本記事では、福岡市職員採用試験の面接対策で必要な、福岡市の特徴基礎データ行政課題重点政策面接の流れ想定される質問評価の観点についてまとめています。

福岡市役所の面接試験では、「なぜ福岡市を志望したのか」「市職員として何に取り組みたいのか」「自分の強みや経験を市政でどう活かしたいか」といった、自治体への理解を前提とする質問が想定されます。令和8年度の上級行政事務(行政)では、第1次試験で最大の配点が置かれているのが個別面接であり、最終合格も第2次試験の成績だけで決まります。

福岡市の採用試験を実施しているのは福岡市人事委員会で、福岡県人事委員会が行う県職員採用試験とは別の試験です。本記事の掲載内容を参考に、自分の強みや関心と福岡市政の接点を考え、面接での回答作りに役立ててください。

第1部|自治体研究編

福岡市の特徴

本格的な面接対策をはじめる前に、まずは福岡市の全体像を把握しておきましょう。(時間のない方はここだけでもチェック)

  • 福岡県の県庁所在地であり、7つの行政区で構成される政令指定都市。1889(明治22)年の市制施行で誕生し、1972(昭和47)年に政令指定都市へ移行した。
  • 政令指定都市になった時点の行政区は5区で、現在の東区・博多区・中央区・南区・城南区・早良区(さわらく)・西区という7区の構成は、1982(昭和57)年の行政区の再編成によるもの。
  • 人口は1,620,853人(令和8年1月1日現在の住民基本台帳)。市が公表する推計人口では、令和8年6月1日現在で1,671,749人・894,085世帯となっている。
  • 65歳以上は362,209人(22.3%)で、75歳以上は200,759人(12.4%)。福岡県全体(高齢化率28.2%)と比べると若い年齢構成だが、区ごとの差は小さくない。
  • 面積は343.47km²。市街地は博多湾に面した平野に広がり、大野城市・春日市・糸島市・那珂川市など9つの市町と接するほか、佐賀県側とも県境を接する。
  • 市内総生産は名目8兆2,351億円(令和4年度)。事業所の99.7%、従業者の84.4%を中小企業が占める。
  • 福岡空港では令和7年3月20日に2本目の滑走路が供用を開始し、都心では天神ビッグバン博多コネクティッドという2つの再開発が並行して進む。
  • 市の花は夏がフヨウ・冬がサザンカ、市の木はクロガネモチ(いずれも1979年制定)。市役所は中央区天神一丁目8番1号にある。

福岡市の基礎データ

面接に向けた自治体研究では、厳密な統計値等を大量に暗記する必要はありませんが、「福岡市の大体のスケール感」を知っておくことは重要です。

政令指定都市の受験では、市全体の規模と、その内側にある区ごとの違いの両方を言えると話に厚みが出ます。まずは市全体の輪郭から押さえましょう。

項目内容
総人口1,620,853人(住民基本台帳・令和8年1月1日現在)
65歳以上人口362,209人(22.3%)
75歳以上人口200,759人(12.4%)
総面積343.47km²
人口密度約4,719人/km²(上記の総人口と総面積から算出)
行政区数7区(東・博多・中央・南・城南・早良・西)
名目市内総生産約8兆2,351億円(令和4年度)
民営事業所数・従業者数74,867事業所・923,521人(令和3年)

総人口・65歳以上人口・75歳以上人口は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」令和8年1月1日現在の値です。人口密度はこの人口を面積で割って算出しました。市内総生産・事業所数・従業者数は福岡市が公表する経済統計の値、面積は当研究会が基礎データとして整理したものです。市の推計人口は国勢調査結果をもとにした別系列のため、この表の値と突き合わせて増減を出すことはできません。

数字から考えられる市政課題

福岡市の高齢化率22.3%は、同じ住民基本台帳ベースで見た福岡県全体の28.2%を6ポイント近く下回ります。人口も増えてきました。

市の将来人口推計(令和6年4月公表)では、総人口は2020年の161.2万人から2040年ごろに約170万人でピークを迎えると見込まれています。(出典:福岡市の将来人口推計|令和6年4月公表

