、令和7年の県内の件数をまとめました。
| 主な罪種(令和7年・認知件数) | 件数 |
|---|---|
| 殺人 | 4件 |
| 強盗 | 8件 |
| 侵入盗 | 314件 |
| 自動車盗 | 6件 |
| ひったくり | 0件 |
路上でのひったくりは令和7年の認知が1件もなく、命に関わる重要犯罪もごく限られています。表に挙げたなかで数の上で目立つのが侵入盗の314件で、刑法犯全体の1割弱を占めます。
人家が広く散らばり、一軒ごとの距離が離れている土地では、鍵かけの呼びかけや巡回連絡が行き渡るまでに時間も手間もかかります。
地道な訪問活動が、そのまま数字に返ってくる領域だといえます。
特殊詐欺とSNS型投資・ロマンス詐欺
高知県警察が公表した政策評価書によると、令和6年中の特殊詐欺は認知54件・被害額約2億3,066万円で、前年から大幅に増えました。さらに、これとは別に集計されるSNS型投資詐欺・ロマンス詐欺は認知56件で、被害額は約6億5,618万円にのぼります。(出典:高知県警察政策評価書|令和6年)
2つを足すと、令和6年の1年間に110件の被害で8億8千万円あまりが失われた計算になります。県警察が金融機関や市町村と連携して被害状況を公表し、繰り返し注意を呼びかけているのは、被害の入口が電話やSNSといった日常の道具の中にあるからです。
サイバー空間の脅威
詐欺の入口がSNSへ移っていることは、サイバー分野の数字にも表れています。
同じ政策評価書によると、令和6年中のサイバー犯罪の検挙件数は57件で、前年から22件増えました。
人口の少ない県であっても、通信の向こう側から来る被害に距離は関係ありません。情報系の学習経験がある人にとっては、志望動機と結びつけやすい分野でもあります。
交通事故と高齢化
交通の分野では、県の年齢構成がそのまま課題の形を決めています。
65歳以上の割合は36.3%(令和5年10月1日現在)で、県民のおよそ3人に1人が高齢者です。運営指針の重点目標にも、子供と高齢者等の交通事故防止、事故分析にもとづく交通安全対策、自転車や電動モビリティを含む悪質・危険な運転者への対策が並んでいます。
移動を自動車に頼らざるを得ない地域が広く、運転をやめた後の暮らしをどう支えるかという問題と、交通安全対策は地続きです。
県内の交通事故の発生件数や死者数は毎年公表され、数値も年ごとに動きます。面接で交通安全に触れる場合は、高知県警察が公表する最新の交通事故統計をあわせてご確認ください。
高知県の主な治安課題
ここまでの数字を踏まえると、高知県警察がいま向き合っている課題が見えてきます。面接で「高知県の治安上の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。
広い県土で保つ体感治安
令和7年の刑法犯3,630件という水準は、県民一人ひとりから見れば「めったに起きないこと」の側にあります。
だからこそ、身近な場所で一件でも事件が起きれば、その情報は地域のなかを速く伝わり、体感治安を大きく揺らします。
県の推計人口は令和5年10月1日までの1年間に9,417人減っており、地域を見守る住民そのものが少なくなっていく流れも重なります。人口が減っても県土の広さは変わらないため、警察官の姿が見える範囲をどう保つかが問われ続けます。
高齢化率36.3%と、金額の大きい詐欺被害
令和6年の特殊詐欺とSNS型投資詐欺・ロマンス詐欺を合わせた被害額は8億8千万円あまりでした。
県民のおよそ3人に1人が65歳以上という構成のもとでは、退職金や年金といったまとまった資産が狙われる場面が増えます。
運営指針の第1の柱に、特殊詐欺の抑止と、子供・女性・高齢者等を守る取組がまとめて置かれているのはそのためです。金融機関の窓口での声かけや、家族へ相談してもらうための広報が、検挙と同じ重さで語られる分野です。
SNSを入口とする犯罪と組織犯罪対策
被害額の大きい詐欺の背後には、SNSで実行役を募り、指示役が姿を見せないまま犯行を繰り返す構造があります。
実行役だけを検挙しても被害が止まらないため、運営指針では、広域的な捜査連携による詐欺の検挙と、組織犯罪から県民を守るための対策が同じ柱に並べられています。
