埼玉県庁では、大学・短大・高卒・職務経験者など、多様な学歴・経歴に応じた試験区分・試験科目を設けて職員を採用しており、その中でも論文・作文試験は、人物評価に直結する極めて重要な試験です。本記事では、埼玉県庁の論文・作文試験の概要、出題傾向、過去問などを網羅的にまとめた上で、効率的な対策方法を詳しく解説します。
論文・作文試験の概要
受験区分ごとの試験形式・文字数・試験時間
以下は、埼玉県庁で実施されている各区分における論文・作文試験の実施条件です。
試験区分 | 形式 | 試験時間 | 文字数 |
---|---|---|---|
上級試験 | 論文 | 75分 | 900字以上1100字以内 |
経験者試験 (一般行政) | 論文 | 75分 | 900字以上1100字以内 |
経験者試験 (一般行政・DX) | 論文 | 90分 | 900字以上1100字以内 |
初級試験 (一般事務) | 作文 | 60分 | 700字以上900字以内 |
論文・作文試験の過去問
以下に、埼玉県職員採用試験の論文・作文試験の過去問を年度・区分別に整理します。
上級試験
- 問題形式:論文
- 試験時間:75分
- 文字数:900字以上1100字以内
一般行政
小中学校事務・警察事務
初級試験
- 問題形式:作文
- 試験時間:60分
- 文字数:700字以上900字以内
一般事務
経験者試験
※ 区分名:民間企業等職務経験者
一般行政
- 問題形式:論文
- 試験時間:75分
- 文字数:900字以上1100字以内
一般行政(DX)
- 問題形式:論文
- 試験時間:90分
- 文字数:900字以上1100字以内
出題傾向と頻出テーマの分析
以下に、埼玉県庁の論文・作文試験の出題傾向と頻出テーマを分析・整理します。
上級試験
出題傾向
設問形式(出題の特徴)
- 課題解決型:社会課題に対して、県の立場からの提案を求める
- 政策提案型:現行施策の補完・改善など、具体的な行政対応を提起する形式
- 時事応用型:県の取り組みや社会変化に即したテーマを扱う(例:スポーツ振興、VTuber観光PR)
主な着眼点
- 埼玉県の現状と課題を踏まえた課題設定力
- 行政の役割と政策立案への理解
- データや事例を根拠とする論理的構成力
- 社会の動向や時代背景への感度
答案のポイント
- 設問の2点を明確に分けて論じる構成をとる
- 社会的背景や県の政策を踏まえた現状認識を示す
- 自身の考えや提案にデータ・根拠・実例を交えて具体性を持たせる
- 埼玉県の施策との整合性や現実性を意識する
出題傾向の分析
上級試験では、地方行政が直面する現実的な課題への提案能力を重視する傾向があります。スポーツ振興、観光施策、孤独・孤立対策、デジタル化、都市構造など、行政施策の背景や効果を自ら分析し、自分なりの提案につなげる論理性が求められます。
頻出分野・キーワード
頻出分野・キーワード
- 社会課題・人口動態
少子高齢化・人口減少
生産年齢人口の減少と地域活力の維持
孤独・孤立・地域コミュニティの希薄化 - テクノロジーと行政
デジタル化・行政DX
AI・IoT・スマート社会の構築
ICT利活用・デジタルデバイド対策 - 多様性・人権・共生社会
ジェンダー平等・LGBTQ支援
多文化共生・外国人住民との共存
地域活動の担い手不足と共助社会の構築 - 健康・福祉・教育
健康長寿社会の推進
子どもの貧困と教育格差
介護・ケアラー支援施策
頻出分野・キーワードの分析
上級試験では、実際の県政課題を踏まえた時事的・政策的テーマが繰り返し出題されています。特に、少子高齢化、孤立、DX、ジェンダー平等といった分野は継続的に出題傾向にあるため、施策や最新動向を資料や県の総合計画から調べておくことが効果的です。また、1つのテーマでも「背景」「影響の対象」「行政の対応」を整理して考える力が求められます。
初級試験
出題傾向
設問形式(出題の特徴)
- 自己PR型:自身の強みや経験を職務にどう活かすかを問う
- 成長体験型:努力や挑戦の中で得た学びを振り返る設問
- 職務理解型:県職員としてのあり方や意欲を問う問題が中心
主な着眼点
- 挑戦や困難への向き合い方
- チームワーク・信頼・誠実な対応
- 公務員としての意識や心構え
- 県民との関わりへの理解・姿勢
答案のポイント
- 自分の経験をエピソードを交えて具体的に述べる
- 何を学んだか、なぜその経験が大切だったかを明確に示す
- 職務への活かし方(特に県民対応など)まで丁寧に展開する