ただし同じ推計は、2020年から2040年にかけて高齢者人口が35.6万人から47.2万人へ32.7%増となる一方、生産年齢人口は104.1万人から103.1万人へ減ると見込んでいます。人口が増えている間に高齢化の圧力が積み上がっていく形です。

しかも出生と死亡の関係は2021(令和3)年に逆転し、令和8年5月中の動態も出生996人に対して死亡1,220人と自然減でした。人口増を支えているのは転入です。

「若くて伸びている街」という一言で福岡市を説明すると、この二層構造が落ちます。面接では、増えている面と積み上がっている面を同時に言えるかどうかで、調べた深さが伝わります。

「福岡市は人口が160万人を超えていて、2040年ごろまでは増えていくと聞きました。ただ、その間に65歳以上の方が3割以上増える見込みだそうですし、出生数と死亡数はすでに逆転しています。増えているうちに、高齢の方が増えたあとの備えをどこまで進められるかが大事なのではと感じています」

福岡市の経済・産業

経済の規模と、それを支える層

  • 市内総生産は名目8兆2,351億円・実質7兆8,073億円(令和4年度)。
  • 民営事業所は74,867事業所、従業者は923,521人(令和3年)。
  • 市内事業所に占める中小企業の割合は、事業所数99.7%・従業者数84.4%。

つまり、8兆円規模の経済を、九十万人を超える働き手と、ほぼすべてが中小企業という事業所の層が支えているという構造です。企業誘致やスタートアップ支援を志望動機に挙げるなら、その施策が既存の中小企業にどう波及するかまで触れられると、話が地に足のついたものになります。(出典:福岡市経済の概況|令和8年3月公表

天神ビッグバンと博多コネクティッド

都心では2つの再開発が同時に走っています。天神ビッグバンは2015年2月に始動した、天神交差点から半径約500メートル(約80ヘクタール)を対象とする取組で、2025年3月末までに建築確認申請93棟・竣工74棟に達し、2030年代までに約120棟の建替えが予定されています。

市は11プロジェクトの全面開業時の効果を、経済活動による波及約1兆8,900億円、雇用効果約59,000人、建設投資による波及約6,300億円と見込んでいます。(出典:天神ビッグバン|福岡市

博多駅周辺で進む博多コネクティッドも、博多駅から半径約500メートル(約80ヘクタール)が対象です。地下鉄七隈線の延伸やはかた駅前通りの再整備といった交通基盤の拡充とあわせ、規制緩和によるビルの建替えと歩行者ネットワークの拡大を進めています。

都市開発を語るなら、建物を建てる話ではなく、増えた床と人をどう移動させるかという交通の話まで一続きにしておきましょう

福岡空港と交通のゲートウェイ

福岡空港では、令和7年3月20日に2本目の滑走路(長さ2,500メートル・幅60メートル、既存滑走路の西側210メートル)が供用を開始しました。事業主体は国で、計画総事業費は約1,643億円。

これにより滑走路処理能力は年間18万8千回、発着枠は1時間あたり最大40回まで拡大しています。(出典:福岡空港の機能強化|福岡市

観光の回復

福岡市の2022年の入込観光客数(推計)は1,860万人で、前年比157.5%。新型コロナ前の2019年の2,148万人に対して9割近くまで戻りました。同じ年の延べ宿泊者数(推計)は1,099万人です。(出典:福岡市観光統計|2024年版

観光は、上級行政事務(行政)の論文でも扱われたテーマです。令和7年度は、国際的な観光・MICE都市を目指す一方でオーバーツーリズムが深刻化しているという状況を示したうえで、持続可能な観光地域づくりへの考えを問う出題でした。

観光を志望分野に挙げるなら、来訪者を増やす話と、増えた来訪者と市民生活をどう両立させるかの話を、両方持っておく必要があります

福岡市の主な行政課題

ここまでの数字と産業の姿を踏まえると、福岡市が今向き合っている課題が見えてきます。面接で「市の課題」を聞かれたときの引き出しとして、次の5つを押さえておきましょう。