県境をまたぐ捜査は、四国の他県警察や近隣府県との連携なしには成立しません。高知県内だけでは完結しない仕事があるという理解は、志望動機を語るうえでも効いてきます。
南海トラフ地震への備え
高知県にとって最大の備えは、南海トラフ地震です。
令和8年3月公表の令和7年度被害想定(最大クラス・陸側のケース)では、冬の深夜に発生した場合の死者を約23,000人、建物の全壊を約204,000棟と見込んでいます。
発生直後の断水率は100%(断水人口633,000人)、停電率は97%。発生1日後の避難生活者は避難所に273,000人、避難所の外に157,000人と想定されています。
県は同じ資料で、早期避難率が現状の73%から100%になれば津波による死者を14,000人から2,000人まで減らせるとしており、備えの進み具合が結果を大きく左右します。(出典:南海トラフ地震による被害想定〔高知県版〕|令和7年度)
この数字が意味するのは、警察官自身も水と電気を失った状態で活動するということです。
県警察が運営指針に大規模災害から県民を守る取組を柱として掲げ、家庭向けのマニュアルまで作って公表しているのは、発災直後に一人ひとりが自分で判断して動ける状態をつくっておく必要があるからです。
警備部門を志望する人だけでなく、すべての受験者が押さえておきたい前提です。
人口減少という県政の最重要課題
県は、人口減少問題を県政における喫緊かつ最重要の課題と位置づけ、若年層の県外流出が婚姻や出生の減少を招き、それがさらに若年人口を減らすという連鎖に課題認識を示しています。
担い手が減る流れは、防犯ボランティアや自主防災組織といった地域の守りにも及びます。
警察官の数を急に増やせない県で治安を保つには、住民の側に見守る力を残していく発想が欠かせません。(参考:高知県元気な未来創造戦略|令和6年3月)
重点方針|令和7年高知県警察運営指針及び重点目標
高知県警察は、毎年の警察活動の方向を示すものとして運営指針と重点目標を定めています。公式サイトで公表されている令和7年の運営指針は「高知県の安全・安心を守る強く優しい警察」で、副題に「県民に寄り添い、ともに歩む」が添えられ、重点目標は5つの柱として示されました。(出典:令和7年高知県警察運営指針及び重点目標|令和7年)
指針を貫く考え方
この指針で目を引くのは、「強く」と「優しく」を一つの言葉に並べていることです。
凶悪な犯罪や災害の現場に踏み込む強さと、被害に遭った人の話をじっくり聴く優しさは、性格の面では別のものに見えます。それでも県警察は、どちらも同じ警察官に求めると宣言しているわけです。
2つを同時に求めているところに、この組織が描く警察官像があると考えてよいでしょう。
回答を作るときは、どちらか一方だけに寄った人物像を描かないことが出発点になります。
5つの重点目標
重点目標は次の5項目です。あわせて、それぞれの柱が指している内容を受験生向けに当研究会の言葉でかみ砕きました。
| 重点目標(公式の項目名) | 受験生向けの解説 |
|---|---|
| ① 総合的な犯罪抑止対策と子供・女性・高齢者等を守る取組の推進 | 事件が起きる前に手を打つ柱。特殊詐欺の抑止、ストーカーやDVなど人身の安全を確保する対応、少年の非行防止、サイバー空間の脅威への対処までを一つにまとめている |
| ② 悪質・重要犯罪の検挙と組織犯罪対策の推進 | 起きた事件を確実に検挙する柱。重要犯罪の捜査に加え、県境をまたぐ捜査連携による詐欺の検挙と、組織犯罪から県民を守る取組が並ぶ |
| ③ 交通事故から県民を守る対策の推進 | 子供と高齢者等の事故防止、事故分析にもとづく安全対策、自転車や電動モビリティを含む悪質で危険な運転者への対策、安全で快適な交通環境の整備 |
| ④ 大規模災害やテロ等重大事案から県民を守る取組の推進 | 南海トラフ地震をはじめとする大規模災害への対応力の向上、テロなど重大事案の未然防止、警護警備の的確な実施 |
| ⑤ 県民の期待と信頼に応える警察活動の推進 | 組織そのものを支える柱。県民に寄り添ったきめ細かな警察活動、社会情勢の変化に対応した組織運営、女性活躍と働きやすい職場づくり |
面接では、自分の取り組みたい仕事がこの5つのどれに位置づくのかを一言添えられるだけで、組織の方向性を踏まえた志望だと伝わります。各柱の下には主要施策が置かれており、全文は県警察の公式ページで確認できます。