- 誤字脱字や言い回しの不自然さを避け、読みやすく整える
出題傾向の分析
初級試験では、社会人としての基礎力や人柄を見極めるために、「過去の経験」と「今後の意欲」に着目した設問が中心です。公務員としての誠実さや協調性、市民との関わりへの責任感など、等身大の自分を丁寧に伝える力が評価のカギになります。
頻出分野・キーワード
頻出分野・キーワード
- 自己理解・経験
挑戦・努力・成長
失敗からの学び・改善
自分の強み・得意なこと・大切にしている価値観 - 公務員意識・県職員像
誠実な対応・信頼関係の構築
チームワーク・協力する姿勢
県民との接し方・市民サービス精神 - 社会との関わり
感謝された経験・人とのつながり
情報発信・SNSリテラシー
10年後の将来像・職務への展望
頻出分野・キーワードの分析
初級試験では、具体的な出来事を通して「どんな人か」を見極める構成が多いため、振り返りの深さや誠実な姿勢が重要です。自身の経験を公務員としての仕事にどう活かすかを自分の言葉で論理的に伝える練習が必要です。価値観・成長・職務理解をつなげる視点がポイントです。
経験者試験(一般行政)
出題傾向
設問形式(出題の特徴)
- 経験応用型:職務経験に基づいた課題認識と政策提案
- 課題解決型:多様な行政課題への対応を問う
- 自己分析型:能力・スキルの活用と将来的展望の提示
主な着眼点
- 埼玉県政に関連する具体的課題の設定力
- 民間経験の応用可能性と具体性
- 行政職員としての実践的判断力と行動力
- 幅広い視点(県民・NPO・企業など)の連携重視
答案のポイント
- 自らの経験と行政課題を適切にリンクさせて記述する
- 数字や事例を交えて客観性を担保する
- 複数の主体と連携した実現可能な提案を意識する
- 埼玉県の施策や社会的背景を押さえた論述が必要
出題傾向の分析
経験者区分では、「これまでの職務経験をどう埼玉県行政に活かすか」が一貫した設問意図です。特定の施策に対して“なぜその施策が必要か”“どう進めるか”を、自身の経験と結びつけて論じる構成が重視されます。複眼的視点と共創型の問題解決意識が求められます。
頻出分野・キーワード
頻出分野・キーワード
- 社会構造と共助
少子高齢化・地域の担い手不足
共助社会・地域活動・ボランティア支援
NPO・企業との連携 - 多様性と人権
性の多様性・人権尊重
男女共同参画
外国人・障害者・高齢者などの包摂 - 生涯学習・働き方
人生100年時代と学び直し(リカレント教育)
高齢者活躍・セカンドキャリア支援
働き方改革・職場環境の整備
頻出分野・キーワードの分析
経験者区分では、社会的包摂や共助の視点、人生後半期の活躍など、実務的な視点とマネジメント要素のあるテーマが多く見られます。県民・企業・NPOなど複数主体による課題解決を想定した設問が中心であり、経験者としての「役割」「発想」「実現性」が見られています。
経験者試験(一般行政・DX)
出題傾向
設問形式(出題の特徴)
- 政策提案型:DX推進・多文化共生・男女共同参画など時事的課題に対する行政の取組を提案させる
- 課題抽出型:身近な社会課題を自ら設定し、その背景と理由を論理的に述べさせる形式
- データ読解応用型(ただし近年は設問資料の公表なし)
主な着眼点
- DX・社会構造・人権分野への問題意識と理解
- 課題の本質的理解(背景・理由の構造把握)
- 実効性ある行政の施策提案力
- 市民視点・多様性への感度
答案のポイント
- 社会問題の現状を簡潔かつ具体的に把握し提示する
- 「なぜそれが課題なのか」を背景やデータを交えて展開する
- 自治体にふさわしい施策案を段階的に論じる
- 専門的すぎず、実務に根ざした現実的な視点を意識する
出題傾向の分析
一般行政(DX)では、政策と現場の接点を問うような現実志向の設問が中心です。社会構造の変化に対する感度、多様性や公平性の視点、そして行政の立場からの施策構築力が重要です。具体性・問題意識・施策の整合性が合格答案のポイントです。
頻出分野・キーワード
頻出分野・キーワード
- 多様性・人権・共生
多文化共生・外国人支援
男女共同参画・ジェンダー平等
性的少数者(LGBTQ)・インクルーシブ社会 - 環境・気候変動
地球温暖化対策
再生可能エネルギー・脱炭素
環境保全と市民意識 - テクノロジーと社会課題
DX推進・ICT利活用
行政デジタル化と自治体運営
情報格差と支援策
頻出分野・キーワードの分析