ピークまでの十数年をどう使うか

総人口が2040年ごろに約170万人でピークを迎えるという推計は、裏返せば、市が「増えている自治体」でいられる期間が十数年だということでもあります。その間に高齢者は32.7%増え、生産年齢人口は減る。

増加が続いているうちに、減少局面の備えを積んでおけるかどうかが、いまの福岡市政に共通する時間の条件です。

社会保障関係費と公共施設の老朽化

福岡市は、75歳以上人口が25年間で1.5倍になる高齢化と、昭和40年代から50年代に整備した公共施設の老朽化により、社会保障関係費と公共施設等の建替え・改修経費の増加が見込まれるとしています。都市計画マスタープランは、これを持続可能な財政運営に取り組む必要がある理由として挙げています。

予算規模が過去最大を更新し続けている一方で、この重しが同時に効いていることは押さえておきましょう

警固断層帯の地震への備え

内閣府がとりまとめた都道府県別の被害想定結果では、警固断層南東部の地震(マグニチュード7.2、最大震度6強)を想定した場合、福岡市の死者は754人、負傷者は5,151人とされています。建物被害は全壊10,285棟(全壊率3.36%)、半壊11,928棟、焼失174棟で、避難者は69,501人(8.94%)という想定です。(出典:都道府県別被害想定結果(福岡県)|内閣府

福岡市は2005(平成17)年3月20日に福岡県西方沖地震を経験しており、豪雨による浸水被害も受けてきました。令和8年度の当初予算案でも、新たな被害想定等を踏まえた地域防災計画の全面見直し、老朽配水管の耐震管への更新、民間建築物の耐震診断やブロック塀の除却に対する補助の拡充が並んでいます。

都心の機能強化と、それを支える移動

都市計画マスタープランは、耐震性の高い先進的なビルへの建替えと国際競争力のあるビジネス環境の創出、多くの人と物が集中する都心部を支える交通環境づくり、そして市街化調整区域や離島での人口減少・少子高齢化に伴う地域コミュニティの維持を、都市づくりの課題に挙げています。天神と博多で床が増える一方、市域の縁では人が減っていく。

増える場所と減る場所が同じ市の中に並んでいることが、福岡市の政策判断を難しくしています。

7つの区で異なる年齢構成

政令指定都市の面接では、市全体の平均だけで語ると足元をすくわれます。同じ住民基本台帳ベースで区ごとに見ると、高齢化率には8ポイントの開きがあります。

行政区人口高齢化率75歳以上率
東区334,643人22.3%12.4%
博多区249,344人17.7%9.7%
中央区202,039人19.5%10.5%
南区272,058人23.3%13.0%
城南区127,995人25.7%14.4%
早良区224,494人25.0%13.8%
西区210,280人24.5%13.9%

区別の人口・高齢化率・75歳以上率は、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」令和8年1月1日現在の値です。市の推計人口では、7区のうち人口が最も多いのは東区(令和8年6月1日現在で342,552人)とされています。

博多区の17.7%と城南区の25.7%では、必要な施策の重心が変わります。区役所に配属される可能性がある以上、「福岡市の課題」を語るときに区の違いへ一言触れられるかどうかは、市の仕事への解像度としてそのまま表れます

福岡市の重点政策|第10次福岡市基本計画

福岡市の総合計画は、基本構想・基本計画・実施計画(政策推進プラン)の3層で構成されています。現行の最上位計画は「第10次福岡市基本計画」(計画期間は2025年度から2034年度までの10年間)で、その下に第1次政策推進プラン(2025年度から2028年度まで)が置かれています。

上位の福岡市基本構想は平成24年12月の策定で、目標年次はありません。(出典:第10次福岡市基本計画|福岡市

計画を貫く考え方

基本構想が長期的にめざす都市像として掲げるのは、①自律した市民が支え合い心豊かに生きる都市 ②自然と共生する持続可能で生活の質の高い都市 ③海に育まれた歴史と文化の魅力が人をひきつける都市 ④活力と存在感に満ちたアジアの拠点都市、の4つです。