本記事が扱っているのは、公式サイトに掲載されている令和7年版です。指針も重点目標も年ごとに改められるため、受験する年に公表されているものを必ずご自身で確認してください。
POINT|5つの柱は「選んで使う」もの
5つを均等に押さえようとすると、どれも浅いまま終わります。関心のある柱を1〜2つ選び、県内で実際に起きていることの数字、県警察が示している対処の方向、自分がやりたい現場の仕事、という順につないでみてください。
悪い例「県民に優しい警察官になりたいです」
改善例「まずは交番や駐在所の勤務で、地域の方の顔と暮らしを覚えるところから始めたいです。その上で、令和6年はSNSをきっかけにした投資やロマンスの詐欺だけで6億円を超える被害が出ていますので、高齢の方への声かけや、金融機関と一緒に行う呼びかけに力を入れていきたいと考えています」
あわせて確認したい公式資料
すべてを読む必要はありません。志望動機に関係する資料を選び、重要な部分を自分の口で語れる状態に仕上げておきましょう。
- 警察官採用試験の受験案内(試験型・試験種目・配点・受験資格・申込方法)
- 採用案内のページ(仕事内容と職員の声、採用後の教養期間)
- 令和7年高知県警察運営指針及び重点目標(5つの柱と主要施策)
- 犯罪統計・交通事故統計のページ(数字は毎年更新されるため最新値を確認)
なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。
当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、高知県警察専用の面接想定問答集をご用意しています。高知県警察の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。
第2部|面接対策編
高知県警察の面接の概要
ここからは、高知県警察の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。
高知県警察の面接の流れ
高知県警察の警察官採用試験(警察官A・警察官B)には「チャレンジ型」と「キャリアアピール型」があり、両者は併願できます。
ここでは、公表資料で種目と配点まで確認できるチャレンジ型を取り上げます。
チャレンジ型は、教養試験に代えて民間企業の採用で広く使われる基礎能力試験SPI3を課す形式で、性別による区分はありません。
| 項目 | 内容(令和8年度・警察官A/警察官B〈チャレンジ型〉) |
|---|---|
| 試験の段階 | 第1次試験 → 第2次試験の2段階 |
| 第1次試験 | 基礎能力試験〈SPI3・70題・1時間10分〉、適性検査、論文試験(解答時間90分) |
| 第2次試験 | 身体検査、体力試験、口述試験、身体精密検査(身体精密検査票は第1次試験の際に交付され、第2次試験で提出) |
| 口述試験の形式 | 人物・人柄等に関する集団討論および個別面接 |
| 配点 | 基礎能力試験80点・論文試験50点(第1次試験の計130点)、体力試験20点・口述試験150点。合計300点満点 |
| 最低基準 | 口述試験が一定以上の成績に達しない場合は、総合得点にかかわらず不合格。体力試験にも最低合格基準がある |
| 事前提出書類 | 申込はインターネットのみ。申込時の自己PR欄・資格語学力欄は入力不要とされ、面接カードやエントリーシートに相当する事前提出書類は課されない |
| 資格加点 | 武道・語学・簿記・情報処理技術者試験・大型自動車免許等の取得者は、加点数に応じて第1次試験の得点に加点(上限10点・2区分まで) |
| 採用後 | 巡査に任命され、警察学校と県内の警察署で警察官Aは約15か月、警察官Bは約21か月の採用時教養を受けたうえで警察署に勤務 |
この配点表から読み取ってほしいことが3つあります。
1つ目は、口述試験の150点が総合得点300点のちょうど半分を占めることです。基礎能力試験80点と論文50点を足しても130点ですから、筆記でどれだけ上積みしても、面接の出来しだいで順位は入れ替わります。
2つ目は、その口述試験に最低基準が置かれていることです。
