山梨県庁では、大学卒業程度・高校卒業程度・民間企業等職務経験者など、多様な学歴・経歴に応じた試験区分・試験科目を設けて職員を採用しており、その中でも論文・作文試験は、人物評価に直結する極めて重要な試験です。本記事では、山梨県庁の論文・作文試験の概要、出題傾向、過去問などを網羅的にまとめた上で、効率的な対策方法を詳しく解説します。
論文・作文試験の概要
受験区分ごとの試験形式・文字数・試験時間
以下は、山梨県庁で実施されている各区分における論文・作文試験の実施条件です。
| 受験区分 | 形式 | 試験時間 | 文字数 |
|---|---|---|---|
| 大学卒業程度 | 論文 | 90分 | 公表なし |
| 民間企業等職務経験者 | 論文 | 90分 | 公表なし |
| 高校卒業程度 | 作文 | 60分 | 公表なし |
論文・作文試験の出題例
以下に、山梨県職員採用試験の論文・作文試験の出題例を年度・区分別に整理します。
大学卒業程度
- 問題形式：論文
- 試験時間：90分
- 文字数：不明
行政 Ⅰ
高校卒業程度
- 問題形式：作文
- 試験時間：60分
- 文字数：不明
全区分共通
民間企業等職務経験者
- 問題形式：論文
- 試験時間：90分
- 文字数：不明
行政（Ｕ・Ｉターン型）
出題傾向と頻出テーマの分析
以下に、山梨県庁の論文・作文試験の出題傾向と頻出テーマを分析・整理します。
大学卒業程度（行政 Ⅰ ほか）
出題傾向
設問形式
- 政策提案型・課題解決型が中心（例：人口減少対策、少子化対策、地域ブランド化、ポストコロナ対応、健康寿命の延伸、広域交通インフラ活用など）。
- 「山梨の魅力・資源→施策」の二段構成や、「背景分析→課題特定→対策→効果」が定番。
主な着眼点
- 県の将来像（「県民一人ひとりが豊かさを実感できるやまなし」）との整合性。
- 施策の実現可能性（関係主体、財源・効果、工程・KPI、リスク）。
- 地域資源（富士山、果樹・ワイン、観光、医療・健康、先端技術）をどう活用するか。
答案のポイント
- 「現状の数行要約→原因の層別→核となる課題の一点集中→複合施策（短期・中長期）→期待効果・指標」の型で論旨を明快に。
- 広域交通（リニア中央新幹線・中部横断道等）や地域ブランド化は“連携”が鍵（県・市町村・民間・大学・住民）。
- メリットだけでなく副作用（オーバーツーリズム、居住・交通混雑、財政負担など）も併記し、緩和策を示す。
出題傾向の分析
過去問は一貫して「人口・少子化」「地域ブランド・魅力発信」「交通インフラ活用」「健康・福祉」「ポストコロナ行政」など、山梨の構造課題×強みの交点を問う流れです。抽象論ではなく、県の特性を踏まえた“地域解”が求められます。
頻出分野・キーワード
頻出分野・キーワード
- 人口・少子化・定住：人口減少、少子化の背景、子育て支援、移住・UIJターン、関係人口
- 産業・観光・ブランド：果樹・ワイン、地場産業の高付加価値化、インバウンド、ブランド戦略、輸出・6次化
- 交通・広域連携：リニア中央新幹線、中部横断自動車道、時間距離短縮、首都圏・中京圏連携
- 健康・福祉：健康寿命、日本一水準の維持・拡大、予防・未病対策、地域包括ケア
- 行政デジタル・ポストコロナ：業務の効率化、オンライン化、行政需要の変化、災害・危機管理
- 環境・自然資源：富士山保全、自然共生、再エネと観光の両立
頻出分野・キーワードの分析
「山梨の強み×社会課題」を結び直す視点が重要です。例えば、交通インフラは“通過”ではなく“滞在・投資・移住”に結び付ける設計、ブランドは“物語と品質保証・販路戦略・人材育成”まで落とし込むなど、地域における価値連鎖の全体像を描く準備をしましょう。
高校卒業程度（全区分共通）
出題傾向
設問形式
- 自己理解・職業観・県への関心を問う体験重視型（例：目指す公務員像、魅力・やりがい、関心トピックと考え方、伸ばしたい能力）。