これを受けて基本計画が置く都市経営の基本戦略は3本あり、なかでも受験生が押さえておきたいのが「『生活の質の向上』と『都市の成長』の持続的な好循環を創り出す」という考え方です。住みやすさに磨きをかけて生活の質を高め、質の高い生活が人と経済活動を呼び込み、その成長の果実でさらに生活の質を高める。

福岡市の政策は、この循環のどこに効くのかという形で説明されています。

3本目の戦略が「福岡都市圏全体として発展し、広域的な役割を担う」であることも重要です。九州全体の成長を促し、九州からの人口流出の抑制に一定の役割を果たすと、市自身が書いている点は、なぜ県庁ではなく市役所なのかという質問に答えるときの足場になります。

8つの分野別目標と30の施策

分野別目標扱う主な分野
1 一人ひとりが心豊かに暮らし、自分らしく輝いているユニバーサル都市、健康づくり、福祉の充実
2 すべての子ども・若者が夢を描きながら健やかに成長している子育て環境、困難を抱える子ども・若者、教育、人材育成
3 地域の人々がつながり、支え合い、安全・安心に暮らしている地域コミュニティ、生活基盤、防災、地域福祉
4 人と自然が共生し、身近に潤いと安らぎが感じられるコンパクトなまちづくり、緑、脱炭素、循環経済
5 磨かれた魅力に人々が集い、活力に満ちている観光資源、歴史・文化、MICE、エンターテインメント
6 都市機能が充実し、多くの人や企業から選ばれている都心部の機能強化、拠点づくり、公共交通、企業立地
7 チャレンジ精神と新たな価値の創造により、地域経済が活性化している地場中小企業、農林水産業、スタートアップ、知識創造型産業
8 アジアのモデル都市として世界とつながり、国際的な存在感がある物流・人流のゲートウェイ、国際ビジネス、国際貢献

この8つの目標のもとに30の施策が並び、さらに空間構成目標と、7区それぞれのまちづくりの目標が示されています。自分がやりたい仕事がどの目標に属するのかを言えるようにしておくと、志望の話が計画の言葉とかみ合います

令和8年度の市政運営のポイント

令和8年度当初予算案の一般会計は1兆1,318億円(前年度比1.7%増)で、過去最大を更新しました。教職員定数の増や学校給食の質の向上による教育費の増、保育士の処遇改善によるこども育成費の増など、社会保障関係費の伸びが規模を押し上げています。

一方で市税収入も納税義務者や給与収入の増加、企業収益、地価の上昇などにより過去最高を更新しました。市債残高は縮減が続き、臨時財政対策債を除く市民一人当たりの残高は、ピークだった平成16年度の半分を下回る見込みです

重点施策として並ぶのは、子育て世帯の市内住替えや三世代同居・近居への助成、学校給食の全学期無償化、国基準を超えた福岡市独自の教員配置、地下鉄延伸の実現可能性検討や地下鉄七隈線の6両編成化の検討、地域防災計画の全面見直し、AIチャットボットやAI電話による24時間の市民対応といった項目です。

POINT|30の施策をすべて暗記しなくてよい

施策名を全部言えることが自治体研究の目的ではありません。関心のある分野を一つか二つ選び、「①福岡市でいま何が起きているか → ②計画はどんな状態を目指しているか → ③令和8年度に動き出す事業は何か → ④政令指定都市だからこそ担えることは何か → ⑤自分の経験をどこで使えるか」の順に降りていきましょう。

悪い例「福岡市の子育て支援に携わりたいです」

改善例「学校給食の全学期無償化や一時預かりの受け皿づくりのように、子育てにかかるお金や時間の負担を直接減らす取り組みに関わりたいです。実際に使うご家庭の声を聞いて、次の年の中身を良くしていく仕事がしたいと考えています」