一定の水準に届かなければ、他の種目がどれだけ良くても不合格になります。
面接は加点を狙う種目であると同時に、通過するために必ず超えなければならない関門でもあるということです。
3つ目は、面接カードやエントリーシートに当たる事前提出書類がないことです。
志望動機や自己PRを紙で先に伝える機会がないぶん、当日の受け答えだけで人物像を伝えきる必要があります。
書類で補えない以上、話す内容の準備は前倒しするほかありません。
あわせて、口述試験には集団討論が含まれます。
個別面接の練習だけでは足りず、他の受験者と同じ場で議論する状況にも慣れておく必要があります。
発言量を競う場ではなく、議論を前に進める一言を出せるかどうかが見られる場面です。(出典:警察官採用試験案内〈チャレンジ型〉|令和8年度)
上記の試験構成・配点・提出書類は、高知県警察が公表した令和8年度の警察官A・警察官B(チャレンジ型)の試験案内にもとづくものです。同案内にはキャリアアピール型との併願が可能である旨の記載があり、キャリアアピール型は試験種目・配点・提出書類が異なる可能性があります。試験の構成・配点・日程等は年度や受験区分によって異なりますので、受験の際は必ずご自身の区分の最新の試験情報をご確認ください。
高知県警察が求める人材
高知県警察は、「求める人物像」として定式化した文言を採用ページには掲げていません。代わりに読み取る材料になるのが、運営指針の「強く優しい警察」と、そこに添えられた副題「県民に寄り添い、ともに歩む」です。
どちらか一方では足りないという要求が、そのまま人物評価の物差しになると考えておきましょう。自己PRを作るときは、自分の経験が強さと優しさのどちらに寄っているかをまず自覚し、寄っていないほうについても場面を一つ出せるようにしておくと、二面の要求に耐えられます。
もう一つ読み取れる材料が、論文試験の出題テーマです。
高知県警察では過去に、失敗や困難を乗り越えた経験とそこから得たものを警察官としてどう活かすかを問う出題や、県内で起きた事件・事故・災害のうち関心を持ったものを挙げさせる出題がありました。
書かせている内容は、面接で聞きたいことと重なります。論文の準備は、面接の準備と切り離さずに進めてください。
想定される質問
面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる
当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。高知県警察の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。
| カテゴリー | 代表質問 | ここで見られていること |
|---|---|---|
| ① 導入・アイスブレイク | 試験会場までは、どうやって来ましたか? | 緊張をほぐす何気ない雑談に、素の受け答えと会話の自然さが表れます |
| ② 動機・志望 | 民間企業ではなく、なぜ警察官なのですか? | 他の進路と比べたうえでの職業理解の深さと、選択の理由の一貫性 |
| ③ 自己理解 | あなたの強み(自己PR)を教えてください | 自分の強みを、警察の仕事の場面と結びつけて説明できているか |
| ④ 経験・行動 | 学生時代に最も力を入れたことは何ですか? | 実績の大きさではなく、実際にとった行動の事実と、そこから学ぶ姿勢 |
| ⑤ 学業・経歴 | 専攻分野(学科・コース)を選んだ理由を教えてください | 自分の選択を順序立てて話せるか。意思決定の一貫性 |
| ⑥ 適性・将来 | 体力に自信はありますか? | 交替制勤務や訓練に耐える体力の裏づけと、日頃の健康管理の習慣 |
| ⑦ 公共性・社会性 | 警察官に最も必要な資質は何だと思いますか? | 職業観の成熟度と、県民を守る仕事への当事者意識 |
ただし、この7カテゴリーは高知県警察に限らず全国の官公庁でほぼ共通です。受験者全員が対策してくる領域なので、ここでは大きな差がつきにくいのです。
なお、警察官の採用面接では、規律ある集団生活への適応や、危険を伴う職務への覚悟を確かめる質問がされることがあります。高知県警察の場合、採用後は警察官Aで約15か月、警察官Bで約21か月の採用時教養が置かれ、その間は警察学校と警察署で学び続けることになりますから、集団の中でやっていけるかどうかは当然に確かめられます。