主な着眼点
- 素直さ・具体性・成長意欲（経験→学び→行動への落とし込み）。
- 県民目線・チームワーク・基本姿勢（誠実・公平・説明責任）。
答案のポイント
- 具体例の一貫性（状況→行動→結果→学び）。抽象語を避け、あなたの言葉で書く。
- 公務員としての基本（法令順守、守秘、住民福祉の増進）に触れつつ、窓口・現場での行動像を描く。
出題傾向の分析
社会課題の専門論ではなく、「仕事観×県への関心×行動力」をシンプルに評価する論題が頻出傾向。体験エピソードの解像度が合否を左右します。
頻出分野・キーワード
頻出分野・キーワード
- 公務員の使命：全体の奉仕者、住民福祉、説明責任
- 基本姿勢：傾聴・共感・公平性、コンプライアンス、チームワーク
- 山梨への関心：人口・少子化、観光・自然、地場産品、災害対応、環境保全
頻出分野・キーワードの分析
「県の話題に関心がある」だけでなく、あなたの経験と結び付けた行動計画に落とし込むことが差になります。短い文字数でも、体験→学び→公務での活用まで一気通貫で記述しましょう。
民間企業等職務経験者（行政〈U・Iターン型〉ほか）
出題傾向
設問形式
- 経験棚卸し×政策適用型（強み・実績→どの分野でどう活かすか／県の課題×経験の接続）。
主な着眼点
- 再現可能な強み（スキル・行動特性・成果指標）と公共現場へのトランスファー。
- マネジメント視点（関係者調整、合意形成、KPI・PDCA、ガバナンス・リスク）。
答案のポイント
- STAR法（Situation/Task/Action/Result）＋行政適用（関係主体・制度・財政・評価指標）で構成。
- 民間の手法を“公共仕様”に翻訳（透明性・公平性・住民合意）して提示。
出題傾向の分析
単なる自己PRではなく、「経験→スケール可能な仕組み→県施策との接続」を描くことが重要です。
頻出分野・キーワード
頻出分野・キーワード
- 人口・定住：UIJターン、関係人口、雇用・人材育成、住居・保育環境
- 産業振興：ブランド・輸出、観光DX、6次化、スタートアップ支援
- 行政改革：業務プロセス改善、データ活用、官民連携（PPP/PFI）、広報・レピュテーション
- 交通・広域：リニア効果の最大化、ハブ＆スポーク観光、物流最適化
頻出分野・キーワードの分析
民間知見の活用は、単発施策ではなく“連携・仕組み化”で成果を出すことが前提です。実装手順・KPI・リスク管理まで書くと説得力が増します。
対策と勉強法のポイント
論点整理・文章構成のコツ
大学卒業程度
山梨県庁の論文試験で高評価を得るためには、与えられた課題に対し、「現状と背景の要約 → 課題の特定（原因の層別） → 施策提案（短期・中長期・関係主体・KPI） → 想定リスクと緩和策」という構成を意識することが大切です。特に、山梨の出題では「地域資源の価値化と人口・少子化などの構造課題の接続」が問われる傾向が強いため、施策が“誰の・どの課題”を“どの仕組みで”解くのかまで書き切る対策が重要となります。また、文字数条件は不明ながら90分の長文型のため、設問を因数分解した構成メモを先に作る習慣をつけると、論旨の一貫性を保てます。
高校卒業程度
「設問の意図の言い換え → 自分の経験の具体例 → 学び・成長 → 公務での活かし方」の4段構成が有効です。山梨の出題は“職業観・姿勢”重視のため、難しい政策用語よりも「実際にどう動くか」の描写が得点差になります。文字数が不明で時間は60分のため、結論先行（初文で主張を述べる）＋具体例1本に絞るのが安定します。
民間企業等職務経験者
「強みの定義（再現可能なスキル） → 具体事例（STAR法） → 行政への翻訳（関係者・制度・財政・KPI） → 実装ロードマップ（短期〜中長期）」のフレームで記述しましょう。山梨の出題は“経験と県課題の接続”がコア。民間の勝ちパターンを、透明性・公平性・住民合意といった公共要件に合わせて再設計する視点が鍵です。90分をフルに使う前提で、冒頭10分でゴールを決める訓練をしましょう。