あわせて確認したい公式資料

福岡市の場合、募集案内に配点も評定基準も書かれています。まずそこを読み込んでから計画に進むほうが、時間の使い方としては効率的です。

  • 福岡市職員採用試験の募集案内(最新年度。配点表・評定基準・提出書類・変更点がここに集約されています)
  • 第10次福岡市基本計画の概要版(4つの都市像・3つの基本戦略・8目標30施策)
  • 最新年度の当初予算案の特色とポイント(重点施策の一覧と予算編成の考え方)
  • 福岡市の推計人口と将来人口推計(区別の人口を含む)
  • 福岡市経済の概況(市内総生産・事業所数・従業者数)

なお、情報を知っていることと、面接でその情報を使って答えられることは、まったく別の能力です。数字を覚えただけの状態では、深掘りの一言で止まってしまいます。

当研究会では「答えられる形」まで仕上げるためのテキストとして、福岡市役所専用の面接想定問答集をご用意しています。福岡市の採用面接で問われる可能性がある約60問の質問について、「元公務員監修の回答例」「質問の意図」「回答のコツ」「想定される深掘り」などを収録しています。

福岡市役所の想定問答集を見る

第2部|面接対策編

福岡市役所の面接の概要

ここからは、福岡市役所の面接の形式と流れ、質問の全体像、合否を分ける質問への備え方を、公式資料と当研究会の分析に基づいて整理していきます。

福岡市役所の面接の流れ

令和8年度の上級行政事務(行政)は、第1次試験と第2次試験の二段階です。注目すべきは配点で、第1次試験で単独最大の配点が置かれているのは、教養試験でも専門試験でもなく、面接(WEB)の180点です。さらに最終合格は第2次試験科目の総合成績のみで決まり、第1次試験の成績は反映されません。

その第2次試験は論文20点と面接(対面)120点の計140点ですから、最終合格は実質的に個別面接が9割近くを占めることになります。

項目内容(令和8年度・上級行政事務(行政))
実施主体福岡市人事委員会(事務局任用課)。福岡県人事委員会が行う県職員採用試験とは別の試験です
試験の段階二段階。第1次試験 → 第2次試験
第1次試験の科目と配点教養試験100点・専門試験100点・面接(WEB)180点
第2次試験の科目と配点論文20点・面接(対面)120点
面接の種類面接(WEB)・面接(対面)ともに個別面接。集団面接・集団討論・グループワークは試験科目表にありません
最終合格の決め方第2次試験科目の総合成績のみで決定し、第1次試験の成績は反映されません
提出書類面接票。マイページから提出し、期限までに提出されない場合は失格となります
採用予定上級行政事務(行政)44人。市長事務部局、教育委員会、水道局、交通局等で事務に従事します

上記は、福岡市人事委員会が公表した令和8年度の募集案内に基づく、上級行政事務(行政)の内容です。面接(WEB)180点は上級行政事務(行政)にのみ設定され、他の募集区分には課されません。区分によって科目も配点も異なりますので、申込の前にご自身が受ける区分の最新の募集案内を確認してください。なお申込みは一人一つの募集区分に限られ、上級の先行枠や経験者を対象とする選考に申し込んだ場合は、この上級試験の全募集区分に申し込むことができません。(出典:福岡市職員採用試験募集案内|令和8年度

もう一つ、順序にも仕掛けがあります。第1次試験の面接を受けられるのは、教養試験と専門試験の成績によって決まる「第1次試験面接試験受験該当者」だけです。つまり筆記2科目を通過した人だけがWEBの個別面接に進む二段構えになっています。

筆記は通過の条件であり、そこでつけた差は最終盤には残らない。この配点の組み方が、福岡市の試験の性格をよく表しています。

科目の中身も確認しておきましょう。教養試験は5肢択一式で150分・50問、専門試験は5肢択一式で120分・40問(政治学、行政学、憲法、行政法、民法、刑法、労働法、経済学、財政学、社会政策、国際関係、経営学から出題)。

論文は75分・1,000字程度で、第1次試験日に実施されますが採点は第1次合格者のみ第2次試験で行われます。行政事務については、第1次試験日に論文を受験しなかった時点で第1次試験が失格になります。