そうした質問が存在することをあらかじめ知っておくだけでも、当日の落ち着きが変わります。
差がつくのは高知県の事情を知らないと答えられない質問
どちらも、高知県の現状と県警察の方針を知らなければ、その場では答えようがない質問です。
逆に言えば、材料さえ持っていれば、他の受験者との違いをはっきり示せる質問でもあります。
こうした質問に答えるための「高知県警察の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。
| 質問テーマ | 知っておきたい高知県警察の事実 | 答え方のヒント |
|---|---|---|
| 治安の現状 | 令和7年の刑法犯認知件数は3,630件で前年比3%増。検挙率は50.5%。主な罪種では侵入盗が314件、ひったくりは0件 | 件数の少なさをそのまま「安全な県だ」と言い切らない。侵入盗314件という中身まで下ろし、人家が広く散らばる県土では留守宅への目配りに距離の壁があることまで触れると、印象論から抜け出せる |
| 詐欺被害の大きさ | 令和6年の特殊詐欺は認知54件・被害額約2億3,066万円。SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺は認知56件・被害額約6億5,618万円 | 件数ではなく金額で語るのが高知の実情に合う。人口66万6千人の県で年8億8千万円という規模を自分の言葉に直しておくと、抑止に取り組みたい理由に厚みが出る |
| 志望動機・やりたい仕事 | 令和7年の運営指針は「高知県の安全・安心を守る強く優しい警察」。重点目標は犯罪抑止と子供・女性・高齢者等を守る取組、悪質重要犯罪の検挙と組織犯罪対策、交通事故対策、大規模災害とテロ対策、県民の期待と信頼に応える警察活動の5本 | やりたい仕事が5つの柱のどれに当たるかを一言添える。そのうえで、指針の「強く」と「優しく」のどちらの面から関わりたいのかまで言えると、人物像とかみ合う |
| 南海トラフ地震への備え | 県の令和7年度被害想定(最大クラス・陸側のケース)は、冬深夜で全壊約204,000棟。人的被害も大きく見込まれる一方、早期避難が進めば大きく減らせるとされる。発生直後の断水率100%・停電率97%を見込む。県警察は家族向けの地震対応マニュアルを公表している | 想定の数字を挙げて終わらせない。水も電気も止まった県で警察官自身も被災者になるという前提に立ち、発災直後に何を優先するかまで考えておくと、覚悟を問う質問にも答えが続く |
| 高齢化と地域の守り | 65歳以上の割合は36.3%(令和5年10月1日現在)。推計人口666,293人は1年間に9,417人減少し、県は人口減少を県政の最重要課題としている | 高齢化を弱点としてだけ語らない。高齢の方が多い地域だからこそ、巡回連絡や声かけといった地道な活動が抑止に直結するという筋道で話すと、重点目標の第1の柱と噛み合う |
使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、数字をどう受け止めたか、そこから何を問題だと考えたか、警察官として何をしたいか、という順で一続きに話せる状態にしておくことです。
想定される評価の観点
面接は、運営指針が示す組織の価値観に照らして、「これまでに実際どう行動してきたか」を確かめる場です。いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。
| 評価の観点 | 面接でどう確かめられるか | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 強さ=引かずに向き合う胆力 | 苦しい状況や責任のかかる場面から、逃げずに向き合ったか | 運営指針の「強く」に対応する観点。第2次試験には体力試験(最低合格基準あり)と身体検査が組まれており、心身の頑健さも同時に見られる。いま続けている運動を、いつから何を週に何回という形で言えるようにしておく |
| 優しさ=相手の話を聴く姿勢 | 困っている相手の事情を、自分から聴き取ろうとしたか | 令和6年だけで詐欺の被害が8億8千万円に及んだ県では、被害者から事情を聴く場面が日常的に生じる。話を最後まで聴いた経験と、聴いたうえで何を判断したかをひと組で用意する |