情報収集と自治体研究のポイント
山梨県庁の論文・作文試験で高得点を目指すには、山梨県が現在推進している施策や直近の課題を正確に理解することが不可欠です。
まず、山梨県庁の公式ホームページや総合計画・重点戦略・各部局の実施計画等を参照し、人口減少・少子化対策、観光・ブランド振興、広域交通インフラ活用、健康・福祉、防災・危機管理、デジタル行政といった重点分野の現状や施策内容を把握しておきましょう。また、時事的な話題にもアンテナを張り、地域新聞や県の広報誌「ふれあい」などから具体的なデータやエピソードを収集することも重要です。自分なりにまとめた要点をノートやカードに整理し、答案作成時には何らかの具体例を交えて論述することが説得力を高めるポイントとなります。
さらに、市民視点での行政への要望や改善点、新たな施策の提案など、自分が興味を持ったトピックを独自の視点で深掘りする姿勢も大切です。
本番までの対策フロー
以下の流れで段階的に対策を進めていくことが効果的です。今後も本セクションは必ず区分ごとに記載します。
大学卒業程度（論文・90分）
- 設問研究（過去5〜10年）
テーマを分類（人口・少子化／ブランド・観光／交通インフラ／健康・福祉／ポストコロナ）。頻度と出題意図を整理。 - 知識インプット
県施策・数値・主体整理（県・市町村・民間・大学・住民）。施策の因果（入力→活動→アウトプット→成果指標）をカード化。 - 骨子作成訓練（10分）
「背景2〜3点→課題1点→施策3本（短期/中期/基盤）→KPI→リスク」をテンプレ化。10分で骨子を切る練習。 - 答案演習（週2〜3本）
90分通し×数回＋60分短縮×数回。添削は“論旨の一貫性”“施策の実行性”“指標の適切性”でチェック。 - ファクト強化
数値・固有名詞の確認リストを作成し、本番直前に最終チェック。 - 模擬本番
本番と同じ時間・紙面で3セット。休憩含む当日運用（ペース配分・見直し手順）を固める。
高校卒業程度（作文・60分）
- テーマ棚卸し
「公務員像・やりがい・関心話題・伸ばしたい能力」を自分史から抽出。1テーマ1エピソードに固定。 - 型の練習（結論先行）
初文で主張→体験→学び→公務での活用。200〜300字でも成立する“短文完成”を繰り返す。 - 語彙と表現のメンテ
抽象語→具体語に置換する練習。口語を避け、簡潔・平易な表現に。 - 時間配分訓練
骨子5分→本文45分→見直し10分。誤字・主語述語の一致チェック表を作る。 - 想定問の回転
既出テーマを言い換え出題で練習（例：「公務員像」⇄「心がけたいこと」）。
民間企業等職務経験者（論文・90分）
- 経験棚卸し（STAR法）
3事例を深掘り（数値・役割・難所・学び）。再現可能な“強み”を言語化。 - 県課題との接続設計
各事例に対し「山梨の課題→適用シナリオ→成果指標→リスク」を作る。官民差（公平性・透明性・住民合意）に配慮。 - 構成テンプレ作成
「強み定義→事例→行政翻訳→ロードマップ（短期/中期）→KPI→リスク管理」。見出しを固定。 - 答案演習（実装重視）
担当部局・関係主体・予算枠・スケジュール・効果測定を“仮置き”でも明示して書く訓練。 - レビューと微修正
エビデンス不足・主観過多・民間仕様の押しつけを除去。公共性・説明責任の記述を増量。 - 模擬本番
90分通し×複数回。10分骨子→70分執筆→10分見直しの反復。
論文・作文試験を通じて問われるのは、知識だけでなく、社会を見つめる目と自らの考えを整理する力です。山梨県の未来を支える公務員としての第一歩に向けて、日々の努力がきっと実を結ぶことを願っています。焦らず、自分のペースで、丁寧に準備を進めていってください。
（過去問引用：山梨県HP）