また、教養試験と専門試験の得点は正答数をそのまま使うのではなく、平均と標準偏差を用いた式で算出されるため、100点を超える場合もあります。

令和8年度は制度の変更もありました。上級行政技術(土木、建築、電気、機械、造園)の受験可能年齢が20歳に引き下げられ、上級行政技術・消防吏員A・獣医師・保健師の論文試験が廃止されています。論文が残るのは上級行政事務(行政・福祉・心理)だけです。

なお申込は電子申請のみで、第1次試験の会場は福岡会場(福岡大学)と東京会場(日本大学法学部 神田三崎町キャンパス)の2会場が用意されています。

三つの層で、時間の置き場所が変わる

この配点を、勉強時間の配り方に置き換えてみます。第1次試験は教養100点・専門100点・面接(WEB)180点の合計380点ですが、3科目は横並びではありません。

面接(WEB)を受けられるのは教養と専門の成績で選ばれた人だけですから、筆記2科目は面接に進む人を絞り込むための科目で、面接(WEB)180点が第1次試験の合否そのものを動かす科目、という関係です。

しかも筆記で積んだ上積みは、最終合格の計算に入りません。専門試験は12の分野から40問、教養試験も150分50問と負担は軽くありませんが、ここは満点を追う科目ではなく、通過の位置を確保する科目だと考えてください

得点が正答数そのままではなく受験者全体の中での位置で決まる以上、何点取れば安全という線も引けません。筆記に充てる時間はあらかじめ上限を決め、残りを二度の個別面接の準備に回すほうが、380点と140点という配点の形には合っています。

ただし論文を切るのは危険です。論文は第1次試験日に実施され、行政事務では受験しなかった時点で第1次試験が失格になります。採点されるのは第1次合格者だけで、配点は20点。

最終合格を決める140点のうち論文は7分の1にとどまり、残る120点は対面の個別面接です。答案の型を作るところまでは仕上げ、そのうえで時間の主戦場は面接側に置きます。第2次試験では面接の参考として適性検査も実施され、受験していない試験科目があれば失格の対象になります。

面接票にも先回りが要ります。募集案内は、第1次試験面接試験受験該当者の発表や第1次合格者の発表から面接票等の提出期限までの期間が短いことを、わざわざ注意として書いています。発表を見てから書き始める段取りでは間に合いません

筆記の勉強と並行して下書きを仕上げ、発表後はマイページから出すだけの状態にしておきましょう。提出の場面が第1次と第2次に一度ずつある以上、この用紙はWEBと対面の両方の面接に関わります。

福岡市役所が求める人物像

福岡市は、求める人材像を募集案内で明示しています。掲げられているのは「市民から信頼される人材」で、公表文言は次のとおりです。

市民全体の奉仕者として、市民の声に耳を傾け、市民に説明責任を果たすことができるコミュニケーション力を持ち、市民や職場の仲間たちと信頼関係を築き、困難な状況にあっても、責任感と積極性をもって自分に課せられた仕事に取り組むことができる人。

さらに福岡市は、面接の評定基準そのものも公表しています。コミュニケーション力、情緒安定性、協調性・関係構築力、責任感・積極性の4つです。人材像の文章と読み比べると、同じ言葉が繰り返し出てくることに気づくはずです。

人材像は理念で終わらず、そのまま採点の目盛りになっています。

ここに、政令指定都市ならではの条件が重なります。福岡市は7つの区役所を持つ大規模な基礎自治体でありながら、基本計画では福岡都市圏と九州の中で担う広域的な役割を掲げています。市民一人ひとりの相談に向き合う場面と、圏域全体を見て判断する場面が、同じ組織の中に並んでいるということです。

自己PRを組み立てるときは、公表された4つの観点のどれに当たる経験なのかを意識しつつ、その経験が窓口の側と政策の側のどちらにも接続しうることを示せると、志望の説得力が増すと当研究会はみています。

想定される質問

面接で聞かれることは7つのカテゴリーに分かれる

当研究会では、全国の自治体・官公庁の面接想定問答を分析し、聞かれる質問を7つのカテゴリーに体系化しています。福岡市の面接も、この見取り図の上で準備すれば、基本的な抜け漏れは防げます。