| 議論を前に進める力 | 集団の中で、結論に向けた役割を引き受けられるか | 高知県警察の口述試験には集団討論が含まれる。ゼミやアルバイトの中から、意見を整理した場面や反対意見を引き取った場面を選び、そのとき自分が出した一言まで思い出しておく |
| 地道な活動を続ける粘り | 目立たない役割や単調な作業を、途中で投げ出さずに続けたか | 主な罪種で侵入盗が314件を占める県内の犯罪像は、鍵かけの呼びかけや巡回連絡の積み重ねが効くことを意味する。長く続けたことを一つ選び、続けられた理由まで言葉にしておく |
評価の観点の4項目は、公表されている令和7年の運営指針および重点目標と、令和8年度チャレンジ型の試験種目をもとに当研究会が面接対策用に整理したものです。高知県警察が「求める人物像」として公表している文言ではありません。
なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。
本番までの準備6ステップ
ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。
- 最新の受験案内を読み、自分が出願する型(チャレンジ型・キャリアアピール型)と試験種目・配点・申込方法を確認する。申込はインターネットのみで、資格加点の対象と上限も案内に書かれている
- 高校・大学生活の経験を棚卸しする。部活動・アルバイト・学校行事から、行動の事実を話せる出来事を1つずつ用意する
- 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
- 組織研究のインプットをする。この記事の前半部分を読み返し、志望分野に近い事実を2〜3個、自前の言葉に置き換えておく
- 固有質問の材料を対応表から集め、数字の受け止めから自分の問題意識、やりたい仕事へと一続きに話せる形に編む。高知県警察の論文で問われてきた「失敗や困難を乗り越えた経験」や「県内で関心を持った事件・事故・災害」は面接の質問とも重なるため、論文の準備がそのまま面接の材料になる
- 実際に口に出してリハーサルし、答えるたびに「ここを掘られたら何と返すか」を書き足していく。口述試験には集団討論も含まれるため、複数人で意見を出し合う練習の機会も確保する。あわせて、最低合格基準のある体力試験に向けて、運動と生活リズムづくりを早い段階から並行して進める
優先順位に注意
ステップ4〜5の組織研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、その経験を警察の仕事へどうつなぐかという自己分析を優先してください。自分のことを語れない状態で組織の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません。
なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、高知県警察専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。
高知県警察の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。本番までの残り日数が少ない場合は、こうした教材で仕上げを前倒しするのも一つの方法です。
さいごに
高知県警察のチャレンジ型は、総合得点300点のうち150点が口述試験に置かれ、しかもその口述が一定の水準に届かなければ、他の種目の出来にかかわらず不合格になります。
面接カードのような事前提出書類もありませんから、あなたという人物を伝える機会は、集団討論と個別面接のその時間だけです。
裏を返せば、筆記に不安が残る人にも、準備の質しだいで道が開ける試験だということでもあります。
山あいの集落から太平洋沿岸までを一つの組織で受け持ち、南海トラフ地震への備えという重い前提を抱えた県で、自分は「強く優しい警察」のどちらの面から地域に関わっていきたいのか。部活動やアルバイトの具体的な場面まで下ろして語れるようにしておけば、口述試験の150点は決して遠い数字ではありません。