DX区分では、「技術 × 社会課題」という横断的なテーマ設定がなされやすく、単なるテクノロジー礼賛ではなく、課題に対して行政がどう使いこなすかが問われます。また、人権・ジェンダー・地球環境といった広いテーマに対しても、構造的理解と現実的な提案力が重視されます。自治体資料・白書・国の基本計画などから幅広い事例を収集するのが有効です。
対策と勉強法のポイント
論点整理・文章構成のコツ
上級試験・経験者試験
埼玉県庁の上級試験および経験者試験では、社会課題への理解と行政的視点を踏まえた論理的な構成が求められます。したがって、「課題の背景と現状 → 行政課題の明確化 → 解決策の具体的提案 → まとめ・意義づけ」のような構成を意識するのが望ましいです。
特に、埼玉県の出題では「社会的背景に対する深い理解」と「現実的な政策提案」が重視される傾向があり、具体性のない抽象論や感想文に近い記述では評価が伸びません。また、文字数条件が900〜1100字と比較的長文のため、論理的な流れを維持するために事前に構成メモを作成し、「問いに答えているか」「論点がずれていないか」をチェックしながら書き進める習慣を身につけましょう。
初級試験
初級試験では、自身の行動経験や考え方を通じて「公務員としての適性」や「誠実な姿勢」を示すことが求められます。特に、自己成長、挑戦、協力、信頼、市民対応など、日常経験の振り返りがテーマとなるケースが多いです。このため答案では、「経験や出来事の紹介 → 自分の行動・工夫 → 得られた学びや成長 → 県職員としての活用」といった構成を意識しましょう。
また、難解な表現よりも、率直で読みやすい文章が好まれます。具体的なエピソードを中心に、何を学び、今後どう活かしたいかを丁寧に伝えることを心がけましょう。事前に「印象的な経験」「困難だった出来事」「やりがいを感じた瞬間」などを整理しておくと、どの設問にも柔軟に対応しやすくなります。
情報収集と自治体研究のポイント
埼玉県庁の論文・作文試験で高得点を目指すには、埼玉県が現在推進している施策や直近の課題を正確に理解することが不可欠です。
まず、埼玉県公式ホームページや「県政運営方針」「埼玉県SDGs未来都市計画」「デジタル社会推進計画」「スポーツ推進計画」などを確認し、子育て支援、防災対策、健康長寿、地域活性化、多文化共生といった重点分野の施策内容を把握しておきましょう。
また、地域新聞や県の広報誌、NHKなどのニュースから、埼玉県に関するトピック(例:高齢化、外国人支援、共助の仕組みなど)をストックしておくと、本番で説得力のある例示やデータを盛り込むことができます。
答案では「地域課題と自分の視点の接点」を意識して、ただ調べたことを並べるのではなく、自らの言葉で“咀嚼・再構成”して論述することが重要です。
本番までの対策フロー
埼玉県庁の論文・作文試験で高得点を目指すためには、以下の流れで段階的に対策を進めていくことが効果的です。
上級試験・経験者試験
- 出題傾向と文字数・構成形式の理解
- 政策提案型・課題分析型が多いため、設問形式と論点整理法を確認 - 県の重点政策・資料の収集と整理
- 公式サイトや総合計画、条例資料から重要施策をピックアップ - 頻出テーマごとの構成メモ作成練習
-「課題の背景 → 課題の定義 → 解決策 → まとめ」の形で訓練 - 過去問演習と添削による精度向上
- 年度ごとの過去問を時間内に解き、自己添削または他者添削を活用 - 最新のニュース・施策の定期確認
- 時事性のある設問に対応できるよう、新聞・広報誌を定期チェック
初級試験
- 過去問を読み、自分の経験で書けそうなテーマを整理
- 成長・挑戦・信頼・協力などのキーワードごとに思い出を整理 - エピソードを「背景 → 行動 → 学び → 活かし方」の流れで書き出す練習
- 事前にテンプレート化しておくと、本番で書きやすくなる - 身近な人に読んでもらい、わかりやすさを確認
- 主観的すぎないか、論理的に伝わるかをチェック - 文字数調整の練習
- 700字〜900字の範囲内で適切に収める練習を繰り返す - 直前期は1日1題で集中演習
- 時間管理と実戦感覚を身につける
以上のプロセスを通じて、埼玉県庁の試験に求められる論理的かつ実践的な文章力と、行政視点に立った思考を着実に身につけていきましょう。
論文・作文試験を通じて問われるのは、知識だけでなく、社会を見つめる目と自らの考えを整理する力です。埼玉県の未来を支える公務員としての第一歩に向けて、日々の努力がきっと実を結ぶことを願っています。焦らず、自分のペースで、丁寧に準備を進めていってください。
(過去問引用:埼玉県HP)