カテゴリー代表質問ここで見られていること
① 導入・アイスブレイク今日はどちらの会場から受けていますか?WEBの個別面接では、機材の向こう側の相手にも届く声と表情になっているか
② 動機・志望なぜ民間企業ではなく公務員なのですか?民間でもできる動機で止まっていないか。福岡市でなければならない理由まで届いているか
③ 自己理解ご自身の弱みを一つ挙げてください情緒安定性という評定の観点に直結する場面。弱みを認めたうえで、その付き合い方まで語れるか
④ 経験・行動これまでで一番の困難と、その乗り越え方を聞かせてください責任感と積極性が、どの場面のどの行動として現れたか
⑤ 学業・経歴卒業論文(研究)のテーマについて、簡単に説明してください専門外の相手に伝わる言葉へ置き換える力。説明責任という言葉の実演でもある
⑥ 適性・将来入庁後に取り組みたい仕事を教えてください市長事務部局から水道局・交通局まで及ぶ配属の幅を、受け止めたうえで話せるか
⑦ 公共性・社会性最近気になったニュースを一つ教えてください話題選びそのものより、その話題のどこに自分が引っかかったかを言えるか

ここまでは、政令指定都市を受けるならどこでも準備の中身が大きくは変わりません。福岡市で差がつくのは、面接(WEB)180点と面接(対面)120点という二度の個別面接を通して、同じ話が違う角度から掘られたときに耐えられるかどうかです。

二度の面接を持ちこたえる材料として、次の福岡市の論点を用意しておきましょう。

合否を分けるのは「福岡市役所ならでは」の質問

「なぜ福岡県庁ではなく、福岡市役所なのですか?」
「福岡市の魅力と課題を、それぞれ挙げてください」

1問目は、福岡市では特に重みがあります。市の基本計画が、福岡都市圏の各市町との連携を基盤に九州全体への役割まで掲げている以上、「県は広域、市は身近」という教科書的な整理だけでは足りないからです。

広域の役割を担いながら区役所で市民と向き合う、この二重性をどう捉えているかが問われる質問だと考えてください。こうした質問に答えるための「福岡市の事実」を、面接で使いやすいものに絞り、答え方とセットで整理しました。

質問テーマ知っておきたい福岡市の事実答え方のヒント
人口の現在地人口1,620,853人(令和8年1月1日現在の住民基本台帳)。市の将来人口推計では2040年ごろ約170万人でピーク。その間に高齢者は32.7%増、生産年齢人口は減少増えている面と積み上がっている面を並べて話し、悲観にも楽観にも寄せない現状認識を示します
なぜ県庁ではなく市役所か第10次福岡市基本計画は、都市経営の基本戦略に「福岡都市圏全体として発展し、広域的な役割を担う」を掲げ、九州からの人口流出の抑制に一定の役割を果たすとしている役割分担の説明で終わらせず、7区の区役所という現場を持つ組織で働きたい理由を、自分の経験に結び付けます
行政区の成り立ち1972年の政令指定都市移行時は5区。現在の7区は1982年の行政区の再編成による構成年号を言うためではなく、区の枠組みが動いた市であることを踏まえて、区ごとの違いへ話をつなげます
都心の再開発天神ビッグバンは2025年3月末までに建築確認申請93棟・竣工74棟。博多コネクティッドは地下鉄七隈線の延伸等とあわせて進行建物の数を挙げるのではなく、増えた床と人をどう運ぶかという交通の論点まで踏み込みます
防災警固断層南東部の地震(マグニチュード7.2、最大震度6強)の想定で、市の死者754人・全壊10,285棟・避難者69,501人。2005年に福岡県西方沖地震を経験想定の規模に触れたうえで、地域防災計画の全面見直しという現在の動きと、自分にできる備えをつなげます

使い方のコツは、5つ全部を覚えることではありません。自分の志望分野に近いテーマを1〜2つ選び、「事実 → 自分の問題意識 → 市職員としてやりたいこと」という一続きの話に編んでおくことです。

想定される評価の観点

福岡市の場合、評価の観点を推測する必要はありません。募集案内が4つの評定基準を明示しているからです。面接は、その4つに照らして「これまでに実際どう行動してきたか」を確かめる場になります。

いわゆるコンピテンシー評価が基本にあり、答えの美しさではなく、経験の中身と行動の再現性が見られています。

評価の観点面接でどう確かめられるか準備のポイント
コミュニケーション力市民に説明責任を果たせるかという観点から、専門外の相手に届く言葉で話せているかが見られます自分の研究や仕事の内容を、予備知識のない相手に90秒で説明する練習をしておきます
情緒安定性想定外の質問や、答えに詰まったあとの立て直し方に表れますうまく答えられなかった経験を1つ用意し、そのとき自分がどう持ち直したかを言えるようにします
協調性・関係構築力市民や職場の仲間と信頼関係を築いた場面として、意見の違う相手とどう折り合ったかが問われます合意に至るまでに自分が譲った点と譲らなかった点を、両方言語化しておきます
責任感・積極性困難な状況で自分に課せられた仕事にどう取り組んだかという、行動の中身で確かめられます途中で投げ出したくなった場面と、それでも最後まで持っていった手順を具体的に話せるようにします

なお、公務員の個人面接では、ひとつの話題に対して「そのとき、あなたは具体的に何をしたのですか」と2回、3回と深掘りされることが多いです。福岡市は個別面接がWEBと対面の2回ありますから、同じ経験を別の面接官から別の角度で掘られる前提で備えてください。

自分の言葉で細部まで語れる実体験に根ざした答えを事前に用意しておきましょう。

本番までの準備6ステップ

ここまでの内容を、準備の手順に落とし込みます。

  1. 最新年度の募集案内を読み、自分が受ける区分の科目・配点・変更点を確認する。面接票は発表から提出期限までが短いので、下書きは筆記対策と並行して進めておく(提出が遅れると失格になります)
  2. これまでの経験を棚卸しする。学業・課外活動・アルバイトや仕事から、掘られても崩れない具体例を1つずつ用意する
  3. 7カテゴリーの代表質問に、それぞれ一言メモで答えを作る
  4. 用意した経験を、公表されている4つの評定基準(コミュニケーション力・情緒安定性・協調性と関係構築力・責任感と積極性)に割り当て直し、空いている観点を埋める
  5. 自治体研究のインプットをする。この記事の前半部分を読み返し、志望分野に近い福岡市の事実を2〜3個、自分の言葉で説明できるようにしたうえで、固有質問の対応表から「事実 → 自分の問題意識 → やりたいこと」の一続きの話に編む
  6. WEBの個別面接を想定して、画面越しに話す練習をする。録画して見返し、掘られそうな箇所に返しを書き足していく

優先順位に注意

ステップ5の自治体研究は、あくまで他の受験生と差をつけるための工程です。時間がない場合は、ステップ2の経験の棚卸しと、ステップ4の評定基準への割り当てを優先してください。自分のことを語れない状態で市の知識だけを増やしても、面接の評価にはつながりません

なお、面接対策を独学かつ最短ルートで仕上げたい場合は、福岡市役所専用の面接想定問答集を使う選択肢もあります。

福岡市の採用面接で出題が想定される質問について、1問ごとに回答例・質問の意図・NG回答までをわかりやすく解説しているので、面接での受け答えをより具体的にイメージできるようになります。特に試験本番までに時間がない方は、必要に応じてご活用ください。

福岡市役所の想定問答集を見る

さいごに

令和8年度の上級行政事務(行政)では、筆記2科目を通過した先にWEBの個別面接が180点で待ち、最終合格は論文20点と対面の個別面接120点だけで決まります。筆記の点数は、面接の席に着くための切符です。人口が増えている十数年のあいだに、その先の福岡市をどう組み立てるのか。

公表された4つの評定基準を手元に置きながら、自分の経験をそこに載せていく作業を、本番までの時間で進めていってください